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第15回 輝く3農林大臣賞獲得
中国連合畜産共進会において畜産岡山の声価あがる

 本年2月本誌第4号に「中国連合畜産共進会は岡山の試金石で有る」として御案内申上げたが光陰矢の如しとか最早やその奮闘の跡を記することになった。
 火花を散らして争ったが,その成績が優秀であったと申上ることは自分としても筆が軽い。何はともあれ,準備委員の諸氏,出品者その他関係者に対しては深く感謝している次第であります。
 此の上は販売面に重大なる影響があると言われるこの催の名に違わず,本県畜産のために益々精進を御願いしつつその足跡をたどって見よう。
 昨年7月9日鳥取県庁において第15回中国連合畜産共進会開催の打合をして以来1年有半,準備委員会を重ねること10回に及び,其の間開催地は誘致問題を起し,早くも大事業は難行かと思われたが関係者の総力によって順調に進展されたが,本年8月牛の流行性感冒の大流行を見,開催も危ぶまれた。しかし熱と力の要望により延期ながら開催となり,一息したのであります。
 開催期間中は山陰特有の時雨に連日悩まされ,尚山崩の一大惨事も起り尊き犠牲者を出した事は洵に哀悼の念に耐えない。なんとしても本共進会は多事多難でありました。
 さて,こうした内にも本県としては本年1月準備委員会を結成し着々計画を進めたのでありますが,其の大要は次の通りで有ります。

 1月16日 準備委員会設立 和牛,乳牛,肉牛,種馬,中家畜と5部会を設うけた。
 1月下旬 第1回種馬候補選抜検査実施
 1月31日 和牛部会開催
 2月14日 中家畜部会開催
 同 16日 乳牛部会開催
 同 20日 第1次和牛候補選抜検査
 同 25日 肉牛部会開催
 3月14日より21日まで 第1次種緬羊候補選抜検査
 4月3日より8日まで 第1次種豚候補選抜検査
 5月14日 肉牛候補選抜検査
 5月9日より11日まで 乳牛候補選抜検査(岡山県乳牛共進会)
 6月26日より7月2日 第2次和牛候補選抜検査
 7月14日 第2次乳牛候補選抜検査
 8月2日より7日まで 第2次中家畜候補選抜検査
 10月3日より6日まで 和牛,種馬,種緬羊,種山羊,種豚の最終決定(第6回岡山県畜産共進会)
 10月14日 乳牛最終決定
 同 16日 肉牛最終決定

 上の通りで出品家畜は全部決定,夫々出品者に対して連絡を行い,10月22日大部分が最寄駅から10車輌の貨車により倉吉に向って出発したのであります。
 審査の状況並びに結果は次の通りであります。(宇野技師記)

和種種牛

 畜産家待望の中国連合畜産共進会が鳥取県倉吉町で開催せられた。牛の流感の猖獗により一時無期延期が伝えられ一同唖然たらしめたが,兎も角落着くところに落着き予定より遅れて10月25日から同30日まで開かれた。
 終戦後5年,民生の安定と食糧事情の好転に伴ない前回の共進会より一層期待がかけられ,業者は勿論県下挙げて万全の努力を傾倒し準備諸般の対策を整え,数度の予選により本県出品和牛代表として確信をもって出品されたのであったが結果は予期以上の好成績を齎らし,岡山県和牛史に更に1頁を加え得たことは寔に慶ばしいことである。
 今回の出品和牛は総計87頭中岡山県出品は13頭(雄6頭雌7頭)で,岡山県和牛擬賞点数は1等13点中3点,2等22点中5点,3等35点中4点,4等17点中1点で,この中1等賞雄2才沖津連一氏(阿哲郡)雌2才長岡龍助氏(阿哲郡)の出品牛は1等賞首位で農林大臣賞優勝盃に輝く成果を獲得し,全出品人総代答辞は前記沖津連一氏の朗読するところとなり,岡山県事務所前(会場)は優勝旗並びに「祝優勝」の旗翩ぽんと飜り,万劫の慶びを禁じ得なかったのは一人私のみではなかったろう。
 今回出品の各府県の和牛について考察するに,体型資質において地方的の特色がはっきり見られたが,各府県各々通有的美点欠点があり,お互いは自県産和牛に満足することなく,これ等の美点を取入れ欠点を排除して,大しゃ公しゃから牛を眺め真に,農業経営に適合した経済的価値の高い牛に改良してゆくことが肝要であり,共進会がもたらした真の意義もここにあると思う。
 今回出品の岡山県和牛は別項審査報告に見るごとく粒ぞろいで品位良く,調教よろしく,体緊実し,性質温順,肋張りよく,角味資質等他府県の追随を許さない優位の点であったと思う。
 和牛の改良は一朝一夕に成就するものではなく長年月を要し,岡山県和牛の今日の成果も先覚者の不断の努力の結晶であり,偶然ではないと思う。今回の成績に甘んずることなく百尺竿頭更に一歩を進め,よりよい岡山の和牛として改良増殖を図るべきである。
 出品者各位の不撓不屈の御努力に敬意を表する次第です。
 審査部の審査による採点表は次の通りである。(渡辺技師記)

