ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年2月

調査及技術指導
うまやごえ(まやごえ)

K・N生

 米 異りて糞となる。糞異りて作物となる。窒素は循環しているものの……
 肥料費は作物生産費の3−4割を占めるということである。
 さて廏肥というものが農業経営,将又農家経済に如何に関係があるか,有畜農業が如何に重要であるか,家畜の副産物の廏肥についてある角度より考察して見よう。県下各地を見て廏肥について駄文を費し,読者諸賢の批判を願う次第である。
 廏肥1年間の生産量に対する価値は幾らか 金肥と比較して考察することにする。
 現在農家に対し,肥料配給公団より配給される三要素成分の価格は,代表的なものについて見ると次の様である。

第1表

10貫に対して
(一)硫酸アンモニヤ(20%)575円80銭
(二)過燐酸石灰(15.5%)245円33銭
(三)加里(40%)509円23銭

即ち有効成分 1匁に対して
(一)硫酸アンモニヤ 28銭7厘8毛
(二)過燐酸石灰   15銭1厘8毛
(三)加   里   12銭7厘3毛

さて腐熟廏肥については

成分含有率 1貫に対し含有量 1貫に対する公定価格の換算額
窒素 0.5% 5 匁 1円43銭9厘2毛5分 
燐酸 0.25% 2.5匁   39銭5厘7毛
加里 0.5 % 5 匁   63銭6厘5毛

 即ち腐熟廏肥1貫は三要素公定価額に換算すると2円47銭1厘4毛5分となる。そして1年間の廏肥の生産量は大体牛馬等で約2,000貫と言われるから1年間の廏肥を公定価額に換算すれば49,424円90銭となる訳である。
 以上は唯三要素成分についてのみの問題であるが,更に重要なのは有機物である。
 有機物の価額を評価するに,凡そ実験的根拠を持つものでなく唯達観的に評価するものであろうが学説によれば,窒素時価の約50分の1と言うから,窒素1貫は,287円85銭である。即ちその50分の1の5円75銭7厘は有機物1貫の価額である。そうすれば廏肥中の有機物は20%あるものとして,その価額は2,302円80銭となり,前記1年間の廏肥三要素の公定価額の4,942円90銭を加算すれば7,245円70銭となる。即ちこの価額は廏肥1年間の公定価額である。
 而して1年間家畜(牛馬等)は純窒素成分10貫純燐酸成分5貫純加里成分10貫を排泄していることになる。(勿論この中には褥草の肥料成分が含有されている)
 即ち家畜は農業経営に如何に重要な地位を占めるか読者も大体了解出来たことと思う。尚闇肥料と言うことに換算すれば更に莫大なる金額となるであろう。(今春より現行肥料公定価額は改正され高くなると言うことを附言して置く)
 今や農業恐慌が叫ばれている折から,金肥の節約を計り自給肥料の増産改良に精進し,以て土地生産性の向上に突進せねばならない。
 尚ここに案外実行されていない廏肥の肥料成分の損失防止方法を簡単に照会して置こう。

一. 廏舎の床は不透水性のものを利用し斜面をつけて早く漏汁(尿)の流出せしむるようにし糞と尿は分離単独に貯蔵すること。
二. 堆積の場所は風雨,日光の直射の当らない所を選び,床も不透水性のものを利用し,周囲,又は一方に溝を作り漏汁の排出溜り場を設け堆積中に注加せず分離すること。溜り場に蓋をすること。
三. 廏肥堆積の際100貫に1貫の割に過燐酸石灰を混合すると窒素損失を防止する。
四. 廏肥は密着壓して堆積する。
五. 新鮮廏肥は予め水を注加し可溶性窒素と洗浄し残りを堆積すると共に,洗浄水は単独分離貯蔵する。
六. 堆積中醗酵熱の盛んなるは窒素の損失多きを意味するを以て,これに注水するか藁稈類を混和堆積すること。又土の層を挟んで堆積すること。青草等を混合するは絶対に不可である。

 以上廏肥について感じた所を述べたもので今更言々する必要がなかったかも知れないが合理的な農業経営は先ず手近な而も重要である廏肥の価値を利用すべきである。廏肥について等閑視の嫌いはなかろうか,若し関心あるにせよ急所を掴んでいるであろうか。
 廏舎の改善,堆肥舎の設置,廏肥価値の認識而して一日も早く実践に移るべきである。今や身辺に資本主義の波は打寄っている。金肥は農業資本を虎視眈々と狙っている。
 農村よ,奮起せよと叫びたい。廏肥の増産改良を!!