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サイレージとサイロについて(1)

多田(昌)技師

 農家が家畜を飼育するとき,春から秋にかけては野外の牧草や田畑の生産物など飼料になるものがたくさんに得られるが,冬期とかく飼料が不足し,青草類の代用として飼料を貯蔵する必要がある。この水分の多いまま貯蔵するのに使われる容器がサイロ(Silo)でサイロに詰めてできた保存飼料(埋蔵飼料,埋芻飼料,酸性飼料,酸芻飼料ともいう)がサイレージ(Silage)(又はエンシレージEnsilage)である。
 サイロという語について説明すると,SpainのSylosより出たもので,元来は一定の容量の単位の名称であったが,その量の穀物を貯蔵した土中の洞穴をも意味したのである。しかし今では一般に穀類その他即ち牧草飼料を貯蔵する槽自身を指してサイロといっている。米国では広義には槽を有する穀物倉庫即ちグレーンエレベーターもサイロと称している。
 サイレージの調製はイタリ−が最初で1786年ころより行われ,米国1875年,日本では明治25−26年ころに初めて行われたようである。

一.サイレージ

(一)サイレージの特徴

 農家が家畜を飼育すると完全自給とまではいかなくとも飼料の大部分を自給するのでなければ健全なやり方とはいえない。従来飼料の自給については一般に比較的無関心であり研究が足りなかったが終戦後統制経済が行われて,飼料及びサイロの主原料たるセメントが自由に入手できなかったので,農家はサイロの建設について関心を持つ様に成った。
 今日セメント及び飼料の大部分が統制のわくからはずされ,いよいよ自給飼料生産を高めるにはサイロが必要である。青草のない冬期間に青草の形で与えるサイレージは生産飼料としてのみならず家畜の健康保持上極めて重要である。
 サイレージはトウモロコシなどの青刈類をはじめ根菜類や紫雲英,いもづる,青草,あるいは各種製造かすなどを水分の多いままサイロに詰め込んで乳酸はっ酵を起させ腐らぬようにして保存した一種の漬物ともいえるもので,次のような特徴を持っている。

1.冬,青草の不足したとき,又一年中多汁質飼料として家畜に与えられる。
2.家畜が喜んで食べる。(生草のままでは家畜の好まないものでもサイレージにすれば喜んで食べる。)
3.詰める材料によっては,一部濃厚飼料の代用になる。
4.製造にあたり乾草の様に天候に支配されることが少く,労力も比較的少くてたりる。
5.貯蔵場所が乾草に比べて半分以下ですみまた貯蔵中養分の損失が乾草に比べて少い。
6.乾燥するのに困難な紫雲英,クローバー等も容易に貯蔵できる。
7.冬期間不足勝ちのビタミンの補給源として重要である。
8.一度サイロを造れば長年使用に耐え別に維持費もいらないから,経済的である。

(二)サイレージの材料

 水分の多い飼料や草類のたいていのものはサイレージの材料になるが,おもなものは次のようなものである。

1.青刈作物 トウモロコシ,エンバク(カラスムギ),ダイズ,エンドウ,ソラマメなど。
2.農作物の食用にならない部分 サツマイモのつる,ジャガイモの茎葉,ダイコン・カブラの茎葉など。
3.根菜類 サツマイモ,ジャガイモ,カブ,菊芋など。
4.牧草類 オーチャード,チモシー,ルーサン,クローバー,レンゲ,ザードゥィケンなど。
5.雑草類 ススキ,チガヤ,メヒシバその他有毒でないすべての雑草。
6.その他 木の葉,クズ葉,桑の残り葉,蚕沙,蚕ぷんなど。
7.製造かす類 でん粉かす,ぶどう酒かす,ビールかす,とうふかすなど。

(三)サイレージのつくり方とそのさいの注意

(1)材料の刈取時期

 単位面積から最大の可消化養分量を収穫できる時期が最もよい。例えば青刈トウモロコシ,青刈エンバク,青刈大豆等種実の乳熟期またはこれ以前がよく牧草類は開花期がよい。サツマイモの蔓は降霜前,生草類は若いものを収穫する。サイレージの栄養分のバランスを取るため多種類のものを混合して詰込むがよい。標準としては禾本科7割,豆科3割(2割でもよい)となっている。

