ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

牧野改良の諸問題(二)

多田 確

 次に混牧林の問題であるが,今までの集約化は,現在残されている牧野について出来るだけ利用度を高め,他面においては混牧林の活用,畦畔,堤塘の活用をして牧野的開発をして行く事である。耕地その他から見ると非常に大きい面積を持っている薪炭林に対して混牧林を実行して行くならば,相当の家畜を飼い,或は草を取る事が出来る。それには従来の様な皆伐による方法をやりかえて,択伐を実行する。皆伐は土壌保全上非常に害があり,地力が悪くなり,択伐は土壌の保全,地力の保持に役立つ併も択伐を採用する事によって下草が繁茂し,これを利用する事が出来る。皆伐の場合は直ちに全面に萠芽が発生して来るので,草が最初は生えて来るが,圧倒されて消滅して行く。択伐の場合は疎林状に木が生えていて,空間があるからそこに下草は沢山ではないが絶えず繁茂して利用する事が出来る。この場合は,庇蔭林とは異なり本数も多いので,その下草は割合量が少い事は止むを得ない。家畜の需要面積が普通の放牧地の2倍位を必要とする,しかもこの場合に,確実な輪換放牧で,従来よく行われている様に山の中にやりっぱなしにして置いてはいけない。何区かに分けて確実に輪換をやって行く様にすれば林牧協調できる利用面積が多くある筈である。混牧林も用材林その他については用材の本質上色々な問題があるが,薪炭林であれば形質が問題でなくて,量が問題になるから量が或程度の水準を保つのに支障がなければ実行出来ると思う。これは大体里山であるから農家から近い所に有利な点がある。

採草地

採草地は耕地にならない急斜面が多いので,この改良は先ず放牧地で述べた様に急な斜面の上部には樹林を置き,斜面の3分の1位の上部分に樹林を残すようにする。よく山の上まで木のない所があるがこれは非常に地力を減耗させるから,樹林によって肥料を草地に廻す意味で山頂部の樹林の効果に期待するより方法がない。この斜面には,ハギとかイタチハギの如き飼料灌木を等高線に沿い5間乃至3間位の間隔に株間3尺位に列状にこれを植栽する様にする。雨が降った場合,山頂部の樹林からの肥料分が流下水と共に流れる際この帯状植栽によってその速度をゆるめ,斜面に吸収を充分にしてやる事ができる。これは草類の生育に最も必要な水分と肥料分をできるだけ多く斜面に供給する意味で大事な問題で,これをやらないと急斜地では土壌浸蝕をうけ地力が減耗して草生が衰退して行く。飼料としてハギ等は優秀な蛋白質給源だから単純な禾本科草に豆科の栄養価を附加できる事にもなるので,斜面には是非,トゲナシニセアカシヤ,ハンノ木等を植える事。なおこの場合草生を助ける為に庇蔭林を成可く肥培樹といわれるネムノ木などを反当20〜30本植えると一層増収割合がよくなる。この場合,一つの採草地に木が植わっているがその樹冠の直下に落す影を投影図に書いて見て,この投影図の面積が全体の約30%位を庇蔭度と言い,これが一番草に良いのである。庇蔭樹を適当に植栽する事によって採草量が倍加され,質もよくなる。この良結果の原因は,水分の蒸発を制限する。又庇蔭樹の葉が落ちて地表に腐熟還元する事により土壌がよくなるのである。草の成育は庇蔭があるので若干遅れて,例えば7月に穂を出すものであれば10日位のずれがあって庇蔭樹林の中では草の芽出しは春は若干早く,秋遅く枯れる。晩夏同時に草を刈ると,若い草を刈る事になり,多少蛋白質その他が多くなる。野草の欠点である所の萠芽の遅いのを早め,又割合に粗剛なものを柔軟にする事が出来る。こうして土壌その他の条件がよくなるから自生の野草だけに依存せず,ここに牧草,その他優良な野草の導入が出来易くなる。優良野草,牧草は割合水分の多い所に成育するので,こういう事も加味する事が採草地として大事な事である。
 その次は截枝林(セツシリン)で,これは草地に肥培樹などを列状に植栽するのだが,大体反当り50本,列間,株間共に2間半間隔に列状に植栽して,地上3尺位の所でしんを止め,枝を四方に拡張させ,刈り込み式として葉及び嫩枝を飼料に使うという訳である。これの主眼は列の間の草生を助長することで,その原理は庇蔭林と大体同じで,庇蔭林は樹冠が高い所にあって直下の草生を良くするというのだが,これは樹冠が側方の庇蔭を与えて草生を良くするのである。トゲナシニセアカシヤが,こういう風に利用するのに好適でしかも葉や嫩枝も飼料として価値があるので都合のよいものである。総て草の量或は葉の量は無立区に比べて澱粉価において,トゲナシニセアカシヤは約1.8倍,可消化純蛋白では約2.25倍になっていて非常に草地の量的,質的増産をして立体的に活用出来る訳である。これは余り急な斜面では葉を採取するのに困難であるから,ゆるやかな斜面の利用法になる。しかしこのトゲナシニセアカシヤの挿木苗を多量に各地に実行するには現在の苗木不足の現状では年月を要するので,ニセアカシヤ類の代りにハギを利用して截枝林を作り,反当100株位植えて,(草地に列間3間,株間1間位の間隔)勿論事情によりハギ葉を多く収穫するために増やしてもよい。無植栽地の場合と萩植栽の場合と比較して試験成績(5ヵ年平均)によれば,無植栽区の澱粉価100とすると140となり,可消化純蛋白を100として200となる,(これは2回中刈で第1回は春先,6月始頃半分位の高さから,第2回は9月中旬中間から刈った成績)。
 以上放牧地,採草地に関する集約経営の方法等を記したが,国土益々狭くなった今日,放採草地も「草作」の観念をもって科学的技術を導入し,もって牧野の改良を図る事がよりより家畜をより多く飼うために必要であると思う。