出品和牛審査採点一覧表

雄   2   才 雄 3 才 雌  2  才 雌  3  才
出品番号 26 23 4 11 28 25 31 34 32 49 43 52 50 78 62 75 77
19 25 21 23 22 22 21 24 24 20 22 22 23 23 22 22 22
角,耳,項 18 27 24 22 18 18 18 23 23 19 24 22 22 19 19 18 20
21 24 20 23 20 25 21 21 21 17 18 22 23 22 22 21 19
22 19 20 18 22 24 22 20 20 18 19 20 24 22 25 22 21
21 19 19 19 20 25 20 18 19 17 15 20 20 19 18 18 18
肋腹 15 18 14 17 15 20 18 18 16 13 16 20 20 16 20 17 18
背腰 15 17 17 16 16 18 18 19 18 10 11 16 18 16 18 17 20
十字部腰角 17 17 20 20 19 19 20 20 19 15 18 22 21 20 20 20 24
17 17 20 18 21 21 20 20 22 18 19 21 21 18 19 19 21
かん 17 18 21 20 22 21 20 21 21 22 20 19 22 18 21 20 21
20 18 19 22 20 20 18 20 20 17 22 21 22 21 19 20 24
19 18 18 21 20 19 21 19 19 15 19 23 21 20 17 20 23
22 20 23 20 21 20 20 21 19 24 23 24 23 20 18 22 23
乳徴性器 18 23 20 23 23 25 18 24 23 23 18 20 17 18 23 22 21
肢蹄 20 18 24 20 24 24 22 19 18 17 20 18 22 22 23 21 21
被毛皮膚 22 19 22 20 23 21 21 18 17 21 23 20 18 25 18 21 20
均秤体積 17 18 18 18 18 19 18 18 18 16 17 20 19 18 18 19 20
品位性質 15 20 18 20 19 19 18 20 18 16 18 19 20 20 20 21 19
歩様 22 21 21 23 21 21 23 20 22 23 22 21 20 22 23 22 23
合計 81.42 80.41 80.17 80.12 79.8 78.97 80.02 79.67 79.34 82.14 81.19 80.46 79.5 80.34 79.9 79.86 79.14
摘       要 岡山県 沖津 連一 〔一等・一席〕 島根県 秦  比徳 〔一等・二席〕 鳥取県 福本 正一 〔一等・三席〕 鳥取県 山本  憲 〔一等・四等〕 広島県 永井 正至 〔二等・一席〕 岡山県 阪井 留吉 〔二等・二席〕 広島県 羽賀 盛之 〔一等・一席〕 鳥取県 朝倉 富雄 〔一等・二席〕 岡山県 松岡虎五郎 〔二等・一席〕 岡山県 長岡 龍助 〔一等・一席〕 鳥取県 北尾 武幸 〔一等・二席〕 鳥取県 勝部 数枝 〔一等・三席〕 島根県 市居 文臣 〔二等・一席〕 広島県 平棟 誠二 〔一等・一席〕 岡山県 上田熊三郎 〔一等・二席〕 広島県 前田 新一 〔二等・一席〕 鳥取県 土橋 武昶 〔二等・二席〕

肉牛

 何を喰ってよくもあんなに肥ったか,これからは肉牛だ,今度は屹度やりますと決意した出品者。
 備前岡山米のなる木なんて謳歌されて他からは穀倉地帯の如く羨望視されるのでありますが,世の中は真逆様,供出配給の統制強化で肉牛なんて言うものには一粒の框もなく畜産の下積み,それでも出品割当をうけた以上はと人なみ以上に苦労して責任を果したのです。出品者には申訳けありませんが,全くお附合的出品で予想通りの不成績でありました。
 他の出品家畜が赫々たる優勝で凱歌を挙げたに反し,しょんぼりとした肉牛の部の横顔,実に淋しかったです。然しこれは出品者の責ではなく,牛の用途を蕃殖と登録一点ばりに仕向けたため,素牛がなかったのにも大きな原因があるのです。兵庫,京都,山口等のものは出品家畜の規格が統一し,又長年月飼育したもののみであります。29日の糶売において予想外の顧客を得て糶取られたことが有終の美で,出品者も関係者もほっとした気配。それに出品者が終始気持よく真面目に審査を受けて,総べてに対し心から満足して下さった点,関係者一同感激しました。
 いま出品牛の糶売成績を示して参考に供します。何んと驚くなかれ稲藁も水も1貫当り高値1,330円です。(生体量に含まれたものの替値)(松尾技師記)

