ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年3月

飼料問題の反すう

粗飼料の利用

 粗飼料の中には種々あるが,その中特に重要な乾草,サイレージ,及び石灰藁について書いてみたい。

一.乾草

 乾草は稲藁と共に多量に得られる点に於て,粗飼料中重要な地位を占めている。併し乾草は草刈時期や,雨に当らないか等の条件によって品質が異って来るから,次の様にしてよい品質のものを作りたいものである。

(一)草刈時期生草を刈って乾草にするには開花直前に刈取るのが一番よい。尤も,一般に野草は○々の種類が混ざっているので開花期が一様でないが,そう言う時にはその野草中一番多い種類の開花期を選べばよい。刈取期が遅れると収量は増すが栄養分は却って少くなり,適期に刈る方が収量は之に比して少いが栄養分が多く全体として得である。早刈りも乾燥その他の条件から見て有利でない。結局野草の刈取適期は大体6月中旬から9月中旬に至る間である。但し笹類,カヤ,ススキ等の如く生長すると粗剛になるものや湿地に生える草も嫩芽の頃に刈取る方がよい。

(二)草刈方法あまり下方から刈ると,土砂を混じて乾草の品質が落ちるし,草の根を傷めて次の草生が悪くなる。逆にあまり上方から刈ると収量が減ることは勿論であって,根元から1−2寸の所から刈るのが一番よい。

(三)草刈時の天候並びに草刈時間  天気がよく続く時期に刈らねばならぬことは言うまでもなく,よく晴れた午前中に行う。

(四)乾燥  刈ったら直ちに乾燥した地面に成るべく薄く広げて日光に当てて乾燥する。乾燥中は一日に1−2回フォ−ク等で反転する。雨露に当てると醗酵して養分が少くなるから,夕方になれば集めて幾つかの小さな山形にし,上は蓆等をかぶせて雨露に当らぬ用心をし,翌日又拡げて日光に当てる。下に木等で枠を作ってその上に乾草を積むと夜間適風がよいため,尚よい。乾草日数は夏の土用の頃で,2日半―3日日光の弱い時3−4日,途中に曇った日があれば5日でよい。もし小さな山形に集めてから雨が降れば,天気になって地面が乾いてから拡げる。乾燥不充分な時は水分が多いため醗酵を起し易く,乾燥が過ぎると褐色し風味がなくなるが,特に萱科のものは一番栄養分の多い葉が落ちて終う。
 以上の様にして乾燥が済めば成るべく大積みにして置き適当な時期に収納舎へ収納する。乾燥が済んだら直ちに収納するのが一番理想であるが,止むなく前記の様に大積みにする時は小さな山形に積む時と同様に蓆等の帽子を被せる。

(五)貯蔵は成るべく屋内にする。此の場合納屋の二階等の様に床が板であれば直接その上に置いてもよいが,床が土間であればそのまま置くと吸湿するから,蓆等を下に敷くとか,丸太を数本並べてその上に置くのがよい。場所がなくてどうしても屋外に置く時には大積みにして上方に蓆等の帽子を被せておく。

 以上述べたのは普通乾草の作り方であって,この外に醗酵乾草等があるが省略する。

二.サイレージ(エンシレージ,埋草) 

 今後,家畜を飼う上に於て是非設けたいものはサイロである。一時的にはありあまって貯蔵が効かないために捨てなければならぬものでも,サイロがあれば解決するし,後述の様な種々の利点がある。今,直径5尺,深さ7尺のサイロを作ったとすると,之に甘藷蔓を詰めるとすれば,和牛1頭の約5ヶ月半分の粗飼料が得られる。直径5尺,深さ7尺,側壁の厚さ3.5寸,底部の厚さ4.5寸のコンクリート製サイロを作るにはセメント約130貫,砂約260貫,砂利約550貫を要し,相当の費用がかかる。併し一度作って置けば毎回サイレージを製造する際に要する費用は大してかからず,長年使用すればそう大きな費用にはならない。又,サイロ策造には型枠が必であるが,之は共同で一つ持っておればよい。コンクリート製サイロを作る資本がなければ,タタキで作っても結構間に合う。
 サイレージの利点は比較的場所をとらずに多量の飼料を貯蔵出来て,然も冬の青物不足の時期に殆んど生草と同様のものを給与することが出来る。(乳牛等は乾草を給与するよりもサイレージを給与する方が泌乳量が多い。)更に,多少粗剛なものもサイレージにすると柔くなり可食部が原料より多くなる。又製造の際乾草の様に天候に災いされる心配がないし,貯蔵中に吸湿,虫害等の恐れがなく,養分の損失も少くて生の状態で長期間貯蔵出来る。その他,紫雲英等の乾草にしにくい萱科の牧草も容易にサイレージにし得る等有利な点が非常に多い。
 サイロ築造方法,サイレージ製造方法等については,県種畜場発行のパンフレット「サイロとサイレージの作り方」その他に譲り,サイレージ給与上の注意事項を書くと,

