ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年7月

随想

顧照脚下(7)

杜陵胖

 ◎食品衛生法が改正になり,牛乳及び乳製品の取締りが,厳重になった。なるほど考えてみれば牛乳位栄養価の高いものは珍らしく,細菌の培養基として使用されることを考えると,その取扱いの良し悪しによって急速に細菌の繁殖も考えられるので,その取扱い要綱も細菌の繁殖防止を第一義的に取扱わなければならないけれども,今回の要綱をそのまま適用されるとなると,都市のプラントならばいいかも知れないが,農村の専業者も,酪農家も全滅になることを考えなければならない。
 殺菌牛乳を最終需要者の手に渡るまで摂氏10度に保持することも事実上困難であるし,酪農家で搾乳した乳を摂氏18度以内で保持して工場へ渡すことも,冷凍設備の無い酪農家には無理な要求である。生活程度の高いアメリカの規程をそのまま日本に適用しようとする所に無理ができるのである。この要綱をそのまま適用されるとすれば,結局殺菌牛乳は都市以外では飲めないことになる。(温度以外の規格は別としても)そうなると都市以外では乳製品を使用する以外手はないことになる。その乳製品も酪農家の搾った乳の一等生乳でなければ製造できないことになると,この要綱をそのまま適用されて,はたして一等生乳として大手を振って歩ける牛乳が何程あるか知らん。そうなると結局殺菌牛乳は飲めないし,乳製品は製造できないとすれば,農村の人工栄養児は何によって生活するかということになって大きな問題になってくるのである。折角ここまで発達した酪農を,この一片の要綱で一気につぶす気なら何をかいわんやである。酪農家のこれに対する研究と,為政者の運用の妙を願ってやまない。

 ◎今年は梅雨期に雨が多かった,例年に比べれば,多過ぎた方であろう。地域的には洪水で,又々何十億かの損害を被っている。今年は山の切り過ぎがたたって例年よりか2―3割,水量が多かったとか,これらは大予想されることであり,過去の記録より見れば上流で何ミリ降れば下流では何尺の増水かの見当はつくのである。過去の最大降雨量の何割増かを考えて計算すれば,下流の水位も大体判る筈である。年々災害によって失われる何十億かの金を,百年の大計をもってこの予防に注入する計画はできないものか知らん。島国根性のお座なりの小さい計画は止めて,子孫の為めに計画を樹てたいものである。

 ◎梅雨明けと共に太陽の光線も強くなり,乾草を作るのにいい季節となる。岡山県の人は乾草を余り問題にしていないが,飼料の自給を計画するとすればエンシレージと共にどうしても考えなければならないものである。冬季飼料ばかりでなしに,仔牛の育成にはなくてならぬ飼料である,特に乳用仔牛の場合は絶対必要なものである。乾草なんてものは一度に沢山作る気になってもできるものではない。特別な採草地のない処では,手のすいた時少しづつこまめに作らなければ思うような量はできないのである。
 秋になって硬くなった草で作った乾草は,量はできるかも知れないが質のいい乾草は決してできない。梅雨明けと共に作ってほしいものである。