(2)材料の含有水分量

 詰め込み材料の水分の多少がサイレージのでき上りに大きな影響をもっている。水分が適当でないと,よいものができない。大体材料の含有水分量は70−75%のものがよい。各材料の含有水分量は「別表1」のとおりである。水分が多すぎるとしるがしみだして,養分の損失になるし,でたしるをそのままにしておくと腐敗の原因になる。また反対に,水分が少なすぎると,材料の間の空気が充分に除かれないことになり,乳酸はっ酵が充分に進まず,かびがはえやすくなって,良質のものができない。サイレージの製造に最も必要なものは乳酸菌であるが,この菌の発育には適当な水分とその中にとけ込んでいる炭水化物が必要である。乾燥しすぎて水分の少くなった材料や炭水化物の比較的少い荳科だけの材料等が作り難いのはこのためである。

(3)材料の切断

 材料を詰めこむさい,材料を圧縮し,サイロ中にできるだけ空気を残さないようにして,早くはっ酵させるのがよい。また長いまま詰めこむと取出,給与に取扱い難いので適当な長さに切断することが必要である。切断はサイレージカッター又は押切等による。切断の寸法は材料により異り,硬質で水分の少いものは比較的長くてよい。(切断寸法は「別表1」参照のこと。)

(4)材料の詰め込み

 詰め込む前に,サイロの中を清掃し,きたないものや水気を除く。次に切断した材料をサイロの中へ少しづつ入れながら(小型サイロならば20−30貫ぐらいづつ)2,3人で5分から10分間ていねいに踏みこむ。特に周壁に接する部分は摩擦があって圧縮されにくいから充分踏付なければならない。小型のサイロならば,一度に上まで詰め込むようにする。晴天に足をできるだけきれいに洗って詰込みを行うがよい。材料水分含有量の多少のより「別表1」により乾燥して水分を適度にするか,場合によっては5寸から1尺ぐらいの厚さに材料を詰め込んで,その上に2−3寸の厚さに切りわらを詰めるようにする。また草類を材料とする場合にマメ科とカホン科の草を混合して詰め込むと,養分として理想的で,マメ科の草のみでつくったものよりもよい飼料ができる。一度に詰め込みを行わず長い時間をおく場合は,前回の表面2−3寸が腐敗している場合が多いから取り除いてから詰め込むがよい。表面の腐敗による損失を防止するためには表面にわらを2−3寸の厚さに詰め込んでおくとよい。
 詰め込んだ材料は重石により大体3/4から2/3ぐらいのなる。それで適当な時期に,さらに新しい材料を詰め込むがよい。

(5)重石

 詰め込みが終ったならば,その上にむしろなどをしき,おしぶだ(厚板を数枚に分割したもの)をおいて重石をなるべく平均にのせる。おしぶたは小さすぎずまたぴったりしないものを用いる。重石は1つの目方が3−5貫ぐらいのものがよく,石にあらかじめ重さを書いておくと便利である。重石の重量は材料により異るが,かたいしるのでにくいものには重くし軟らかくて水分の多いものには軽目でようが,浅いサイロの場合には比較的重くする。材料による重石の標準は「別表1」のとおりである。

(四)サイロの中での化学的変化

(1)温度の上昇

 サイレージには高温はっ酵させるつくり方もないではないが,農家では低温はっ酵によるのが一般的で失敗も少い。低温はっ酵ではふつう摂氏23度内外ではっ酵させ,最高温度が30−40度くらいに止まるようにする。
 詰め込まれた材料は呼吸作用によって組織内の炭水化物が分解されて熱がでてくる。温度は次第に高まって2−3日後に最高となる。

 C12+6O=6CO+6HO+熱

 詰め込んだ材料の間に空気が多いと,この作用はますます盛んになり温度はいっそう高くなり養分の損失が大となる。いったん詰めてしまってから温度の調節をすることはできないから,温度が上りすぎないようにするには,詰めるときにあらかじめよくふんで材料の間の空気をなるべくおいだし,早く乳酸はっ酵を起させて発生する炭酸ガスをサイロの中に充満させるようにする。炭酸ガスの充満により好期性菌の発育が抑えられ嫌気性菌(乳酸菌)が繁殖する。

(2)細菌によるはっ酵

 詰め込み当時は材料中に空気含有量多いため好気性菌の発育旺盛で発熱量も多いが日が経つに従って酸素量が減少するので嫌気性菌特に通性嫌気性の乳酸菌の発育が旺盛となり乳酸の生成を来す。材料中の空気の含量が多い程好気性の酪酸菌,酪酸菌等の発育を来し醋酸,酪酸等ができて品質が低下する。

(3)酸の生分

 詰め込まれた材料は細菌のはっ酵により酸を生成し酸性をおびてくる。一定以上の酸度に達すると細菌の発育は停止する。サイレージの酸の含量は通常2%以下である。最も多いものは乳酸で,醋酸,酪酸等は少い程よい。優良なサイレージの酸の含有量は次のとおりである。

