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甘藷蔓の最も簡易で理想的な三脚乾燥のすすめ!!

ただまさお

 本年3月末で飼料の配給統制は,国内産大豆粕を残すのみとなった。統制撤廃により飼料界は漸進的な安定を見せている。しかしながら畜産はあくまで自給飼料増産の裏付けによって健全な発達が期せられるが本然の畜産形態であるので,この際この分野の積極的な開拓が極めて肝要である。農家が家畜を飼育するとき自給飼料の増産確保対策を考える必要がある。
 稔りの秋!越冬飼料準備の秋!
この秋に当り自給飼料の1部門として甘藷蔓の乾燥法を記して見よう。

一.甘藷蔓は貴重な天与の飼料資源である。

 我国における農林副産物中の王座を占め年産20数億万貫近くも生産される甘藷蔓は現在の日本にとって天の与えた誠に貴重な資料資源というべきであろう。
 この資源を活用することが我々畜産人の責務である。かりに反当500貫の生蔓が生産されたとしてその飼料的価値は麦の約2石に相当する。甘藷作付総面積50万町歩とすれば蔓だけで燕麦1,000万という尨大な数字になる。この勿体ない飼料資源の全面的な利用は農家個々の経営内容の充実に資することは論ずるまでもなく都市の役牛馬乳牛等非農家の持つ家畜の飼料対策上も極めて重要なばかりでなく更に食糧的にみても放任して置けぬ問題である。諸は人に!!蔓は家畜に!!向けるべきである。

二.甘藷はどれ位の飼料的価値があるか。

 乾燥甘藷蔓の中等品で澱粉価30%乾燥良好で葉の附着充分なものは40%以上もあって濃厚飼料に匹敵する。
 農林省旧馬事研究所において中役程度の労役馬に対する標準燕麦給与量(日量)7キロの1/2量の3.5キロを減じその代わりに中等品以下の乾燥甘藷蔓を7キロ(燕麦の沈殿価60%中等品の乾燥甘藷蔓30%従って甘藷蔓をもって燕麦の代替はその倍量でよいことになる)をもって置替えて長期間労役を課したが少しも悪い影響がなく却って対称馬より栄養の向上が認められ充分に代替の目的を達し得ることが立証された。
 なお乳牛や山羊に与えれば泌乳量を増加し牛豚に給与して肥育に相当の成績を挙げ得ることも愛育家,篤農家により実験済みである。

三.甘藷蔓は何故全面的に利用されていないか。

 甘藷は農家が栽培し蔓は農家の手中にある。稔の秋は農家にとって誠に忙しいものがある。田のもの,畑のもの,山のもの凡てが一時に収穫される将に猫の手でも借りたいこの秋である。従って甘藷の蔓等にかまっておれぬと言い度くもあろう。そのまますき込めば肥料にもなるし面倒がなくて一番良い「サイロ」があっても運搬に厄介であるからよして置こう!等々申される理由は多々あるであろうが………要は甘藷蔓そのものに対する真の飼料的価値の「認識不足」と相俟って多汁性の甘藷蔓に対し「農家の実情に則した簡易でしかも効果的な処理方法」が示されていないからであろう。

四.甘藷蔓の乾燥法にはどんな方法があったか。

(一)切断乾燥法

 カッターか押切を利用して1−2寸に切断して,莚等に拡げ日乾又は火力乾燥する。この方法は良質の製品を得るが,機械と労力を多く要し殊に天候に支配されることが多いから大量生産は困難である。

(二)圧偏切断乾燥法

 ローラーにかけ蔓を圧偏し更にカッターで1寸位に切り日乾又は火力乾燥する。この方法は極めて優良な製品を得るが機械と労力を要する点は前法以上であって大量生産には不向である。

(三)架掛乾燥法

 2−3日現場で乾燥した7−8分乾状のものを架又は木の枝等に垂れ掛ける場所は日当り通風の良い所を選ぶ最も普及している方法である。この方法は大量生産は可能であるが優良な製品を得ることは望めない。天候の支配を受けることが多く色沢が悪くしかも脱落が多い。

五.甘藷蔓の理想的な三脚乾燥法について

 次に述べる特製の三脚架に生蔓又は半乾状のものを1架当り普通30−80貫(大型架は150貫以上)掛けて乾燥する外側と下部は風乾により乾燥され中心部は軽微な醗酵によって乾燥するのである。この方法は天候支配を受けることはなく最も農家の困難とする労力と資材は僅少で足り,しかも大量に乾燥処理することができる。
 できあがったものは最も栄養分の多い葉部が全然脱落せず緑褐色の色沢を有し芳香が有り弾力性があって極めて良い理想的な優良品である。ただ欠点とも言うべきことは乾燥期間の長いことであるがその反面ゆっくり収納し得る得点もある。
 是非この方法により甘藷蔓の全面的活用を図り冬期の自給飼料を確保したいものである。

六.三脚乾燥要領

(一)単式架

 長さ7−8尺,直径2−3寸の竹又は丸太3本を並行に揃えて,上部1尺7寸−2尺の所で余り太くない藁縄で充分緊縛する。
  間隔5尺位の正三角形状に拡げ尖端も5−6寸土中に押し込む。1架に生蔓なら30−40貫,6−7分乾状のもので25−35貫(生で40−60貫)が適当である。組立てる場所は畑の隅や空間地を利用し通風日当りの良い所を選ぶ。

(二)複式架

  前述同様に三脚架を組立て更に地上2尺5寸−3尺の所に横木(竹)を三角状に結びつける。風当りの強い場所或は蔓の短い品種のものを乾燥するに適する。台風等で万一横倒になってもそのまま起せば良い。1架で生蔓なら40−70貫6−7分乾燥のもので35−50貫(生で50−80貫)である。二間もある丸太を利用し横木を3−4段にもすると1架で150貫以上は掛けられる。

(三)甘藷蔓の掛け方及び収納方法

  先ず横木3本に一方から順序を立てて掛ける。この際中心部に空間を若干設ける様にする。横木の交叉点に厚さ1−2尺位掛ける。次に三脚架の交叉部に一方から次々と重量が平均する様形良く掛けて行く。この際横木に掛けた蔓を被う様にする。段のできるのは禁物である。雨水等の浸入を防止するため最上部は偏平形とならず山形にする様留意する。雨量の多い地方では2−3日現場干したものを利用するとよい。材料は生蔓,半乾何れも雨や露のついていないものを利用することが肝要である。
  掛け終ったら最上部を藁帽子か古俵か古莚等で雨露を防ぐため被う。天候の良い年には帽子を使用しなくても良い場合もあるが使用すれば安全で確実である。帽子が風等で吹きたたぬため帽子の結束部に縄を3−4本(4尺−5尺長さのもの)を結びつけて下におもりを吊すか5−7尺の竹又は丸太を3−4本尖端で結び帽子の上から押えるも一方法である。でき上った形は単式架は細味の円錐形,複式架は丸味の円錐形である。
  乾燥はその年の天候や1架当りの重量甘藷の品種,収穫期その他生蔓の場合等により一様ではないが,概ね3−5週間で完全に乾燥する。収納は晴天の日中を選び三脚架を横倒とし適当の大きさに結束して運搬貯蔵する。歩留りは生の重量に対し概ね1/6である。
  藁帽子を作るには,なるべく長い藁500匁−1貫目を基部をそろえて藁の尖端5寸−1尺の所を藁縄で充分結束する。次に結束部の先端を逆に折り曲げ最初の結束部の直下(藁の基部に近く)を緊縛する。更におもり用の縄を結びつければそれでよい。

山寺の鐘鳴り止まず彼岸晴れ  青峯