ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年6月

巻頭言

中小家畜家禽について

惣津 律士

 合理的な農業経営を行うためには立地条件,経営規模等の各種条件を総合検討して適畜を適数取り入れるのが常道である。どこの農家でも中小家畜をある程度飼育する事は大して困難でもないし,又それを取り入れる事に依って経営も経済も向上するのは世人のひとしく認める所である。
 併しこれ等が折角飼育さられても大部分は商業色彩を濃厚もっているため,その消長の著るしい事も又認めざるを得ない,これは生活の中にも,経営の中にもまだまだ充分に融けこんでいないのみならず,更に改良,増殖,利用の面に協同の組織及機関が整備されていない証拠とも言えよう。
 近時特に食生活の改善が勧奨されているが,中小家畜がこの分野に貢献し得る所は極めて大きいのにまだまだその域に達していないのは残念である。
 中小家畜は本県ではもっともっと殖えねばならないし又工夫に依って相当程度に増殖し得る余地は多分にある。
 現在のこれ等の頭羽数をみると,山羊,鶏ではあえて他県に比し遜色は見られないが,資質の点では改良を要するもの,豚に於て然り,山羊,緬羊,更に鶏に於ての然りである,私は本年度中に,山羊,豚について特に種牡の充実,登録事業の実施を一般の御援助に依って是非実現したいものと思っている。
 養鶏位古来国民に親しまれて国民生活の中に入りこんでいるものはまずあるまい。
 本県は戦前は中国地方切っての養鶏県であったが,現在の形態を見るとき感慨一入であるのは恐らく私ばかりではないだろう,私共は過去に於てどうしてあれほど養鶏が発達したかを充分に堀さげて考える必要がある。種鶏家孵卵業者,そして家庭養鶏家各々その立場はあるが,等しく本県養鶏業の推進者である,更に関係団体も然りである。私は最近養鶏の会合に出て感ずる事は団結力の乏しい事である。
 小家畜ほど団結力を必要とする事は周知の事実である,各々の立場に於て夫々の言い分はあらうが,兎も角,大乗的見地よりお互いに譲り合って一丸となる事が何より先決問題である事を痛感している。
 最後に畜産人は中小家畜を漫然と飼育することなしに,一歩前進して戴き度い事を御願いして置きたい。