 

全酸量  2%以下
乳酸   0.7−1.5%の範囲
醋酸 0.3−0.5%
酪酸 0%
(4)養分の分解

 サイレージの製造中には種々の養分が分解消失されるがその範囲は通常20%程度で乾草製造中損失20−30%に比べれば少い。

(5)サイレージの歩留

 製造中の養分の損失を差引くと大体70−80%平均75%の歩留である。

(6)サイレージの品質

 サイレージの品質(成分)は,詰め込み材料の種類製造技術及び収穫期によって異るが一般に軽るい酸味と芳香をもち黄緑色,薄黄色,またはかっ色を呈す。荳科のものは暗褐色に傾くが,黒色を呈している様なものは劣等品である。一般に若い内に採った方が収量は少いが栄養分が多い。栄養分を多くするための詰込時期は「別表1」のとおりである。

(五)サイレージの取り出し

 材料詰め込み後40日−60日たてば味もよくなり,家畜に与えてもよいようになるが,重石を取らず,雨水などの入らないようにしておけば相当永く貯蔵することができる。
 できあがったサイレージを取りだす場合いは,1回に少くとも2寸以上の厚さを取り出し,後は表面をできるだけ空気にふれさせないようにむしろなどをかけておく。また全表面を平均に掘取り何時も表面を平らにしておく。一度取り出し始めたら続けて取り出すようにし,もししばらく中止する場合には再び重石をのせておく。
 家畜に与えるたびごとに取りだすか,あるいは1回に1日分づつ取り出すのが理想的であるが,相当手数がかかるから2,3日分を一度に取り出し,これを桶などに入れてむしろをかぶせておくのもよい。
 サイレージの目方は,材料や詰め込みぐあいや,深さなどによりちがうが1立方尺の重さは大体「別表1」のとおりである。

(六)サイレージの与え方

 どの家畜に与えてもよいが,豚,鶏にはかたい質のものはさけるがよい。また妊娠している家畜や幼いものにあまり与えると下痢を起す危険があるから注意しなければならない。乾草や濃厚飼料と一緒にまぜて与える方がよい。しかしマメ科の草類などの栄養分の多い材料でつくったサイレージは濃厚飼料の一部節約になる。食い残すと腐敗するから過量に与えないのがよい。乳牛に与える場合は搾乳後に与えた方がよい。余り酸度の高いものは炭酸石灰(サイレージ10貫に炭酸石灰100匁位の割合)等で中和する。
 サイレージは1日どのくらい与えるのがよいか,その適量は家畜の種類によってちがうが,大体次のとおりである。

乳牛 5.0−6.0貫
役牛 3.0−4.0貫
仔牛 1.0−2.0貫
役馬 1.5−3.0貫
休息中のもの 1.5−2.5貫
めん羊,山羊 1−2.5貫
0.5−1.5貫
うさぎ 80匁内外
鶏(主として葉菜類のサイレージ) 20匁内外

(七)サイレージの消化率

 乾燥よりも稍よく生草と大体同様である。(未完)

別表1 サイレージ材料詰込要領

飼料作物名 含有水分 乾燥程度 切断寸法 直径5尺,深さ10尺のサイロで重石 1立法尺の目   方 詰込時期 添 加 物
紫雲英 85.00% 1 日 2−3寸 80貫 6貫 4月下旬 生の場合藁1割
クローバー 80 1 日 同上 80 6 5月上旬 同上
ザートヴイツケン 79.6 1 日 同上 80 6 同  上 同上
青刈大豆 76.4 不 要 2−4寸 120 4.5 7月上旬
青刈燕麦 76.8 不 要 同上 120 4.5 5月上旬
クゾ葉 80 半 日 同上 120 4.5 5月中旬
大根葉 89.9 1 日 4−5寸 80 5 11月中旬
青刈玉蜀黍 82.8 半 日 0.5−1寸 150 4 8月下旬
菊芋 67.9 不 要 2−3寸 150 4 8月下旬
甘藷蔓 88.5 半 日 1−3寸 100 6 10月中旬
馬鈴薯茎葉 85 1 日 2−3寸 100 6 6月上旬
雑草 75 不 要 同上 150 4.5 9月上旬10月下旬 時期により水を要す
青刈蚕豆 85 1日半 同上 100 5 5月下旬
青刈豌豆 85 半 日 同上 80 6 5月下旬
蚕沙蚕糞 13 不 要 不要 100 4 5月中下旬 食塩を加えることあり
桑葉 68 不 要 不要 120 4 春  秋 同上