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二等乳の防止について

 近く牛乳規則が改正されることになって,酪農家の搾る原料乳も,この規則によって格付されることと思う。この規則(案)標準牛乳(一等乳)としての規格は次の通りである。

 標準牛乳(一等乳)とは1頭又は1頭以上の健康雌牛の完全な搾乳によって得られる乳汁分泌物をいい,(分娩前30日及び分娩後5日以内に搾乳された乳,乳房から排出される様な薬品で治療中の雌牛から搾った乳,及びツベルクリン検査で陽性であると公示された雌牛の乳はこれを除く),無脂固形分8%以上,乳脂肪3%以上であること。牛乳の比重は摂氏15度において1,030以上で,酸度は0.16%以下の乳酸でなくてはならない。牛乳処理場への引渡し特に細菌類は直接鏡検菌塊計算法により1t中100万を超えてはならないし,又牛乳の温度は摂氏18度(F65.4度)を超えてはならない。

 古今未曾有の大戦争によってあらゆる物資が欠乏して,作れば売れる時代は過ぎ去り,今後は品質がものをいう時代になった。乳製品も世界各国の製品と競争して行かねばならない,品質においても価格においても負ければ売れないのである。
 優秀な乳製品を作る原料乳はこの規則に合格する様な牛乳で始めて可能である。従来の酪農家が搾っておる乳でこんな牛乳は恐らく一つも無く,殆どが二等乳であるといっても過言ではなかろう。ではどうすれば一等乳が搾れるか,その要点を次に述べよう。

一. 乳牛が健康であること。

 飼養管理を合理的になし良質の粗飼料を充分に給与し,運動に気を付けカルシュウームを補給して牛乳の酸度を生理的にも高くならないようにする。

一.牛舎の清潔と採光通風をよくすること。

 牛舎は明るく通風をよくし,いつも清潔で乳牛が気持よく生活のできるようにしてやる,尿は必ず分離をなし,従来の牛小屋の様に舎内で敷藁を発酵させることは乳牛の健康にも悪いし,牛乳の細菌数を増加させることになる。

一.牛を清潔にすること。

 毎日牛体の手入を怠らず励行し,搾乳前に乳房をよく洗うことは勿論であるが,側腹・下腹・後肢等搾乳者の触れる箇所は濡布でよく清拭して塵や手垢を拭取る。尻や尾を糞尿で汚しているようでは一等乳は絶対に搾れない。

一. 牛乳器具の洗浄と消毒。

 搾乳バケツ・牛乳輸送缶・濾過布・攪拌棒等直接牛乳に触れるものは使用後よく洗浄した上熱湯を通した後よく日光に当て乾燥することが大切である。

一. 清潔な搾乳。

 搾乳する時は清潔な搾乳専用の帽子と上衣を用い手はよく洗い乾燥し搾乳時には決して手に牛乳や水をつけてはならない。搾乳バケツは3分の2ほど覆の着用できる搾乳専用のものを使用すること,どんなに気をつけても塵や毛等が搾乳中にバケツの中に落下するものである。搾乳は手早く完全に搾り切る,脂肪率の点からも乳房の衛生上からもこれは大事なことである。

一.搾乳直後の冷却。

 牛乳は完全な栄養食品であるからこれに細菌の繁殖に適当な温度(搾ったままの温度)が持続されると,細菌は猛烈に増えて僅かな時間で何万何千と増殖するから,搾乳直後短時間に冷却しなければならない,理想をいえば摂氏10度以下に冷さねばならないが,現在の酪農家においては井戸水を水槽に汲み入れ度々水を取り替えて井戸水と同一温度になるまでたえず牛乳と水とを攪拌しながら冷却し少くも規則の18度以下までにしなければならない,そして集乳所で会社に引渡すまでこの温度を持続する必要がある。

一. 輸送中は日光が牛乳缶に直射しないこと。

 牛乳を運搬する時は日光が直射しない様にする,又集乳所まで相当の時間を要する場合は輸送缶を濡れた厚い布で包み運搬するとその水分の蒸発で缶の中の牛乳はかえって温度が下がる。(岡山県酪農協会松田主事)