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酪農の危機対策を練る!!!
全国酪農大会開催さる!!

 全国酪農協会では直面した酪農の危機に対処してその打開策を協議する為去る11月7日明治製菓ビル講堂に於て全国酪農大会を開催したが参会者約400名は会場に溢れる活況を示し,終始熱心な対議が行われた。
 本県よりは奥山氏,松尾氏,船橋氏高畑氏,景山氏,岸本氏,田口氏等の7氏が出席した。
 大会は先づ塩野谷会長の挨拶を以て開会され窪田常務理事の大会開催理由説明,来賓として日本畜産協会長岸良一氏及び農林省畜産局長長山根東明氏の祝辞があり,次いで遠藤三郎氏が議長に推され,議事に先き立ち食料品配給公団佐藤乳製品局長,食糧庁水口栄養食品課長,日本畜産協会田口副会長等より夫々酪農関係事項の現状につき説明があって議事に入った。
 議事中主なる問題は次の如きものであった。
 飼料の値上げを非難する声が北海道,福島等より出た。
 次いで飼料圃確保の問題が茨城,富山,岡山県等より出,確実な実施方を強く要望された。之に対し畜産局,安本議長等より夫々政府が政策として決定次第直ちに実施可能の準備があると答えた。
 次に酪農課税の妥当化について群馬より意見があり之に対して日本畜産協会より陳情方を答弁して決議文を次の通り作製し関係方面へ強力に陳情することに意見が一致した。

酪農危機対策決議

一.酪農業を農業政策の中に積極的に織り込むよう適当な施策を講ぜられたい。

(説明)日本経済の再建は農業の復興に待たねばならぬものであって之が為には畜産就中酪農業を加味することが最も合理的であることは世論の一致する所である。
然るに我国農業政策に於ては畜産即ち酪農業が重要視されていないために非常に拙い結果を招来している。延いては酪農そのものも客観状勢の変化に伴って常に安定を欠くを遺憾とするものである。閃聞する所に依れば近く我国農業政策の確立を見る再検討が行われる由であるから此の機会に酪農業を積極的に織り込んで適切なる施策を講ぜられ多数農民の要望する農業を確立して頂き度い。

二.国民の生活改善の為牛乳及乳製品が積極的に利用されるよう適当の施策を講ぜられたい。

(説明)我が国民体位は文化国家としての各国人に比すべくもない。之が解決の為には食生活の改善を計り牛乳及乳製品の積極的利用によることが最も適切である。
幸にも国産の牛乳及び乳製品は漸次増産され需要に応じ得る事情にあるから政府として積極的な施策を講ぜられたい。

三.牛乳及乳製品の価格並に配給統制も撤廃を目途とし措置すること。但し飲用牛乳は直ちに統制を撤廃すること。

(説明)今や牛乳及乳製品の生産は戦前最高の量を超ゆるに至ったので業界の実情から見れば最早その必要を認めない。寧ろ之を撤廃して自由競争による創意工夫を促進して品質の改善と生産費の低減とを図り以て良質廉価のものを供給し得るよう措置されたい。

四.乳幼児乳製品は専ら国産品を以て充当する様措置され度い。

(説明)戦後の乳製品不足の際は止むを得ず輸入品に待たねばならなかったが最近は著しく増産されているので本邦酪農業安定の為にも国産品を以て充当するよう措置されたい。

五.乳牛用飼料圃の割当を実行され度こと。

(説明)国民保健上良質廉価の牛乳の消費を普及させること望ましいがその牛乳生産の為には飼料圃を確保して自給飼料によることが最も策を得たものである。第6臨時国会の衆議院に於ける食確法の可決に際し飼料圃確保に関する附帯事項が政府により承認されたのであるから速に乳牛用飼料圃を各地方に割当てられ之が実現しうる確固たる方途を講ぜられたい。

六.第3,4半期並に第4,4,半期リンク飼料価格は旧価格によられたい。

(説明)遅延した第3,4半期並第4,4半期リンク飼料が漸く最近に至って配給されている状況であるが遅配のものを新価格で支払うことは,酪農家にとって迷惑であり不当である。

七.牧野法を改正して速に野草の改善利用の途を講ぜられたいこと。

(説明)従来の牧野は馬産対象のものであり又権利等の関係で利用の程度は洵に寥々にたるものである。速かに牧野法を改正し野草の利用を容易にし一は酪農生産費の低減に一は自給肥料増産に資するよう講ぜられ度い。

八.乳牛用飼料は生産者団体取扱とし之に必要とする金融の途を講ぜられたいこと。

(説明)飼料統制撤廃後乳牛用飼料就中蛋白質飼料を獲得する立場から配給面は消費者団体を中心にすべきである。之が実施に当っては金融問題を解決しなければならぬからその方途を併わせ講ぜられ以て生産者団体の活路を開かれたい。

九.乳牛用飼料其他生産資材とのバーター貿易を実現する途を講ぜられたいこと。

(説明)国産飼料は他の畜産増殖上の関係もあるから酪農業用の蛋白質飼料及その他の生産資材を輸入する必要がある。然るに貿易はバランス上の問題もあるから国産乳製品を輸出して一は以て国際収支に一は国産乳製品の滞貨防止に資することに役立てたい。

一〇.飼料の価格並に配給統制の撤廃を目途として措置すること。

(説明)飼料は食糧事情の好転及精白度の引上等により現物の相当の出廻りをなしつつあることを以て此の際その価格及統制を撤廃され度い。

一一.飼料の検査施設を設けられ度し。

(説明)牛乳の増産は一に懸って良質の飼料に依るが故にその良質のものを選ぶべきは論を待たぬ処である。然るに公団廃止後は飼料の品質を吟味する必要があるが故に検査制度を設けて飼養者をして安心して飼料を獲得しうる様に配慮され度い。

一二.酪農行政を一元的に強化され度い。

(説明)現下の酪農行政は所管官庁が多岐に亘っている為施策上遺憾の点多きを以て行政を一元化して酪農国策の遂行を期せられ度い。