ホーム>岡山畜産便り>岡山畜産便り昭和25年8月 |
過去20年来実施して来た和牛登録も各位の絶大なる協力と努力に依り飛躍的なる発展を遂げ皆にしたしまれるそして愛される登録となって現在に及んで居る事は皆様もよく御承知の事と思います。現在田舎を歩いて見てバスの中や庭先での牛の話の中には必ず「やれ本資だ」の「やれ本登録だ」のと殆んど日常無意識に出ている位一般に浸透し認識されている事は,和牛改良上誠に同慶の至りです。
この様に普及されている登録も来る10月13日よりそのやり方が改正され,一段と高度なものになり,愈々和牛改良の真髄に入って行く事になりました。では和牛の登録をなぜ改正しなければいけないのか,又10月13日と言う半ぱな日取になぜしたか,改正される登録はどの様な方法で行うか前の登録との関係はどうなるのか等色々疑問の点があると思いますが以下遂次説明し,皆様の今後一層の協力方を願うものであります。
尚本文を通して将来の和牛改良の方向にも触れて見たいと思います。
申すまでもなく現在の登録は全国和牛登録協会で実施して居りまして会員の意志によって全てを為されて居る民主的なる組織であります。その意見を総合して見ますと,従来実施して来た登録の成果が非常に大きく,改良が急速に進んだ結果,現在の登録で進めば遠からず殆んど大部分の資格牛が本登録,予備登録或いは補助登記になって行くと言った現状までに至って居ります。その為将来の改良進歩が非常に遅くて進渉せず折角の登録も労多くして功少なしと言う所に多くの声があったわけです。今その例を岡山県に取りあげて見ると第一表の通りです。昭和6年より予備登録を初めて実施し,昭和11年には本登録1頭予備登録147頭のものが15年後の昭和24年には本登録769頭予備登録3572頭と飛躍的に増数している事です。現在各地に於ても白班(まだら)乳白のある牛やその他失格の牛が殆んど見受けられず一般に牛が非常に似通って来たとよく聞きますが,この様な現状よりして今回の改正がなされ,一段と高度な新鮮な登録が将来行われ益々和牛の真価を発揮する様に為されたのであります。
和牛改良の為の施策が初めて日本に建てられた明治33年より本年は丁度50週年に当り本年の10月7日より13日まで鳥取県に於て中国連合畜産共進会が開催されそれに併せて全国の登録牛の研究会が開催されるのでこの大いに記念すべき10月13日を選んだわけです。この研究会には北は東北より南は鹿児島に至る全国の登録牛が一堂に集まって大いに研究される事になって居ります。
開放式とは従来行なっていた様な無登録牛より優良なるものを基礎牛として遂次補助,予備,本登録牛とした事で従来外国種を入れた雑種牛より遂次良牛を選び登録牛としていたのでありますが,前に申した通り現在では非常に進歩しその必要がなくなった結果,今迄の無登録牛は登録より除いて閉鎖し,現在補助以上の牛より選択登録を行なう様になった事です。これを閉鎖式と言い10月13日以後は無登録牛よりの仔は永久に登録牛の仲間入をする事が出来なくなったわけです。
従来は生後36ヶ月までに登録審査を受けて体格の良いその祖先に異状のないものは夫々本登録予備登録となっていましたが,将来はこれも行い,更に一歩前進してその仔出しが良好で遺伝質の強い,優良なる牛を生産したならば,今一度検査をして体格のくずれていないものを高等登録とする様にした事ですこれによって高等登録に合格した牛は天下一品の良牛と言えるわけです。
和牛は申すまでもなく役肉兼用で日本の農用牛であります。この為には農耕に使役して肢や蹄の丈夫で歩様の確実な事と,又生産した場合乳量の多い仔牛の発育が良く尚余った乳は飼育者が飲むと言う利用性の大きなものを要望するわけでこの点将来高等登録には絶対に必要な条件です。
別表二表に示してある通り。
(1)従来の登録は本,予備,補助となっていたのを将来は本登録,予備登録を廃止し一本に纒め登録とした事
(2)補助牛登記はそのまま補助登記となる。
(3)補助牛以下は廃止し登録審査の際70点以下の牛は無登録牛としてその仔は登録となる事が出来ない事
(4)登録牛の肉77点以上の父母の登録牛よりの仔は高資となり生後36ヶ月で登録審査を受け体格77点肢蹄歩様の77点以上に合格すれば高等登録資格牛となる。
(5)この高等登録資格牛よりさらに仔出を見てその仔に77点以上の登録牛が雌では2頭雄では10頭以上生産されたら,さらに高等登録審査を受け体格77点乳徴77点以上のものが初めて高等登録牛となる。
(6)高等登録は早くて6,7才位で受検する様になる。
(1)従来の本登録予備登録は登録牛となる
(2)従来の補助牛は新規程の補助牛となる
(3)新しく登録牛とみなされた本登録及び本資の予備登録は調査及び審査の上高等登録牛となる事が出来る。
(4)昭和26年3月31日までに優良なる無登録牛は検査の上補助牛となる事が出来る
(5)10月12日までに基礎牛となっている牛の仔は検査の上補助牛となる事が出来る。
以上改正の要点及び方法の大要を説明し将来の行き方も大体判断された事と思いますが,以上を要約して将来の和牛は特に(1)体積豊で早く大きくなり標準発育に達する牛,(2)肢や蹄の形のよい丈夫な牛で歩様の正確なもの。(3)乳のやわらかく大きく乳頭の附着の広いもの。(4)仔出しが良く遺伝質の良い牛で体のくずれないもの。(5)品位に富み性質温順な牛,この様な和牛を造り上げ名実共に日本農用牛としての真価を発揮したいものです。
岡山の和牛も過去の実績と努力に依り現在では飛躍的発展を遂げたとはいえ今後も益々この趣旨に副い改良致し度いと考えます。各位の絶大なる協力をお願いします。(佐野記)
別表一
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別表二 |