(一)サイレージがサイロの中にある間は腐敗しにくいが,サイロから取り出した後,長く置くと腐敗し易いから食い残しのない様に適量を給与する。

(二)その理由はまだよく分っていないが,サイレージの単用は有害であるから乾草,牧草等と併用する(四の粗飼料給与量参照)

(三)乳は臭気を吸収し易いから乳牛等は搾乳前,搾乳中に給与せず搾乳後にする。

(四)下痢をしているものには与えない。又妊畜には控え目にする。

(五)濡れたものを与える時は,牛馬なら1日3−4貫である。

三.石灰藁

  粗飼料中,稲藁は我国に於てはその量に於て重要な地位を占めているが,栄養分から見ると甚だお粗末なもので,粗飼料の中では下の部に入る。併し之も石灰でアルカリ処理をすれば栄養分が稲藁の2−3倍になるし,家畜に不可欠なカルシウムの補給ともなる。石灰の代りに木炭を用いてもよいし,原料の稲藁の代りに,古俵,古蓆等も利用出来る。石灰藁が稲藁に比べてよい粗飼料であること,及びその作り方は相当以前から知られているのにあまり実行されていない様であるが大型の鍋か釜を必要とするのと,稲藁をやるよりは手間がかかるのがその原因らしい。併し之も石灰藁を給与すれば濃厚飼料を節約出来ることを思えば作らない方が却って損であって,大いに石灰藁を活用したいものである。
 次にその製法を書くと,煮沸法と浸漬法とある。

(一)煮沸石灰藁

 材料 切藁(牛馬なら5分―1寸の長さ切藁でなく,長いままでよい。)1貫
    生石灰 100匁(生石灰の代りに消石灰120匁又は木炭100匁でもよい。)
 桶等の容器に石灰を入れ水を加えて攪拌し(水は2斗全部入れなくても後で薄めて2斗にすればよい。)暫く放置すると,石灰が沈殿する。その上澄液(石灰水)をとって大型の釜か鍋に移し,その中へ切藁を入れて約2時間煮沸すると,藁は軟くなり芳香を放つようになる。之を後述の様にして給与する。

(二)簡易石灰(藁浸漬法)

 材料は(一)同様。(一)と同様にして作った石灰水を桶等の容器に移し,その中に藁を入れて蓋をし,その上に重石を置いて2−3日間浸漬する。栄養分は稲藁の約2倍だが煮沸石灰藁に比を稍少い。

(三)石灰藁給与上の注意

 栄養分が稲藁より多いとは言うものの蛋白質が全然ないので他の蛋白質飼料(皺糠類,穀類,油粕類等)と併用しなければいけない。又,ビタミンもないから単用せずに,他のビタミンの多い飼料(根菜類,乾草等)と併用するのがよい。

四.粗飼料の給与量

 乾草,サイレージ等の給与は単用よりも,併用の場合の方がよいので後者の方の給与例を上げる。(乾草は単用の場合もある。)粗飼料の外に濃厚飼料を給与する場合はそれも附記した。断っておくが,えが一番よいと言う例ではなく,こう言う例があると言うだけであるから,よく御研究されたい。

(一)乳牛,(牝,体重500s産乳日量5升)
 1 乾草,約10s,05s
 2 サイレージ約15s,乾草約3s,05s,

(二)和牛(役用)
 牝(体重400s)牡(500s)
 野乾草4.0s  5.0s
 稲藁4.8s  6.0s
 濃厚飼料軽役1.2s  1.5s
 中役2.4s  3.4s
 劇役3.6s  4.5s

(三)馬(役用)
 1 乾草4s 藁2s 大麦5s
 2 稲藁4s 大豆莢穀4s 米糠2s

(四)山羊(体重50s,産乳日量1s)
 1 野乾草1.5s 馬鈴薯1.0s 00.5s
 2 稲藁1.0s 野草サイレージ6.0s 米糠0.2s

(五)緬羊(体重50s)
 1 乾草1.5s  00.3s
 1 乾草1.0s 稲藁0.5s 根菜類0.5s
 3 乾草0.5s 青刈サイレージ4.0s 米糠0.1s

 以上種々の給与例を上げたが,普通の野乾草の代りに蛋白質含量の多い萱科の乾草や牧乾草を同量与えれば濃厚飼料を節約し得る分で,草生改良が喧伝される一つの理由はここにある。石灰藁についても稲藁の代りに石灰藁を同量給与すれば濃厚飼料を幾分節約出来る分である。但し蛋白質の点で注意をすることは前述の通りである。

(農業改良課 森脇)