審査番号 等級 生年月 生体重 売買価格 生体100匁当単価 出 品 人
1 4等 昭 23・2 158.0貫 170,000円 107.6円 岡山県 原田 常吉
2 〃 22・7 133貫 125,000円 94円  〃  守屋 龍衛
15 3等 〃 20・9 159.6貫 152,000円 96円  〃  中山 銀造
平均 150.2貫 149,000円 99.2円
16 3等 〃 20・7 169.4貫 226,000円 133円 京都府 岸本重太郎

乳用種種牛

 今回の中国連合畜産共進会において第3部乳用種々牛が,かくも優秀な成績を獲得して『岡山酪農』のために万丈の気を上げようとは誰れが予期したでありましょうか。
 今春本共進会が開催と決するや岡山県酪農協会は岡山種畜場移転落成協賛第1回乳牛共進会を開催し,適格のもの12頭の候補牛を選定した。8月下旬県下に襲来した牛の流感にてあるものは斃れ,あるものは癈疾となって続々出品辞退を申出るものありて,今回は乳牛は出品中止の外なしと断念したのであります。その後延期の報に接し安堵したけれども刻々迫る日時,10月13日蔵知技師と共に進まぬ選抜検査に個々行脚,辛うじて出品頭数4頭を揃えて兎に角出品を決定したのであります。処が21日輸送の前夜出品牛の管理者が急病にて出品不能の連絡あったが,補充つかず,3頭だけ慌しい積込みを行って出発したのであります。見送る人の言葉はただ「御苦労をかけます」の一言のみでした。(それは今回の出品は自信なくおつとめ出品であったから,斯様な成績が獲得出来るのであったら前祝でも行うのであった)
 未だ明けやらぬ山陰の宿をこっそり抜けだして時雨に濡れながら会場に足を運べば,この檜舞台で吾れこそは秘かに笑をたたえて余念もなく手入に精出している。
 ふと目を転ずれば,泥濘の中を惚々するが如き2頭の白黒ぶちの牛が運動しているではありませんか。嗚呼!もう駄目だ。あんな立派なものがいては予想通り岡山は恥晒しだ。溜息で鼓動は中止しそうだった。せめて黒白の判定しない内に拝見のみでもさせて戴くことにしようと一歩二歩と近よれば,何んと嬉しや岡山の牛ではありませんか。今までの失望に蘇生の思い。涙の握手に頬ずり寄せて,これなら必勝しっかり頼みます。やりましょう。互いに誓い合ったのであります。
 それから予定通りの審査日程で雨の中を総体,個体,比較(4回)等の息づまるような厳密な審査を受けたのであります。
 1等賞の2席に入選した邑久郡大宮村近藤明始氏のものは服部オリーブ園で同氏が手塩にかけて育成したもので,畜主そのままの極めて温良な性質の愛娘牛,凡ゆる審査を難なく容易に受けました。然し妊娠4ヶ月の未経産牛故に僅かに膨れた乳房を審査員各位に撫でられて,恥かしそうに背を上げたのも愛嬌でありました。母牛は戦前北海道より奥山酪農会長が導入された系統牛で現在12才の高齢で健在,小型ではありますが親子そっくりの体型です。今2寸大きくあったら全国乳牛共進会へ出品しても優秀な成績を獲得するでしょう。
 2等賞の1席に入選した岡山市津島梶原牧場の出品牛は自家生産,母牛は京都より移入したもの,父牛は目下津山畜産農場に繋養している第9キング・ベッシージェラルディンシックスティンス号で資質と品位の優良なことはぴか一でありましたが,生れた処が牧場(搾乳場)故一寸寸たらずと流感の疲労で肉不足であった。この牛の愛嬌は主人を慕うことで審査中もじだじだして最も不利な条件下で審査をうけたことです。付添い人の労苦が一入でなかったらしい。然し上総代で受賞された梶原氏の胸中も聊か感激して風なき式場でも少しは動いていたようです。
 栴檀は二葉より芳しの諺の如く同じく2等賞に入選した邑久郡長浜村松尾俊光氏の出品牛は羽納春吉氏生産した4代高等登録を母牛にもつ系統牛であり,又高等登録牛であります。うぶゆの未だ乾かぬ内から当の松尾氏が譲り受けて寵愛したもので,美しい派手な斑紋,全く白百合のようです。出発前にふとしたことで後膝を痛めて関係者一同を心痛させたものも一通りではなかったですが,万難を拝して出品を賜った責任感には只々感謝の外ありません。年を経るに随って系統的に体格も充実するので立派なものになりましょう。
 以上の如き側望であって,事前に心配した苦労が無駄になった点は多年識者の研究指導と伝統が美事に結実したに外ならぬので,一朝一夕に出来るものではないと言うことを痛感しました。
 乳牛の蕃殖は系統蕃殖でないと良いものは作れない。(松尾技師記)

