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巻頭言

中国連合畜産共進会を回顧して

惣津 律士

 10月は我が岡山県畜産人に取って本年最良の月であった。連合共進会で牛馬において優勝した事は畜産岡山の威力を中外に示した事であって何んと言っても快事であった。この栄冠獲得のためあらゆる苦労と犠牲を払われた出品者及び関係者各位に対し私は心から感謝と敬意を表明するものである。誰れもかれもうれしい昨今である。
 しかし乍らこれで岡山牛は大丈夫とうぬぼれる事は大間違いである。近県の出品牛を見ると実に油断は許さず,我々の直後に猛烈なる勢いで肉薄して来て居るし,恐らく各県ともに改良に強力なる対策を今日講じつつある事は明かである。我々としては石原審査官の御批判を充分に咀嚼して,岡山牛の欠点を速急に是正する方向に努力しなければならない。
 今般の県共を見ても優秀牛の大部分が阿哲郡出身であった。私は他の生産郡がもっともっと畜牛の改良に真剣に努力しなければならない事を痛感し,切望するものである。そして県全体としての資質の向上が畜産人の総力に依って一日も早く実現されん事を要望する。
 販路の拡充については今こそ積極的に乗り出す必要があるが,この際私として要望する事は生産者,関係者共に他県に対して良心的に行動して戴き度い事である。一時の功利的商行為は逆に販路の縮小を来す恐れがある事を銘記すべきである。
 次に中家畜の出品を見ると他県に比し遜色のあった事は甚だ残念であった。今般連合共進会で優勝した緬羊,山羊,豚のいずれにおいても先進県から見ると二流品である。その二流品の中において三流品であるのは岡山県の中小家畜の在り方を実際に見せつけられたような気がして,今後真剣に考慮を払う要のある事を痛感したのは恐らく私一人ではなかったろうと思う。農業経営をやって行く上において,適地適畜主義が必要であり,中小家畜も等閑に出来ない問題である。審査官の言をかりると「登録事業の普及,先進県よりの種畜の導入と飼養管理の改善に依り欠点を是正」するの必要はもとよりであるが,さらに換金家畜の観念を脱皮しなければならない。
 大家畜も中小家畜も一様に立派なものが認められ得るのである。私は連合共進会における教訓をいつまでも生かして次期共進会においてよりよい成績を挙げられるよう畜産人の一段の奮起を切望する次第である。