ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

緬羊の薬浴の方法

 薬浴は外寄生虫の駆除及び皮膚病の予防治療上有効な許りでなく皮膚の健康を増進し羊毛の成長を助ける効果のものであるから機に応じて行なうは勿論少なくとも年1回は行うがよい。薬浴は普通の場合であれば剪毛後1カ月位たった晴天を選び夕方までに緬体が完全に乾き切る様早朝に行うがよい。
 農家で少数の緬羊に対して行う場合は緬羊1頭を其の中で十分浸し得る程度の大桶で行うがよい,此の場合薬液の経済をはかるため薬浴桶に薬液が流れ込む様「流し」を設備し大桶に薬液の適量を入れ,前肢と後肢とを「流し」の上に緬羊を横たえて羊毛に含まれて居る薬液を十分に搾り取るのである。薬浴の際は気管に薬液の入らぬ様注意しつつ羊体全面を薬液に浸す様心掛けなければならない。
 今薬浴剤の処方について数例を挙げて見ると次の如くである。

(一) 煙草末薬浴剤

 (イ)煙草末(茎でもよい)120匁
 (ロ)硫黄華120匁
 (ハ)軟石鹸120匁

 煙草末を2升5合の水に約20分間沸騰させその煎汁を他の薬品と混合し,さらに水を加えて7斗5升の温浴液とする。これで約20―30頭を薬浴出来る。

(二)石灰薬浴剤

 (イ)生石灰 960匁
 (ロ)硫黄華 2貫880匁

 まず生石灰を少量の水で糊状に溶き,これに硫黄華を加えてよく混合し,次に5斗2升5合ないし6斗3升の熱湯を加えて攪拌しながら少なくも2時間煮沸し,溶液がやや褐色を呈するようになったならば水を加え,2―3時間静置して十分沈殿させた後,静かに上澄みを取ってこれに水を加えて2石1斗の溶液とする。これで約60―70頭の緬羊を薬浴することが出来る。

(三)クレオリン50倍溶液

  次に薬浴を行う上においての注意を述べると
(一) 曇天,雨或は寒い日は避け晴天の日を選んで午前中に行う。
(二)薬浴後未だ乾かない時飼付したり食物のあるところに放ったり親仔一所にすると哺乳の為薬浴剤中毒のおそれがあるから禁物である。
(三)薬浴の適期は剪毛後3週間乃至1ヶ月である。剪毛の創口が癒えない時は避けるがよい。
(四)薬浴する緬羊には過度の運動や渇を感ぜしめることが禁物であるから薬浴の前後に緬羊を追い廻す様な事は是非避けなければならない。
(五)薬浴は性急にしてはならない,又薬液が充分皮膚まで浸込む様にしなければならない。
(六)薬浴剤は処方に従って正確に調合して,水に十分溶解せしめること。
(七)薬浴操作中桶内に浮び上った糞又は不純物は除去すること。

 尚薬浴槽と流しを図示すると次の通りである。