種馬

 種馬は過ぐる第14回中国連合畜産共進会で栄冠を獲得しているので,今回も前回の栄誉を辱しめてはならないと思いながら予選にとりかかった。
 第1次予選は烈寒1月末から2月にかけ雪の上形部を振り出しに,八束,津山奥津,勝加茂と良馬を求めての旅を無事終了した。上形部で佐藤寛氏所有甲子号の外,第3北海,第2昭和の3頭を選定,期待していた真庭では豊梅号がただ1頭だけ。苫田は国波,銀?,香月の3頭,計7頭を選抜した。
 さて馬の出品条件は「県内産馬で3才以上6才までに限られ,登録された中間種となっておる」各県の割当は鳥取7,兵庫3,岡山3,広島3,山口4,島根4の計24頭である。
 予選の結果からすると阿哲,真庭の各1頭は代表馬になれると予想し,他のものは育成如何にかけられると思った。
 次いで7月第2次予選を種馬登録検査と同時に行ったが,予選直前阿哲の第3北海は売却されたとの同畜連から通知を受ける。優良候補の1頭が減る。第3次予選の結果は阿哲2,真庭1,苫田2,計5頭となった。
 愈最後決定の県共では,これら候補馬は何れも立派に磨をかけられ,出品された。意外と思った事は期待していた真庭の豊梅号が体高ばかり伸びて体幅がなく規格外となり埒外に落ちる。阿哲の2,苫田の2頭の中から地低な骨量に富み審査標準の趣旨に添ったもの3頭を出品馬と決め,本県の精鋭種馬として晴れの戦線に送り覇を競うことにした。
 胸には必勝を抱きながら二連勝なるか否の絶えぬ不安があった。手ぬかりがないよう石原君が競馬終了と同時に先発し手配をする。
 25日午後新装なった会場に到着してみると,各県の名誉をかけた粒選りの精鋭が前哨戦を開始していた。事務所及び廏舎には各県を表明した旗が秋風にはたはた飜っている。26日は大体審査で,鹿島審査主任,及川審査員の慎重な審査,各県事務委員は審査官の顔の動きのみを注視している。
 強敵は広島,山口,鳥取の3県中でも広島,山口の各代表馬である。審査第3日となる。他の部では比較審査で鎬を削っているのに馬のみは個体審査に移る。1号馬から順次に呼出され,蹄の測定,健康検査,と実に厳密な審査である。岡山代表8号馬が呼び出される。前日とかわって馬に落つきがなく,様子がおかしい。審査が終って廏舎に入れても尚不安の情が止まぬので,直ちに衛生係に連絡疝痛の手当をしてもらう。間もなく喜びの脱糞があり,午後の騎乗検査に出られることになった。
 山陰特有の天候で連日驟雨が続く。騎乗検査は猛烈な雨の中で行われた。騎乗者は全くの濡れ鼠になり,気の毒であった。第4日目に待ちに待った比較審査が開始された。9時序列が発表され,1回2回,3回と審査が進む。8号馬の岡山代表,甲子号は各回ともトップをきった侭である。続くは広島,山口の順。岡山の他の2頭はBクラスを上り下りした。
 夜10時頃か,加本技師から審査成績発表の電話がかかる。お目出度うの声が心よく鼓膜に伝わる。1等1席と3等2点の栄冠を獲得出来た。快なる哉!!終に2連勝なる。
 審査の報告は詳細丁寧に述べられた。要約すると大部分は地低農用型で1m4,5前後,体量470s前後で農業に所要される体型であり,農用馬生産用の要件も備えている。通有の惜しい点は中に相当の重貌を備え,輓用専用型のもの上体の発育に比較して下肢の伴わぬものがあった。下肢の改良を特に専念する必要があり,使役運動の励行又は過肥に陥らしめ,過重とならぬよう工夫することである。
 岡山県は概して地低で骨量に富み,適当な農用馬である。又甲子号については雌馬らしく上体下肢の釣合も可であり,体積があり,肋張り後躯の発育も良好で馬自体が農用馬,蕃殖雌馬として好適のものと思う。ただ体全体今少し余裕を持ちたいことと一層四肢が丈夫でありたいと結ばれている。
 授与式後甲子号の鼻つらで出品者佐藤氏,石井技師と喜びの冷酒で喉を湿したときは,胃袋に浸み渡りホッとした。この栄誉の蔭には地元畜連の指導と出品人の血の出る多年の努力があってこそである。「勝って兜の緒を締めよ」と心に銘記し,今後更に種雄馬の充実を計り,良い種馬の生産に努めなければならない。
 最後に会場の人柱となられた尊い犠牲者の冥福を祈り擱筆する。(花尾技師記)

