ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

人工授精の問題

人工授精の進むべき道

MS生

 家畜の改良増産がやかましく論ぜられる時人工授精の良否をとやかく論ずる間もない事と思うが諸種の具備的条件の不足等もある事はあるが遅々として発展しないのはなぜであろうか。

その一として

 人工授精に対する普及と理解が足らなかったこと。

その二として

 畜産の指導的立場にある人によって阻害されていたこと。

その三として

 無理解のため自然種付より成績の低下を危惧されていたこと。

その四として

 組織的機構にかけていたこと。

等々が挙げられると思う(第二項に於ける畜産指導的立場にある人の阻害とは一該に論ずべきではないかも知れないがこれが畜産農家全般に及ぼす極めて一部の利益のための阻害なら大いに論じてよいものと思う)
 然して現在まで実施して来た人工授精は主として伝染病の予防及び受胎率の向上が主であったがこれからの人工授精の進むべき道は,

一. 家畜の改良

優良種牡畜による種付範囲の拡大
利用年限の延長及び幼種牡畜の早期能力判定

二. 経済的節減

 凡庸種牡畜の陶汰
 牧畜育成費の縮少及び種付範囲の拡大による種付料低下
 牝畜の牽付の不要

三.四.として生産率向上及び伝染病予防等を挙げるべきものであって自然種付と対照する欠点に於ては実に微々たる事実として挙げ得るのみではなかろうか,今後に於ける人工授精の進むべき道は広く精液の輸送及び無種牡畜人工授精所に対する精液の配付等により優良種牡畜の能力を学術技術的に最大活用するのが今後に於ける人工授精の道ではなかろうか。
 アメリカのワシントンにある畜産会社に於ては各種種畜の精液を世界各国の空港に96時間以内に輸送し到着後24時間以内に種付を実施すれば受胎は100%可能であって此代金1ドル(360円)とは驚くべき発達ではなかろうか。
 然し人工授精の問題も家畜改良増殖法の施行が実施されれば人工授精所,人工授精師の問題も出来て来る事と思うが何れ次の回に論じて見たいと思う。