ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年6月

かね

◎食い物が不足な時より食物が豊富になった時代の方がむしろ食えなくなってくる。今迄儲けていた者は儲け難くなってきたのも相通ずる。
 無い時に餓死した者が少なく有り余る時に一家心中等の悲惨な世相が現出する。何がそうさしたかは?に色々な個々の事情もあらうが概念的に言えば状況の変化につれて生き抜く気力の弛緩してきた事も一原因だろう。
◎戦争が終っても暫らくは麻酔が利いていた。それが次第に解けてきた。解けて後の痛みは手術中のそれよりも強く色々な症状を伴って痛められる。
 これは大なり小なり個々の場合にも共通のものであった。
◎人にそうであると同様に人によって作られた組織等にもこうした現象がある。
 麻酔の後ではもがけばもがく程苦痛は大きくなった。だからと言って麻酔を繰返せば反って害が大きくなる。
 動きが取れないからどうしてくれると言う時には誰も振り向いてもくれない場合もある。
◎動物的生存競争で長い間神経が亢ぶってきていると人情などと言うものも段々すり減ってくる様だ。
 それどころか弱肉強食の野獣性さえむき出る。本能的な人間欲のみが我々の周りをとり巻いている様な気もする。
 協同が凶同にならない様,酪農が落農にならない様,お互いに立場を換えた同情と人間味をもって手を携えてゆこう。