種緬羊,種山羊,種豚

 中家畜委員会に於て,連合畜産共進会へは本県より緬羊,山羊,豚共各3頭宛出品することになり,候補は一応各6頭宛選抜することに決定し,それぞれ第1次の選抜を行ったが,その後各出品候補に10月に入り腰麻痺,咬傷,分娩直後といったような事故が続出したため,出品決定を目前に控え決定に相当困難を来たしたのでありますが,豚,山羊は一応3頭宛の出品を揃え,緬羊は遂に1頭棄権して2頭出品した。
 10月22日会場に到着し,直ちに出品各県の中家畜を一見しましたが,本県は事故続きのため,俄かに出品を決定した関係もあり,全体が相当見劣りがしました。
 果して25日よりの総体,個体,比較と審査が進行するにつれて,岡山の中家畜は未だ未だ相当遅れているという感を一層痛切に感じました。
 審査の結果は審査報告の通りでありまして,残念乍ら良好とは言えない成績でありました。各個体につきましては,各畜舎の前へ審査の短評を貼り出されたことは,誠に有意義であったと思います。
 今度の岡山の中家畜は誠に不成績であったことは申訳なく,深く責任を感じておる次第であります。
 ついては審査報告にありましたように「共同組織の確立を図り,先進地方より優良な種雄の導入を行い,人工授精の実施により効率的な利用に努める一方,登録事業を強力に推進し,これと併行して飼養管理の改善,育成技術の向上に一段の努力を注ぎ……」とありますことを実行し,捲土重来の意気を以って,次回連合畜産共進会には必ず好成績を得るよう努力したいと思いますので,先輩諸賢の格段の御支援と御協力をお願いします。(小島技師記)

授賞目録(岡山県出品1等賞のみ)

審査番号 種 類 名   号 生年月日 産 地     血  統 出品人住所氏名
26 黒毛和牛 第6清国 23.11.15 阿哲郡野馳村 第六荒神   黒本 383 阿哲郡野馳村
第2きよくに  〃 1885 沖津 連一
49 ながをか三 24.2.28 阿哲郡草間村 吉  花    〃 1024 阿哲郡草間村
みやわき    〃 2171 長岡 龍助
62 第四うえはる 23.9.20 阿哲郡刑部町 大  茶    〃 1045 阿哲郡刑部町
りんどう    〃 329 上田熊三郎
5 ホルスタイン種 ガヴァナー ヘーズル
オクボンフーア
23.12.23 邑久郡牛窓町 第五キング,オーイスメー,ボンフーア 26282 邑久郡大宮村
ケーテイガヴァナーヘールズ,ウード 35355 近藤 明始
8 中半血種 甲子
鹿毛
23.4.8 阿哲郡上刑部村 アングロノルマン 恵哲 阿哲郡上刑部村
中半血種 甲子 佐藤  寛

審査報告

 第15回中国連合畜産共進会の出品家畜の審査につきましては,第1部和種種牛,第2部肉牛,第3部乳用種種牛,第4部種馬,第5部種緬羊,第6部種山羊,第7部種豚の各部門に別って28名の審査員が4日間に亘り出品者諸氏の丹精になる家畜の審査に従事しましたところ本日褒賞授与の式典にその厳正に審査しました結果について報告いたしますから何卒授賞あらんことを申請いたします。

