ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年2月

津山畜産農場だより

 △「津山城下町,御城の松に,ぴんとはねたる威勢を乗せてよ」!!
と謡われる山都津山市の北端に在り前津山青年興農塾の跡を継けて昭和22年4月1日に発足した。面積20数町歩一面權木と笹に掩われた不良地である。種畜種禽の生産配付をなすと共にこの地を畜産によって開発する……即ち有畜営農の実践によって地力を増進し作物の増収を図る……これを一般に普及する使命をもって農場は生れたのである。
 一宮街道に面し西北及び南東に耕地を有し北東は權木叢生の傾斜地を背負い南方は一望宏茫たる田園を距てて津山市街を展望できる景勝の地でもある。

 △創立以来藤井前場長の卓越した手腕と場員一同の努力によって建設が進められ大家畜については概ね計画の規模に達し中小家畜も着々充実しつつある。これについては県当局の御指導,県会議員各位の御援助,地元関係者の御協力があったことは勿論である。

 △事務所は以前の興農塾時代の麦藁葺の古風な建物であるが事務室が余りに狭隘に過ぎ極めて不便であったが今般一部を改造して広くなったのでまあ事務所らしい感じがする様になった。

 △場内の最も高い所に建てられているのが当場の総本山ともいうべき和牛舎である。現在10数頭の候補種牡牛を収容し本県和牛の改良はここからと中島技師以下熱意に燃えはりきっている。当場では目下の処育成のみで種付はやっていないが近来当場に優良種牡牛を繁養して種付をやって貰いたいとの希望が強くなっている。牝牛所有者の熱心な要望があるなれば当場としてもそのままにはしておけないと思っている。

 △和牛舎の下が乳牛舎及び人工授精所で現在乳用種牡牛2頭,種牡牛9頭である。種牡牛は農林省畜産試験場産及び岡山種畜場産で共に優秀なものである。作州地方は乳用種牡牛極めて少なく大部分当場に頼っており人工授精の希望者が非常に多い。将来作州地帯における乳牛の改良増殖上人工授精の普及とその技術の向上は一層の重要性を増したので将来出張種付による受胎を確実を目指して努力することとし最近技術員1名を増加し浅羽技師のもと陣容も強化したので一層の御活用が願いたい。

 △和牛舎の横が種鶏舎である。小さな鶏舎で種鶏もまだ40羽位しかいない。明年度予算がいただければ種鶏舎育雛舎を建設し150羽程度の種鶏をおきたいと思っている。又その一室を利用して孵卵も行いたい。一番奥が緬山羊舎である。現在緬羊20頭,山羊6頭で緬羊は将来50頭に迄増加し山羊は種牡山羊の増加による種付に力を注ぐ方針である。
 乳牛舎野東南方古い建物が種豚舎で昨年12月生れた12頭の仔豚が走り廻るのは可愛い。来年度予算がいただければ改築の予定である。
 本県山羊の品種改良,養蚕との結合による緬羊の増殖,農家副業としての養鶏の普及と中小家畜の分野は広く小坂技師を初め係員の努力が期待される。

 △農場は現在約4丁歩で将来6丁歩に増加の予定である。有畜営農の実践普及が当場の重要使命であるのに鑑み水田畑地及び採草地にたいし各種飼料作物主穀特用作物及び蔬菜等を栽培し耕種畜産の有機的結合による地力の増進及び収穫の増加に努力し着々成績を挙げている。而して更に山林の開拓による牧草の栽培,既墾地の効率的な利用を図り農業経営上における畜産の使命を立証するべく早瀬技師のもと熱意をもって懸命の努力を傾注している。

 △広々として空気よろしく健康地である。夜明に初まり夕暮と共に終る家畜本位の牧場生活は生甲斐のあるものである。場員一同の熱意が本県畜産に一層反映し畜産の改良増殖に役立たんことを念願すると共に関係者の方々の一層の御鞭撻を御願い致す次第である。

(25.1.30)