ホーム岡山畜産便り岡山畜産便り昭和25年8月

照顧却下(8)

杜陵 胖

◎牧野法が改正された。

 従来の牧野法は馬を主に考えられていたので牛の産地では採草地にしても,放牧地にしても一部分しか認められないし,それも何んとか馬と結びつけなければならなかったのだから全く始末が悪かった。それが今回の改正になって牛の牧野も大手を振って牧野の仲間入りができることになったのであるから中国地方の和牛の産地では大いにお祝いをしなければならないことになった。尤も管理牧野(牧野法の解説については前号を参照されたい。)の方は従来の牧野を活用すればよいのであって,地方公共団体で適当に管理規程を作って皆が充分活用できるようにし牧野が荒廃しないようにすればその目的の大部分は達せられたことになる。
 私の言いたいのはそれではなくて保護牧野の規程ができたことと,この活用の解釈が広範囲に適用されることになったので,岡山地方の如く瀬戸内海沿岸地帯であって禿山の多い地方でしかも畜産の盛んな地帯は,この保護牧野の適用によって広大な採草地が得られるので,新たな角度よりその経営方法が考えられ,検討を加えなければならなくなって来ると思うのである。
 一例を児島半島にとってみても,近年目覚ましい発展を遂げてきた東児島の酪農地帯も,その背後の脊梁をなす山々は見事な禿山であるため己むなく粗飼料は狭い畦畔や堤塘に依存してきていたのであるが,この禿山が保護牧野に指定されて,牧野としての保護を受け,草生に対する措置が講ぜられ,数年先でもよい採草ができるようになれば,東児島の酪農経営は恐らく一変するものと考えられるし,真に地についた酪農が生れて来るものと思われるのである児島の禿山に対する植栽の試験は既に林業試験場高島分場において実施され,あの禿山の一角に青々と草木の繁っているのを知っている人は少い。あの山々が保護牧野に指定され禿山が緑の山となり,香り豊かな牧草を産する日の一日も早からんことを祈るものである。

◎草生改良で思い出したが最近特に考えさせられることは日本在来野草の牧草化の問題である。牧草と言えば横文字で書いた草名でなければ牧草でない様な考えが未だに畜産人の頭の中にあるのは遺憾である。外国牧草が輸入されて既に7,80年,その間には多種多様何百種かの牧草が輸入されたことであろうが,残っているものはほんの僅かしかない,皆内地の草に負けてしまっている。そんな外国の牧草に何時までも未練を残さないで,もういい加減に日本在来の野草の中から日本独特な牧草を創り出してもいい時であると思う野草に対する関心の少いのは日本人の通弊である。野草を育て,野草を改良する気のない処には決して畜産は発達するものではない。
 国土保全の大乗的見地より新牧野法を検討し,草を愛し,草の質を改良し草の種類を殖し更にこれを家畜と言う精密機械を通して肉や乳や,毛や皮に代え,吾々の生活を豊かにしたいものである。

悠々と牛涼みあり夏の草