第一部 和種種牛

 和種種牛の出品は黒毛和種79頭,無角和種8頭,計87頭であります。これを出品県別に見ますと岡山,兵庫,島根,広島,山口の各県が夫々13頭,鳥取県が15頭でありまして,今回新加入の京都府の出品は7頭であります。これを種類別,牝牡別に分け,更に黒毛和種については2才と3才とに分けて都合5区とし,各区共,審査員1名と審査補助員1名とが担当して審査に当りました。
 出品の大半を占めている黒毛和種の出品を総覧しますと,前回に比して乳徴と歩様とが格段に向上しているのであります。これは関係各位が昭和22年に改められた黒毛和種審査標準の改正趣旨を体し,この2点のとくに良いものを選択された賜物でありまして,その改良への御努力に対し満腔の敬意を表しますと共に,共進会に於ける審査成績が齎らす効果の大きいことを痛感致しました。又発育が良好で,前回に見られたような小格のものや短胴のものは見受けられず,中躯や資質の優良なるものが揃っていました。しかしその反面に於いて一般に肩,飛節,繋等に難のある点や後躯の形状の不揃な点は前回の共進会に比して殆んど進境を示しておりません。又体躯や一般資質の優良な割に顔貌の品位に乏しいものが相当に見受けられました。次に各区別に概評を試みます。

(一)2才牡牛

 黒毛和種2才牡牛の出品は30点であります。概して発育が良好で均称のよいものが多かったのでありますが,中には顔品の悪いもの,骨緊り不良のもの,飛節や前膝の不良なもの,肩端の突出したもの,胸張りの不足なもの,性質の宜しくないもの等がみられました。
 1等賞1席26号牛は品位に富み,体の緊りと均称も宜しく,乳徴も亦佳良で,今回の全出品牡牛中の最優秀牡牛として推したのであります。本牛は欠点の少ない牛ではありますが,惜しむらくは,その被毛,尾元,肩端等にわずかな不満が感じられます。
 1等賞2席23号牛は体躯及び四肢の緊りが宜しく,均称も良好であり,後躯の優良な牛でありますが,顔品,頸等に難が見受けられます。
 1等賞3席4号牛は発育良好で体積にとみ,中躯の特に優良な牛でありますが骨緊りに遺憾な点があります。
 1等賞4席11号牛は均称概してよく更に骨味と皮膚が良好でありますが,後躯の形状,頸部等に今少し壮相の表現が明瞭でありたいと思います。

(二)3才牡牛

 3才牡牛の出品は僅かに5頭でありましたが,総じて発育よく体積にとみ,飼養管理の状態にも何らの難は見当りませんでした。このうち1等賞1席に擬賞しました31号牛は体の均称宜しく,品位にとみ,また乳徴が良好でありましたが,胸張り,肢蹄,歩様に幾分の難が見られました。
 同じく1等賞の34号牛は発育良好で体積にとみ,実に堂々たる体躯をもち肢蹄の状態よろしく,歩様も亦良好でありましたが,乳徴に大きな難があり,体深に比し体幅に乏しい点や顔品に不満足な点があります。いずれにせよ,この両者は共に美点の多い優良牛でありまして甲乙つけ難いものでしたが,31号牛に比し,難点の程度がいささか軽く,これを1等賞の首席に選んだ次第であります。

(三)2才牝牛

 2才牝牛の出品は,26頭であります。それらは概して体の均称よろしく,また資質と骨緊りとにおいてよく齋一し優良牛が比較的多かったのでありますが発育と栄養状態とにおいて幾分の不揃があったように思いました。なお中には後躯の形状,ことに●の位置のよくないもの,下?部の充実を欠くもの,肩付のやや厚いもの,被毛皮膚の色に遺憾のあるもの,歩様の宜しくないものなどが見受けられました。
 1等賞1席の49号牛は発育均称共によろしく,体積も充分にあり,しかも体よく緊実し,品位もあって実に黒毛和種の理想に近く,試みにこれについて黒毛和種審査標準に照合し採点してみますに82点強になったのでありまして,これは恐らく現在我々が接し得る最高点数の牝牛でありましょう。従ってこれを全出品牝牛中の最優秀牛と致しました。ただ本牛について惜しまれるのは,審査標準中の重要な2項目たる歩様と乳徴とにいささかの難色のあった点であります。
 1等賞2席の43号牛は背線平直で体の均称もよく,発育も充分であり,乳徴もよいのでありますが,被毛,皮膚の色,歩様,体の緊りなどに僅かに遺憾の点があります。
 次に1等賞3席の52号牛は体の均称を得て品位にとみ,実に牝らしい優良牛でありますが,月令に比しやや小型な憾みがあります。

(四)3才牝牛

 3才牝牛の出品は18頭であります。出品がやや不揃いでありまして均称よく体幅に富むものと,被毛と骨味とに優れて体躯の充実を欠くものとがありました。又一般に乳徴は良好でありますが,歩様の宜しくないもの,背線の不良なもの,肩付,後躯に欠点のあるもの等が見受けられました。
 1等賞1席78号牛は体均称を得て体積に富み,殊に中躯が優秀で,乳徴や後躯の状態も佳良でありますが,頭や頸に今少しの優美さが望みたく,被毛と骨緊りにも僅かながら不満があります。 1等賞2席62号牛は体の均称を得体上線,後躯,骨緊,被毛,皮膚等の優良な牛でありますが,肩,乳徴,肋張り等に惜しい点があります。

