ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

どうぶつ愛護に寄せて
応募入選作文!!
3等賞

動物愛護

津山市美作中学校3年
田外陽子

 動物が私達に与えてくれる影響は……と考えてみました。今さら驚く程たくさんなものです。もしも,人間以外の動物がこの世の中に居なかったらどんなに無味乾燥で味けない世の中になるでしょうか,それほど動物は私達にとって大切なものなのです。だから私達人間は動物をいたわらなければなりません。それなのに,私達は動物を殺したり傷つけたりしているではありませんか。もしもこれが人間同士だったら……大きな罪になるのに,人間も動物の一種です。だから私達親類の動物達を愛護するのはあたり前のことです。そのあたり前のことが私には出来なかったのです。そうそう私が6年になった5月27日のことでした。ぽかぽかと暖かいその日に,お友達から私は1匹の子うさぎをもらいました,真赤な目,真赤なお耳,真白なあのやわらかい毛,冬になると,雪で作っていたうさぎとは違ってやわらかくぴょこぴょこ動いて可愛くてたまりませんでした。クローバーのある土手につれて行ってその日は一日中うさぎと遊びました,もう暗くなりかけたのでつれて帰るためだこうと思うとぴょんぴょんはねてなかなかつかまりません。やっとつかまえて耳をおさえるともうあきらめたのか,じーとして目をつぶっておとなしくしています。その可愛らしいことったら……スカートに包んでだいて帰っていると小便をしてしまいました。私のスカートはずぶぬれ,でも少しも腹が立ちませんでした。弟などが水をかけてスカートをぬらした時にはぷんぷんいっておこる私なのに……その夜はうさぎの事ばかり考えてなかなか寝つかれません,そうして3日目の朝いつもの様ににんじんの葉を持ってうさぎの小屋に行ってみると4つの足を長くのばして横になっているのです。うさぎはこんなかっこうをして寝るのかと思って見ました。けれどいつでも,戸口の所に来て,えさをほしそうにして,はねまわるうさぎが今日はじーとしているのです。ヘンだなーと思いながら指の先でつついて見ると,アッ驚いたことには,うさぎの体は冷たいのです。何故?私はびっくりするばかりです,どうして死んだのだろう,わからない。母を呼んで来ました,母はそーと死んだうさぎを小屋から出しむしろに寝かせました。あの可愛いい目を閉じて,真白い毛はふわふわとしていなくべったりと体にくっついている様でした。どうしてこんなに早く死んだのでしょう。でも昨日まであんなにぴょんぴょんしていたあのうさぎが一晩のちには,こんなにみじめな死体となるのでしょうか。今目の前にあるこの死体が昨日までのうさぎとは思われない位変って見えました。3日間毎日つれて行って,遊んだあの土手の少し,小高く,人目につかない所に,うさぎの死体をうめました。そして大好きな,にんじんの葉も一緒に……楽しかったあの3日間1匹の子うさぎが,これほどまでに,私を楽しませて,くれたのかと思うと,なんだか,不思議で,たまりません。子うさぎをもらって来てから3日間は,本当に楽しい日々でした。あれもしよう,これもしようと思っていたのにこんなに早く死ぬなんて…でもどうして死んだのでしょう。小屋もしめっていなかったし,大好きなにんじんの葉も毎日たべさせたし,アッそうだ私はこの3日間にんじんの葉ばかり,たべさせたではないか。いくら,うさぎが好きだからといっても,にんじんの葉はあまり強すぎたのです。ましてあんなに小さい子うさぎには……私は,何故もっと早くそれに気がつかなかったのでしょうか,もう1日でも,早かったら死なせなくてすんだのにうさぎさん御免なさい。貴女はきっと,ほかのあっさりしたものが,食べたかったでしょうねきっと。でも,私がにんじんの葉を持って行くと,とびついて食べていたわね死ぬる晩まで……もっと研究をしてから貴女をもらってくればよかったのに唯好きだからといってそればかりたべさせていた私,なんて,馬鹿だったのでしょう。こんなことが,あってから,うさぎの歌を聞いたり,冬に雪で作ってあるうさぎを見るたびに「御免なさい,うさぎさん」と心の中でそーとつぶやきます。