ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年8月

和牛特集

岡山県和牛の現況

渡辺技師

 岡山畜産の大宗である和牛はその頭数も戦争の打撃により約2割5分程度の減数を来したが,農業経営の合理化と農家経済復興のため畜産農民の撓まざる増産意欲により現在103,000頭を擁し畜産増殖5ヶ年計画の水準に迫りつつあり一方里に付き225頭,農家戸数1戸宛0.6頭,耕作面積1.03町に1頭の割に飼育され,1ヶ年約20,000頭強の生産がある。本県の地勢はよく畜産に適し和牛の産地として汎く知られ,其の中でも阿哲郡川上郡,真備郡苫田郡等は最も著名で,此れ等生産地帯は山林原野に富み地味肥沃にして芻草繁茂し,清泉湧出し天与の好放牧場にして,住民も又愛畜心に富み牧畜に親しむ等岡山県和牛の名声を皷吹したのも又偶然ではないと思う。
 岡山県和牛の特質は品位に富,体躯緊実し,老牛になっても持崩れがせず,然も性質温順で粗放なる飼育管理に耐え肢蹄頗る堅牢にして使役に至便である,又資質骨締りが良く肉味がよいので但馬牛と共に併称せられる等我々の日常生活に必需的存在であり全国に流布して好評がある所以である。
 現在供用種雄牛は国有1頭,県有120頭,団体有93頭,個人有106頭合計,320頭を有し人工授精の普及等により昨年の供用頭数に比し概ね1割減である。
 家畜市場も南部の2,3の郡を除き各郡に市場が開設され,中でも上房郡高梁家畜市場は全国屈指の市場で,年間15,000頭以上の入場頭数があり県内は勿論他府県より顧客が殺到し盛況を示して居る。
 売買価格も成牛(3才以上)雌19,000円,雄15,000円,仔牛(1,2才)雌10,000円,雄7,500円程度の平均価格を示す,別に定期(常設)家畜市場日割を掲げ参考とします。岡山県和牛改良も幾多の変遷を重ね概ね血液も固定して来たが,更に堅実なる登録と優良種雌牛を合法的に配置し,採長補短農家の至宝として又国民栄養の向上に最善の貢献を斉すべく改良増殖に不断の努力が必要である。