(五)無角和種

 無角和種の出品は牡2頭牝6頭であります。本年4月に改正された無角和種審査標準の狙いは肉用能力を重要視し,これに泌乳能力をも強唱したものでありますが,今回の出品牛はその改正の趣旨に添ったものが多く,今後に於ける無角和種の在り方を実物をもって表示しております。而もその出品牛が従来になく非常によく揃っていました。
 1等賞の牡牛80号は発育,肉付,体積,均称,皮膚共に宜しく,堂々たる種牡牛でありますが,背腰がやや弛く,乳徴も今一息という所であります。
 1等賞の牝牛86号牛も均称,体積,背線等に於いて優れており,とくに後躯がよく発達しております。殊にその腿は無角和種として理想的なものと考えられます。しかしその反面乳徴,被毛,気品歩様等にいささかの難があります。
 次に,府県別に出品の総評を試みましょう。

イ.岡山県の出品は見事に整一しており,調教もよろしく,体緊実し品位に富むものが多かったのでありますが,概して肩端と胸張りとに不満があり,とくに牡牛では前膝の寄ったものが目につきました。
ロ.兵庫県の出品は牛の流感の影響もあってか,出品が不齋一であり,且つ今回の成績は良好でありません。名門の但馬の名に於いて,過去の歴史に恥じないよう捲土重来を期待します。
ハ.鳥取県の出品には抜群のものはありませんでしたが,出品の程度が一様に高く体型,資質良好のものが多かったのでありますが股蹄,毛色に不満の存するもの,牝の出品で体積不充分のものが見られました。
ニ.島根県の出品も概してよく揃っており,一様に発育と胴伸びとが良く体上線の良好なものが多かったのでありますが,顔品に乏しいもの,牡で性質の宜しくないもの等が見受られました。
ホ.京都府の出品は今回が初めてでありまして,その成績は必ずしも良好でありませんでしたが,本質的には優良な牛も見受けられますので,その育成技術の研鑽が望ましく,次回に期待する処大であります。
ヘ.広島県は前回に比し格段の良成績であります。その出品は体巾,体深に富み,中躯の良い牛が揃っていましたが,骨緊りと皮膚被毛とに一考を要する点があります。
ト.山口県の出品の内無角和種は優良なものが揃っていましたが,黒毛和種は体型,資質共,今一層の改良を希望します。
 以上出品牛につき和種審査標準に準拠して厳正に審査しました結果1等賞13点,2等賞22点,3等賞35点,4等賞17点を選定擬賞しました。

第二部 肉牛

 肉牛の出品は黒毛和種牝19点,無角和種1点,計20点で,これを府県別にしますと京都府5点,兵庫県3点,岡山県3点,広島県2点,山口県5点,島根県,鳥取県各1点となっております。
 審査は肥育程度,肥育技術等の外,和種種牛改良並に肉質歩留り等の関係上体型,資質を相当重要視致しました。出品家畜を見ますと飼料事情の余り良くない折に,且つ終戦後始めての試みにも拘らず,思ったよりも肥育されたものが多かったことは関係者の熱意の程が伺われて敬服に堪えません。然しながら近時和種種牛の改良が躍進しており,従って素牛も相当のものが選定されておらなければならないのに本出品牛中,素牛として適当であると思われるものが非常に少なかったことは誠に遺憾であります。
 大きさに於いて当を得ないもの,後躯の非常に淋しいもの,或は皮膚,被毛,骨味等に遜色のあるもの等今後充分考慮しなければならない点と思います。
 1,2出品牛の概評を述べて見ますと,
 11号牛は前,中,後躯の釣合が概して良く,脂肪も後躯迄一様に廻り,特に資質は出品牛中1,2を争う優秀なものでありますが,肥育程度に於いてもう一歩という感があります。
 13号牛は肥育技術に於いて,又体の伸びのあることに於いて優っておりますが,資質特に被毛が若干劣っており,皮下脂肪が軟かい感が致します。
 20号牛は無角和種でありますが,その体型的な肉牛タイプであり,殊に腿部の肉付には一驚した次第でありますが,資質に於いて尚一段の改良を望みます。
 これを府県別に見ますと,京都府の出品牛は質的に大体良好でありますが,一部大型に過ぎるものがあり,兵庫県のものは資質に於いて優れておりますけれど前勝ちのものが多く,●幅,坐骨幅の狭いものや体重が140貫に達しない小型のものがあった様であります。
 岡山県,鳥取県の牛は肥育が足らず,又素牛の選定に当を得ないものがあり,山口県,広島県のものは肥育技術に於いて優れておりますが,素牛の選定に尚一段の考慮を払って頂きたいと思います。
 今後国民の食生活が向上されるにつれ,益々肥育事業が必要となって来るものと思いますが,少なくとも最上の肉を生産しようとするならば体型,資質共に優秀な素牛を選定されることが経済的にも得策であると思います。
 審査結果,1等賞3点,2等賞5点,3等賞6点,4等賞6点を擬賞致しました。

