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飼料問題の反すう

輪作,間作の技術

 ドイツの言葉に「多くの飼料,多数の家畜,多量の牛乳,多額の金額」というのがある。食糧が人間の活動力の源泉であると同様に飼料が家畜の健康を維持し,且つ生産する為にかぐべからざるものであるから飼料の増産が家畜飼養頭数の増加となりそして畜産物が増産され又肥料の増産は地方の増進を来しその結果農家の経済が豊かとなると言う意味であろう。
 我が国の有畜農業の合理的な在り方としてその基本的な問題として飼料の自給が必要である。その為には我々は先ず身近にある草難の改良とその利用法の改善に努めて家畜の維特飼料は勿論,生産飼料の一部も草難でまかないうる様にし,同時に農家の副産物や未利用資源を無駄なく活用すべきである。
 そして更らに一歩を進め飼料作物の集約的な栽培が必要となってくる。
 即ち飼料作物を狭い面積の飼料圃に求める場合は勿論畑地や水田地帯に求める場合においても輪作間作混作等によって同一の耕地から最多量の収穫を得る様にしなければならない。
 では,輪作間作といった事は如何様な内容をもつものであるか,次にその概要を記し今日の飼料作物栽培の為に一つの道知るべとしたい。

一.混作

 2種類以上の作物を混合して栽培する方法で飼料作物には非常に多く実施されるものである。殊に青刈類の栽培には示本科其の他と荳料作物との混作は土壌中の肥料分消耗の緩和からも又収穫物の飼料価値を高める点からみても必要なことである。
 例えば示本科牧草オーチャードグラス,チモシーグラス等と赤クローバーとの混作,青刈ライ麦,蒸麦その他の麦類と青刈豌豆との混作等は成績がよい。

二.間作

 主作物の條間に他種の作物を栽培する方試で食糧の生産に支障を及ぼさない範囲内で食糧作物に対し飼料作物を間作することは今後の食糧及び飼料事情では最も研究工夫しなければならない方試の一つである。
 例えば夏作の甘藷に青刈大豆を又冬作の麦類に青刈蚕豆を間作することは畜産試験場の成績によると間作物の刈取時期を誤らねば主作物の改量に少しも悪影響を及ぼさないことが明らかにされている。
 即ち5月中旬に麦の條間を7分,3分に割り,七分に甘藷菌をさし3分に青刈大豆を播種する。青刈大豆は甘藷の生育に支障を及ぼさない時期で且大豆自体もコガネムシの被害を蒙むらなければ7月中旬に収穫する。
 10月中下旬大麦に対する蚕豆の間作は中耕,土寄の関係を考慮して麦の播幅に接近して蚕豆を播種し,大麦の生育に支障を来たさない4月中旬に青刈として利田す。

三.輪作

 同一の耕地に一定の順序で作物の種類を変えながら作付し再び元に還る方試であってこの一連の作付順序の内には間作あり混作ありで最も複雑であるが飼料作物栽培の為に重要なものである。
 これに関しては多くの人達に依り研究されそのやり方については多くの成績があるが今その2,3を記すと下の様である。

1 現在水田輪作が巷に論議されているので本県上道郡操陽村の妹尾金吾氏の稲と麦と紫雲英,そら豆の輪作をうかがってみることとする。

 まず1.8尺の直播稲の條間西側又は北側に稲株に近くそら豆を10月中旬に播種する。ついで10月下旬―11月上旬には稲株の東側又は南側に小麦を播きおろす。稲を一列おきにこのようにそら豆と小麦とを混作しておく。そして稲の刈取り後に,そら豆と小麦をまいてない列の稲株をそら豆と小麦の中間へ裏返しておき畦間は12月に牛で耕やし土をくだき,両側に谷を開いて畦にするその後2回中耕をおこない,小麦の出穂まえ(四月)に畦の両側面の中腹に稲をまく。そら豆に近い側の稲は,小麦に近い側の稲よりも生育が良為である。そのためそら豆を前述の如くあらかじめ西又は北側へつくっておく必要がある。
 このそら豆と小麦との混作の中へ稲を直播しその稲の中では紫雲英を9月下旬にまいておき,畦の中央へは小麦を10月下旬−11月上旬にまいておくと紫雲英の中で小麦ができるわけである。紫雲英の中であるから,中耕も除草も出来ない,しかし紫雲英がよくのびて雑草を厭倒するからその必要もないわけである。
 収量は紫雲英が反当1,200貫小麦が1石以上とれる。紫雲英の栽培跡は耕起しなくても直播稲がよく出来る。
 紫雲英の繁茂前又はその刈り取りののち,もとの稲條列の内側に稲を直播栽培するとよろしい。紫雲英が肥料となるから稲はよく出来るのである。その稲の跡は稲を刈り取ったのちに耕起し小麦だけを草作しその中にまた稲を直播するのである。
 経営する田を3区に分け,この様な輪作を繰返し3年に一度全耕する勘定となるわけである小麦,そら豆小麦,紫雲英と小麦の作付と直播稲という合理的な輪作方試は人手をはぶき収量を高めるという点で非常に立派な著想であり今後の水田の輪作の指針であると思う。

2 飼料圃一般畑地における輪作

 飼料作物(青刈飼料)を我が国において最初に研究した人は松島忠一氏農学博士に圃場を利用し飼料と栽培しでも立派に収支まかなう有畜営農をやってゆける事を実地に行ったのである。
 同氏の研究に基く各作物の組合せの数例を処に掲げて見よう。

 第一例

  作物名 播種期 収穫期 生育日数 生草量
玉蜀黍 5月13日 7月15日 63日 5,110s
玉蜀黍 7月14日 9月12日 59日 2,053s
豌 豆 9月6日 12月21日 106日 4,167s
蒸 麦 12月24日 5月17日 144日 2,826s

 即ち玉蜀黍を9月迄に2回栽培し,秋作に豌豆冬作に蒸麦を栽培して年生草収量約3,600貫を得られるのである。

 第二例

  作物名 播種期 収穫期 生育日数

生草収量

総根収量
  甘藷 5月25日 10月21日 149日 4,216s

2,386s

  蚕豆 10月15日 3月26日 162日 4,985s  
  蒸麦 3月26日 5月29日 64日 516s  

 之によると厚作に甘藷冬作に蚕豆及び蒸麦を栽培し生草量約2,500貫諸諸620貫を得られるのである。

 第三例 

作物名 播種期 収穫期 反当数量

大麦

10月下旬

6月上旬

種害100貫 乾稈90貫

大麦間作青刈蚕豆

10月下旬

5月上旬

600貫

甘藷

5月中旬

10月下旬

藷800貫 蔓600貫

甘藷間作青刈大豆

5月中旬

7月上旬

400貫

 第四例 

作物名 播種期 収穫期 反当数量

甘藷

5月中旬

11月上旬

藷900貫 蔓600貫

甘藷間作青刈大豆

5月中旬

7月中旬

400貫

大麦

11月上旬

6月上旬

種実100貫 乾稈90貫

小松菜

11月上旬

4月上旬

800貫

 以上各々に亘りて一端を記したわけであるが要は農家の飼養する家畜種類別頭羽数並に飼料の給与量,肥料労力事情は勿論立地条件を十二分に考慮して最も適応した飼料の栽培方法を案出して頂きたい。

引用文献 櫻井豊,水田輪作と水田酪農