ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

緬羊の剪毛の仕方

 剪毛の時期は気候によって多少の遅速はあるが大体4月中に剪毛は終了しなければならない。(一番よい時期は各地方の桜の満開時期がよい)
 剪毛方法については実地により収得する他ないが次に簡単に表示する

緬羊の剪毛方法

剪 毛 順 位 剪 毛 の 保 定 法 剪毛方法
1.腹部剪毛 羊体の左側を下にして横に保定した剪毛者は羊体の背部に位置し両膝にて肩胛部を腰角部とを軽く押さえて緬羊の起き上らぬ様にする。 右手に鋏を持ち左手で皮膚を押さえる様にして右腹側部の股の付け根から鋏を入れて一直線に腑の下まで剪り開き之に並行して腹部の剪毛をする。
2.左腹部の剪毛 羊体の臀部にて起たしめ剪毛者は羊体の背部に立ち両膝にて羊体を支える。 前に続き羊体の左腋下より剪り始めて下腹部を左側に立てるまで上より下へ剪り進めておく。
3.下頸部及び咽喉部の剪毛 羊体の少々斜めにして緬羊の背を剪毛者の方にして左の膝を立て之に緬羊の頸部をのせ支えて左手で保定する。 右の肩先の処から右耳の付根に向って一直線に剪り進めて次で下頸部咽喉部を剪る。
4.頭部及頸脊部の剪毛 羊体の位置は前のままにして剪毛者は左足を現位置のまま起立し右足を緬の腹面より左側に廻して跨ぎ羊体と向合せになり両膝を付け両肩胛部を支え漸次後退して左手にて頸部を支う。 前額より剪り進め後頸部を剪り更に左前肢左肩部を剪り前脊部及右肩部まで剪って置く方が便利である。
5.左背部及左臀部の剪毛 剪毛者は羊体の右側に位置し両股間に緬羊頸部を挟み膝にて肩部を支え漸次横臥位とする。 左肩部の下より左側脊部及左臀部に向って剪り下ろした後更に左後肢及尾部等を剪り置く。この際脊線を越えて右側まで剪り込んでおく。
6.右脊部及右臀部の剪毛 前同様保定するも此際は緬羊の左腹部を下にする。 右肩部より右脊部及右臀部右後肢を剪毛して終る。
備  考 緬羊の皮を剥ぐ様な気持で右側部より始め腹頸頭部を経て順次左側に及び体を一周して剪り終る。剪毛の際は剪毛の際は手にて絶対毛を引っ張らないこと。

剪毛の際注意すべき事項

(一)晴天の日を選び雨天又は冷湿の日はさけること。
(二)剪毛の前に緬毛に異状のないことを確かめて行うこと。
(三)満腹させて剪毛すると保定の場合苦しむこと甚だしく腸捻転等の故障を起しやすいから剪毛前日の夕食より飼料は全廃すること。
(四)剪毛場は清潔な場所を選び埃塵,糞尿,蓐草等の散乱するところは避けなければならない。(板間又はコンクリートが可)
(五)緬羊保定の方法に注意し鋏を正しく使うこと,毛は根本から剪り二段剪りをしないこと。
(六)皮膚は傷つけないこと,若し誤って傷つけたら剪毛終了後木タール又はヨードチンキを塗布しておくこと
(七)牡では陰嚢牝では乳頭陰唇及眼の周囲,耳の付け根等は傷つけやすいから特に注意すること。
(八)剪り取った羊毛は剪口を下にして拡げ夾雑物を除き剪口を外面にして折込み尾の方から頭部に向って三角に折りたたみ最後に頭部を捻転して帯状となし全体を結紮して1頭毎に重量を量る。