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家畜の飼養上特に春から夏にかけての注意

加本技師

 家畜を飼うのに年間を通じてどんな時期に病気が多いかを少し古いが大塚氏の統計を借りてみると牛馬の月別死亡率は次表の様になっている。
 以上を見ると全体的に馬は牛より危険が大きい。又時期別を考えると3月頃から段々死亡率が高くなって6,7,8月が最も危い時期となっている。結局春から夏にかけて家畜の飼養上注意しなければならないわけである。
 次にそれではどんな病気が多いかと言うと牛馬共に消火器障害が最も多くて牛では50.4%馬では,40.8%となって居り次いて外傷,産科事故等となっている。此等の統計から考えて所謂春から夏にかけての農繁期の関係,気候の変化に伴う異常,飼料の変化等によって起る消火器の病気が多いと想像される。又年間を通じて使役最盛時の関係や放牧等の為に外傷等の事故が頻発するとも考えられる。
 之を更らに詳しく説明すれば飼養処理の失宜例えば農繁期の為,餌を1回に投げ放しにしてやり過ぎたり,急に変った飼料をやったり,廏を脱出して知らぬ間に盗食したり,変敗している飼料をやったりする機会が多い事である。
 その外飲み水の不足に原因があったり,塩分を長い間忘れていたりする為の消化機能の障害が病因となっている。
 こうした飼う人の不注意から起る場合と一方家畜自体を考えても生理的には蕃殖期に当たり生命力の活動を促される時である。

  4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
0.77% 0.92% 1.10% 0.90% 0.89% 0.84% 0.79% 0.74% 0.79% 0.66% 0.72% 0.82%
2.14% 2.51% 2.03% 2.07% 2.49% 2.47% 1.93% 1.68% 1.31% 1.65% 1.44% 1.86%

 自然の環境からみても春ともなれば山野の草生が盛んとなり久しい冬期家畜の欲求を遠ざかっていた嗜好が急に満足を与えられるようになる。若い柔い草は家畜の食欲をそそるもので貪食性があって自制心のない家畜にはこよない魅力でもある。
 そこで一般に春夏にかけて注意を要する事例を挙げて御参考にしたい。
 冬期間の舍飼いの習慣上飼料も4乃至5月ごろとなると端境期に入る。ことに粗飼料に不足を来すころである。又鉱物産の不足からいわゆる異嗜を呈してくるものがある。しかし段々と草の芽生え又レンゲ,ウマゴヤシ等が青々として茂り,冬季の青物に飢えている家畜類の食欲をそそるが文献にあるようにこれらの若葉は一種の有毒成分を含み,且つ消化器内で醗酵し易く従って下痢疝痛を起し易い。野草でも若い中ほど美味で,且つ養分も多いが,過食すると鼓脹の原因になり易く,ことに露を含んだものが,堆積されて醗酵気味のある場合は注意しなければならない。
 蕃種期のバレイショで芽を出したものはソラニンの毒素や微類より生じた毒素で中毒症状を呈することもある。冬季内に製造された粕類,ことにカンショ粕の中でも中毒を起す事例があり,九州では腐敗カンショよりより作った焼酎粕で斃死した報告もある。又不消化な繊維だけになったような粕類もある。放牧は家畜にとって最も自然で健康的な飼養とは言うものの急に開放するとしばし過食したり有毒な草を採食したりする。タンニンを含む樫の若葉を食って便秘を起したり,アカシアの樹皮を食って中毒をする馬,ネジキを食って霧醉病になる牛等は良く聞く例である。梅雨期になると飼料に微が生えがちで腐敗し易くなってくる。農繁期のため管理不充分でよく蓄舎から脱出して,収穫した麦類を盗食し大騒ぎすることもある。筆者は最近小麦を1寸3升余りペロリとやって食滞に悩んだ牛の事故も経験した。豚では飼料の急変は残食量を多くして不経済であり,何んでも食うと言う乱暴な飼い方で胃腸障害を起し易い。
 緬羊では飼料の急変は胃腸障害ばかりでなく羊毛の質を悪化し,はなはだしい時は中断羊毛(テンダーウール)を生ずる。
 兎では濡れ草や腐敗性の飼料で下痢を起し易い。
 このように春から夏にかけて飼料の種類,量質に変化があり勝ちでそのため失敗を招き易いことは多くの事例が立証する。