ホーム岡山畜産便り復刻版 岡山畜産便り昭和25年9月号 > 見本園

見本園

細 麗路

一. 蕪菁

 炎天に餌を運ぶ蟻の群に向って,露草の上から,あざ笑ったキリギリスが,晩秋の物悲しき夕,瘠せ細って,蟻の家に一椀の糧をもの乞いに行ったと言う童話を聞いた事がある。
 農家はこの暑い夏から秋にかけて,冬の飼料を準備しなければならぬ。乾草,サイレージの調製と,炎天の蟻の如く,周到な準備に忙殺される。冬期枯草期の間に,新鮮で水分の多い飼料(多汁質飼料)として蕪菁がある。吾国では北海道東北に多く栽培されているが,本県の如く暖地帯では少い。スェーデンでは,近時麦作より蕪菁の作付が増して来たといわれている位,重要なものになってきた。
 蕪菁は他の作物に比して生育日数が極めて細かく,反当養分収穫量の上からいっても,大麦に比し1.2倍で,茎葉を入れると1.5倍から2.0倍近い養分収量を得る。又冷害地帯にも収穫が収穫が確実で土壌を膨軟にし,次期作物に好影響を与える。その上,家畜の嗜好に適すばかりでなく,ビタミンB・C・水分の補給等により他飼料の消化を助け,食欲の増進を計り,豚の主飼料,その他の家畜の補助飼料として家畜の肉質を良くし,乳量を増す極めて優秀な飼料用のカブラの中でターニップ(普通蕪)と,ルタブカ(スェーデン蕪)の2種がある。

(一)ターニップ(普通蕪)

 飼料用として,聖護院,パーブルトップ,ホワイト,グローブ,札幌紫,紫大蕪等がある。下種期は8月−9月下旬で生育日数90日で,本県では紫大蕪が成績がよい。

(二)ルタバカ(スェーデン蕪)

 根は,白,青,緑,色をして,外皮はクリーム色で厚くて硬い,貯蔵性に富み,品種としては,仙台蕪菁,ホワイトフレッシュド,ネックレス,ウィルヘルムバーカー,マゼスチック等の品種がある。生育日数は120日位で,前記ターニップより長いので,1ヶ月位早く播けばよい。これはビートの成分と良く似て居り収穫量も多くターニップに比し下痢を起す率が少い。しかし害虫に弱いのが欠点である。栽培法はターニップに準じてやれば良い。即ち反当播種量は2−3合畦幅2尺の条又は点播で条播の場合間引きは第1回を手鍬で削り取り第2,3回目は手で間引く。本葉2−3枚位出る間に間引きを終えるようにすべきで,間引きが余り遅れると収量が200貫位減少する。霜に対してはターニップより強い。厩肥400貫の基肥に過燐酸石灰7貫硫安4貫加里2貫位施せば良い。

二.貯蔵法

 蕪菁は摂子零下7−8度位までは凍結する心配がないから其儘放置しても良く寒冷地では茎葉を切除し収納庫に堆積すれば良く,少し安全な方法では高燥な処に浅い穴を掘りこの中へ上部が円錐形又は屋根形になる様に積み上げ,これを麦藁で覆い寒さが加わるに従ってさらに土をかける様にする。しかし4月以降の貯蔵はサイレージとする外なく,茎葉を除き水洗し土を除き,ルートカッターの桶の中に入れシャベルを突込んで細切し指先で押して水が少しにじみ出る位に日乾(2−3日間)して詰める。水分が多い心配のある場合はサイロの底,中央,上面,に3寸位の切藁層を作ると安全で小型サイロで60貫前後の重石を置けば良い。出来たサイレージは臭味が良く家畜は好食する。茎葉も日乾して根に混しても良い。

三.給与法

 給与法は乳牛1日1頭2.5貫以下が良く,肥牛は8貫まで,馬は1.5貫,羊,山羊,は500匁位が良い。但し水分が多いので若い動物には多量に与えない方が良い。豚は煮沸して与えれば良い。

四.作業量

 反当労力6.34人歩位で,青刈燕麦3.0人歩等に比較すると2倍位を要す。これは間引き作業に人手を要するので生育日数反当養分収量の点から見てあまり高価なものではない。
 ビートと蕪菁を混同して蕪菁をビートと言う人があるが,ビートはシュガービート(甜菜)と,飼料用ビート(マンゴールド)の2種類を言い,蕪菁は十字科植物であるのに比べてビートはあかざ科植物であるので種子も不断草の如く数個が硬い殻の中に入っている。又播種期も春であるので全然異なっている。本県においては紫大蕪が多く栽培されているが,暖地における飼料用カブラの品種の改良と,病害虫に強い品種の造成は今後の研究課題である。