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冬はスキー,夏は緬羊
利用価値の大きい大ケ山

△苫田郡阿波村の大ケ山はスキー場として以前から有名であり冬分には相当多数のスキーヤーが各地から銀鱗のスポーツを楽しんでいる処である。春から秋にかけてはこの地に柔かい良質の草が豊富に繁茂するのでこの天然資源を利用するためスキーの経営者稲田金松氏は昨年から緬羊を飼育し自然生の草のみでよく太り良好な成績を収め村内に奨励している。この阿波村は牛の産地としては苫田郡内でもその名を知られた産地であるが緬羊については全然処女地であり現在稲田氏の飼っている5頭のみである。

△津山畜産農場は現在緬羊40頭を飼育し県内緬羊奨励の元締としてその改良増殖に力瘤を入れ明年度からは羊毛加工事業も始めたい計画であるが現在場の所在地は土地が悪く良い草に恵まれず,ために緬羊の発育も充分でない憾があるので何とか改良策に苦心していた。この秋に当り稲田氏の好意により本年6月から農場の緬羊をこの大ケ山に移動放牧することになり目下30頭を飼育中である。

△夜明けに牧舎の柵を開けば緬羊は連れだって上の草のある処に上って行く。そして日中草を充分食って夕闇せまる頃帰ってくる。ここに移転してから1ヶ月余になるが既に大分見変って良くなっている。この分で10月迄いけば相当よくなるであろう。

△緬羊は飼い易く草丈で飼うことができる。殊に大ケ山の如き良質の草の立つ処では草のみで充分だ。……草を毛に……農村衣料の自給はこの手でやるべきだ。即ち天然資源を生かして貴重な必需品とすることができる。先日県の畜産課長外一同が同地を視察し同村関係者に緬牛の講話をなし多大の感銘を与えた。

△冬はスキー場として大いに利用し春から秋にかけては緬羊飼育の一挙両得……阿波村は勿論草のある処ではこの方法により草から衣料をえられよ。

(津山畜産農場)