ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年4・5月

よい脂肪と,よい蛋白質を食べましょう(その三)

 昭和21年度より,学校給食に放出の脱脂ミルクが用いられるようになってから,世のお母さん達の学童に対しての栄養の認識が高まったことは今更申すまでもないことでしょう。はじめはこれに対して,一部には非難の声も耳にしたのですが,一時ミルクの配給が中止になった時には,早く又ミルクの配給をして戴きたいと願う声もずい分あったと記憶しております。これだけ皆がミルクに対して栄養並びに嗜好的にも馴染んで来たことをよろこんだ次第であります。
 幼い時から食べ馴れたものは,その人の生涯にとってのなつかしい味覚として残ることは,誰しも経験することでしょう。山家の人達は余り生魚には馴染まず,野菜料理を恋しがります。牛乳に対しての味覚も,これを上手に調理に使いこなし,平素から子供達に馴染ませば,この子供達は将来もよい食生活に進んでゆくことでしょう。酪農の普及と共にパン食に移行することも当然で,近頃の都市の子供達は,米飯よりはパンの方を好むような傾向が見えます。これは世界の食糧事情からも,小麦の輸入によって増々のびてゆくと思われます。
 洋行帰りの日本人の多くは背の低い体の貧弱なことに肩身のせまいおもいをされたことと思います。これも人種的に小さいとは言うものの,今までの食生活の不備なこともたしかに原因の1つと言えましょう。特に成長に必要な要素としての蛋白質は勿論のこと成長促進ビタミンとしてのビタミンB2は日本人に最も不足しているようです。このビタミンB2を成長期の子供達(20才頃まで)毎日充分与えることによって効果があれば,ある程度の体位改善も出来るように思われます。このビタミンB2は牛乳に豊富に含まれています。給食用の脱脂粉乳にも同様にあります。結核の国と呼ばれる日本も国民が牛乳を容易に飲めるようになれば,栄養問題も半ば解決されたといってもよい位です。
 前号にも手軽に出来る牛乳料理を御紹介しましたが,皆さん出来具合は如何でしたでしょうか。牛乳の料理は大体洋風になっていますが,日本人の嗜好に合うようなものも家庭で種々工夫なされるのも面白いでしょう。次に御飯ものとお菓子の数種を書いて見ましょう。

一. 牛乳飯

 材料(5人前)
  7分搗米 5合 牛乳 6合
  塩 小匙1/2
調理法
7分搗米はさっとごみを取る程度に水洗いして笊にあげ水を切り,釜に仕込牛乳と塩を入れて普通の御飯を炊くのと同様にする。
(応用)これに虹蠣,蛤,鶏肉,豚肉,えび等や人参其の他野菜を切り込めば変った御飯ものが出来る,調味は塩味とする。出来上がったものにパセリ,三葉,セロリ等のミジン切りをふりかけると風味のよいものになる。

二. スープ

 材料(5人前)
  むき碗豆 4合 牛乳 5合
  塩,胡椒 少々
調理法
 軟らかく煮たむき碗豆をうら漉しにして,鍋にとり牛乳を入れてさっと煮て塩,胡椒で味を整える。
(応用)蚕豆,いんげん豆,其の他芋類,南瓜人参,穀粉等季節のものを用うと色とりどりのものが出来る。又調味も甘味に変えるとミルク汁粉になりおやつになる。

三. 蒸し菓子(プディング)

 材料(5人前)
  鶏卵 5個 牛乳 3合
  砂糖 大匙4杯 バター 少々
  香料 少々
調理法
 ボールに鶏卵と牛乳と砂糖を入れて泡立器でよく混ぜる。これに香料を少し加え,型に(型がなければ湯呑茶碗でよい)バターを塗って前記の材料を静かに流し入れ天火で蒸し焼きにするか,蒸し器で15分―20分位蒸す,茶碗蒸しと同様余り温度が高過ぎるとすが立つので注意する。(又カラメルソースを入れると風味のよいものが出来る)型より抜きスプーンをそえて供す。

四. カステラ

 材料(5人前)
  小麦粉 200g(約2合)
  鶏卵 2個―3個
  牛乳 8勺―1合(鶏卵が無ければ減す)
  砂糖 大匙4杯
  ふくらし粉 2g(小匙1)
調理法
 小麦粉とふくらし粉を合せて篩にかけ,ボールに卵を黄身と白身に分けて割り入れ,黄身の方に砂糖と牛乳を入れ,白身は別なボールで泡立てておく。黄身の方に粉を入れ軽く木杓子でかき混ぜ,最後に泡立てた白身を混合せ,油を引いた天板又は文化天火に流し入れて中火で約20分位焼く。又天火がない場合は,弁当箱に油をしいてこれに流し入れフライパンに入れて上下を焼けば同様に出来る。砂糖が多ければ火力を弱くし,又文化天火で直火で焼く時には火を弱くする。これを適宜に切って供す。

五. クリーム

 材料(5人前)
  小麦粉 大匙1杯
  片栗粉 大匙1杯
  砂糖 大匙山2杯
  牛乳 1合
  卵黄 1個―2個
  香料 少々
調理法
 鍋に小麦,片栗粉,砂糖を入れよく混ぜこれに牛乳を入れてよく泡立器で混合す。別に卵を白身と黄身に分けておく,鍋を火にかけ糊を煮る要領で粘り上げる,火から下してこれに黄身だけ入れてよく混ぜるとなめらかなクリームになる。少し冷めてから香料を入れる。パンやカステラ,果物等にそえて供す。

六. ミルクかん

 材料(5人前)
  寒天 1本 水 2合5勺
  牛乳 1合 卵白 1個―2個
  砂糖 大匙3―5杯
  苺(季節の果物)10個
調理法
 寒天を水に浸してかたくしぼり,これを鍋に入れ,適量の水を入れて火にかけてよく煮る。これに砂糖を加えて布で漉す。再び鍋に入れて牛乳を入れてさっと煮て卵白を泡立てたものを加えて流し箱に入れて冷す。少しかたまってから,苺を泡雪の上に置いてかためる。これを適宜に切って供す。(未完)

農業改良課技師 本村籌江