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千屋種畜場便り

 伯備線新見駅に下車,そこから乗合自動車で狭隘なる山容を高梁川の清流に副ってのぼると約1時間半,そこが千屋村である。
 その千屋は『千屋牛』として畜産人には余りに親しまれているが,一方俗世を隔れた,この千屋は風光明美にして,人情味又豊かな里である。
 千屋種畜場は,この村の中央部の小高い台地に大正10年設置され,県下は勿論全国に和牛の名声を博し今日に到り昭和26年で創立30周年を迎えようとしているが,その間あたかも千屋牛の歩む如く遅々として,悠揚着実畜産奨励のため,使命を果して来た。
 以下千屋種畜場の概要を簡単に記すと,総面積は,約52町歩であって,放牧場は約30町歩牛舎は勿論のこと山羊,兎,豚羊加工場等が千屋村を眼下に見える。

業 務

1.種牡牛の育成配布。優良な種牛の配布は当場の最も必要な使命であって之が県下の牡牛界に及ぼす影響は多大なものがあると自負している。従来は飼料等の不足より充分な育成に事欠き兎角の評判もあった様であるが今後は場内の基礎牝牛も充実しそれによる生産種に主力を注いで系統的であり且つ真に優秀な種牡牛の造成に必死の努力を傾注し県下の和牛界の貢献し度いと考えている。

2.種牝牛,種牝牛の委託。従来の種牡牛の委託事業は中止した。尚牝牛の委託も場内の基礎牝牛の充実を図る立前より当分の間は中止することにしている。

3.種牛の受託。民間希望によっての候補種牛を場内に受託して育成又は疾病の治療等を行うが之には全て実費の負担を御願いしている。

4.種畜の交配及び受胎増進。民間の要望に応じて和牛及馬の種付を実施している。これは何れも人工授精を応用していると共に発情異常,不受胎のものについてはそれらの治療にも応じている。

5.種緬羊の蕃殖配布。

6.種山羊の繁養並に種付。

7.種兎の蕃殖配布。毛皮用白色在来種毛用アンゴラ種を蕃殖し品種改良と仔兎の配布を行っている。

8.畜産加工頭,主として場内生産物である羊毛等を加工しホームスパン等の技術指導と普及に努めている。

9.飼料作物の栽培自給飼料栽培の目下の急務であるので玉蜀黍,燕麦,青刈大豆,鳩麦,オーチャードグラス,レッドクローバー等の栽培を行い種子の払下も行う。

10.放牧場及採草地の経営。候補牛を6月初旬より11月下旬の間林放牧し又採草地は8,9月の候に野草を刈取って乾草調整をやっている。

11.畜産練習生の養成家畜の飼養整理を会得して今後の有畜営農を志す農村の中堅青少年を対照として実施指導をして養成している。

12.短期講習会,質疑応答,印刷物の配布,必要に応じて技術指導の意味で講習会質疑応答を行い又参考となる印刷物を配布し実施している。