ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年8月

巻頭言

和牛雑感

惣津 律士

 岡山県の和牛の名声は全国にあまねく知れ亘り,その販路も従来は相当広範囲に亘っていた,この名声を博した蔭には数多い先輩の血のにじむような努力があった事は厳正なる事実であって,我々はこの際あらためて,その血涙にみちた歴史をたぐり,数多の教訓を学ぶ必要がある。
 敗戦を契機として時代は変遷し和牛界に著しい影響を与えた。我々はここに和牛の将来の在り方について慎重に考究してかからねばならない時態に立ち到った。即ち本県和牛の美点は保持し欠点を補正改良して,社会の要望たる和牛の造成に努める必要が生じてきた。
 改良増殖に次いで現在考慮される事は生産費の低減と消流の円滑である。生産費の低下としては人工授精の普及徹底と,飼料自給度の向上がある。人工授精は改良の面からも極めて必要であり,種雄牛の節約,生産率の向上から万難を排してもなしとげねばならない。
 飼料自給度の向上については幸に今般牧野法が改正されて,国としては荒廃した牧野の改良に力を注がれる事となったので,右に則応して県としては来年度より本格的に乗り出す考えである。
 次に消流の事であるが,10万5千頭の和牛を有し,毎年2万5千頭の生産をあげたる本県としてはこの対策の成否如何が,生産の高揚にも農家経済の向上にも著しい影響をもつものである。消流の打開策については畜産局に於ても来年度より本腰を入れられるように聞き及んでいるが,県及び関係団体に於てもこの際一丸となって進む必要があり,私としては日夜研究努力を払っている次第である。飼料事情の好転に依り肉牛造成も考慮されるに到った事は喜ばしい。
 とまれ,本県は畜牛県である。これは本県の風土,農業経営上永遠不変の事実である。我々としてこの際,愛する郷土の進展を願うならば,この重要性を有する和牛に対して,独善性はいさぎよく棄て,将来の在り方をお互いに研讃し,新しい進み方を取る必要があろう。畜産農民はよろしく和牛を飛躍せしめなければならない。