ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年3月

飼料問題の反すう

本県飼料の需給について

 飼料の需給について考察するに当って先づ我が国の畜産について一応考えてみる要があると思う。
 戦前即ち大正,昭和にかけての畜産統計と首っ引きで牛が百何十萬頭になったとか,いや今年はいくら増加したとか中央地方をあげて多額の補助金政策のもとに畜産奨励をした結果乳製品の一部は海外へ輸出出来る様になり支那卵の輸入をくいとめる事が出来たが,その当時は関税しょうえきその他の保護政策が大きな役割を果たした事はもちろんである。ともかくも我が国の畜産は外見上発展をとげたようにみえるがその裏面をよく拾計してみる必要がある。
 即ち表面上畜産面の輸出国となった様にみえる反面我が国は世界優すうの飼料輸入国となったのである。従来畜産の輸入国という地位が飼料輸入国という地位におきかえられたに過ぎない実態にあったのである。この当時より家畜の飼養形態に一大変化をみる様になり家畜本然の飼養形態策,草主穀従は一てきされまして穀主草従特に極端な穀類依存になったのである。これは丁度耕種農業においても大正時代より従来の自給肥料より金肥依存になったのと一脈通ずる所があると思われる。
 戦前は以上の様な飼料の消費形態をとって来たのであるが戦後の状態はと言うと,この穀類依存主義に拍車をかけたのである。
 戦後のインフレの波に乗り家畜をもってさえおれば金儲の出来たために戦後の貴重な主要食糧まで家畜の飼料に消費され畜産成金の現出をみたのである。本県においてもこの例にもれず畜産面に消費された濃厚飼料は従来の消費量をはるかに上回ったのである。
 然しながら昨今の「デフレ」への移行と金詰り等のため畜産界のこうむった影響は甚大であって生畜は言うに及ばず畜産物の価格は暴落に暴落をつづけ,飼料の公定価格は騰貴するし自由価格は一向に下らない等のため豚の如きは昭和24年末の飼養頭数の5割以下という現象すら招来したのである。
 浮動性の強い形態を畜産がとるという事は一人健全な畜産の発達のみならず農業の発展にも大きな亀裂を生ずる事となるので専業の畜産家といわず有畜農家といわずこと少くとも畜産に従事している者はこの際よく反省の要があると思う。畜産にしろ農業にしろ利潤を追う事は当然であるとしても大地に十分根をおろし健全な畜産であり有畜農業でありたいと思う。
 即ち農業経営の規模に順応したしかも飼料の十分な裏付のある形態と同時に家畜本来の飼養方法である草主穀従の依る自給飼料の合理的利用に立脚し少々の経済的変動によってはぐらつかない十分根を張ったものにしたいと念願してやまない。
 それでは飼料の需給関係はどうかと言う標題に戻って述べてみたい。
 本県飼料の需要は畜産増殖5ヶ年計画によると昭和25年度の必要量は次の通りになる。

家 畜 別 頭 羽 数 敷 料 粗飼料 濃厚飼料 備  考
113,206 和牛 113,206 157,555 386,822 50,129 (生)551,874
3,513 乳牛 3,500
6,094 8,330 20,019 3,065 (生)1,244,730
2,856 780 286 2,007
山 羊 9,446 1,291 3,064 518
緬 羊 795 109 267 76
家 兎 21,990 3,046 4,453 6,082
? 931,600 12,735 8,807
8,200 112 288
183,958 414,910 91,098

 次に本県内において生産されしかも畜産されしかも畜産面で消費される飼料は如何程あるかを言うと,次の通りになる。

一.粗飼料の生産量

生産見込量 備  考
栽培飼料 46,000
野草 532,000 生産量の約75%
芋類茎葉,根菜類等 87,400
藁稈類 125,340 生産量の約35%
その他 2,800 蠶渣等を含む
1,921,400

 以上は耕地反別栽培作物及び牧野畦畔堤塘面積等より算出したもので需要量(敷料粗料飼の計)180万tを約10万t程上廻っておるが質的に若干遺憾の点があるのでこれが改良は単に飼料問題からばかりではなく優良種畜の生産或は家畜の健康生産費のてい減等に重大な関係があり将来に残された大きな問題であるので県としても一昨々年より野草の改良に努力して来たが一般農家の皆様も本問題に重大な関心をもたれ「レッドクローバ」その他の優良牧草種を畦畔堤塘に播種される方々が遂年増加している。本県粗飼料資源については又日を更めて詳述したいと思う。

二.濃厚飼料の生産量

生産者別・種類別 生産見込敷量 備    考
農     業 飼料としての農家保有量及び屑穀粃等
 穀     類 16,000
 保有米,麦よりの副産物さんぶ 13,000
 芋類,その他 16,000 飼料としてこの保有芋類及屑芋その他
工     業
 麩
 米         類 315,000
 麦         類 3,500
 そ    の    他 2,000
85,000

 上は最低の生産見込数量であってこれ以上生産される事は確実である。又需要量については合理的飼養管理によりその1割程度の節減を図る事は容易でもあり農家の経営面からしてそうすべきである。
 以上飼料の需給の概要を申し述べたが我々の従来の家畜飼養の観念即濃厚飼料がなければ家畜の増殖は困難であると言う思想を一てきして粗飼資源開発をこれが増産並びに質の改善に努力して本県畜産に十分な根を張らせ見事な実を結ばせる様お互に努力を切望する。

(日室技師)