第三部 乳用種種牛

 乳用種牛の出陣は岡山県3頭,兵庫県4頭,鳥取県3頭,島根県2頭,京都府3頭,広島県3頭,山口県4頭,計22頭のホルスタイン種牝牛のみでありまして,内未経産,経産は各々同数の11頭ずつであります。
 審査は日本ホルスタイン登録協会の審査標準によりましたが,体高140p,体重670sの標準に就いては中国地方の農業経営規模等の環境的影響を考慮して,体高136p以上であれば,これに就ては考えないことに致しました。
 先ず審査の一般的概要を申述べます。前回の連合共進会に比較して体型,資質が一段と向上していると同時に,品位,乳徴等も数頭ではありましたが,優秀なものが認められました。これら品位,資質,乳徴は優良種牛としての好ましい遺伝因子を表示する一つの現われであります。更に今回の出陣で特筆すべきことは兵庫県及び鳥取県の一部に系統牛的考え方を以って牛を出陣されていることであります。其の牛の優劣は別として外貌,体積等が比較的齋一されたものを拝見し得たことに対しましては敬意を表するものでありまして,今後の種畜共進会の一方向を示すものと言えましょう。
 又全出陣牛が,自県産のもののみであることも中国地方の酪農進展の程が覗かれて慶賀に耐えません。然しながら其の7割近いものは体積に乏しく,資質,乳徴,品位等の諸点では全国有数酪農地帯のものに比較して尚相当の距離あるものと認めます。従って今後優良遺伝因子を持つ種牡牛の選択が必要でありまして,この為には種牡牛の子孫検定法の実施と人工授精の普及が第一と考えます。
 次に上位擬賞の各個体について審査の概要を申上げます。
 1等賞1席に選びました14号牛(広島県)は均称宜しく,背線強直,資質も優良で乳用牝牛の特質を良く表現し,一般的にホルスタイン種の特質を示しています。然し体積稍不足の感あり,即ち体高138pで,其の体長率113.8,胸囲率136.9,胸深率50.3を示し,稍深みの不足を感じさせます。又顔の品位も優美とは言えません。最も不満足の処は乳房,乳頭,乳静脈の発達が妊娠期の進んだものとしては不充分であることであります。
 同2席に選びました5号牛(岡山県)は体型整い,背線強直,品位もあり,資質が良好であります。体が緊実し,乳用牛の特質も良く表現されています。然し体積稍不充分で,角型によって顔の品位も稍悪くしているし,乳頭も細過るようであります。最も不満足な点は年令に応じての発育が不良なことで,体高127p,体長率114.6,胸囲率144.9,胸深率50.4であります。
 同3席に選びました22号牛(広島県)は均称,体積,資質が良好な力強い牛であります。特に肋腹が豊裕で乳房,乳静脈等が良く発達しています。然し稍小格過ぎる牛で,44ヶ月令の体高133.8pでありますが,其の体長率119.9,胸囲率146.2,胸深率53.4と言う実力のある牛であります。又背が少し弱く感じられますと同時に乳頭も稍不均一であります。
 2等賞1席に選びました23号牛(岡山県)は均称,資質共に良好で,品位もあり,乳用牛の特質が良く表現されています。然しこの牛も小格に過ぎ,45ヶ月令で体高131.8pであります。然し其の体長率121.8,胸囲率143.0,胸深率53.9でありまして,比較的体積があります。又欲を言いますと乳静脈は今少し太く,長いことが希望されます。
 同2席に選びました21号牛(山口県)は雄大で体積あり,資質も良好であります。即ち体高139.4p,体長率122.1,胸囲率140.6,胸深率53.1を示しています。然し体高に比し十字部高が約2p低いために前勝の牛となっています。この牛は歩行させると体型は稍崩れます。又泌乳器の発達が充分でなく,体格に伴っていない感じがします。
 同3席に選ばれました6号牛(兵庫県)は体に深みあり,背線は強直で体積に豊み,力強い牛であります。即ち体高131.6p,体長率110.9,胸囲率141.3,胸深率52.8であります。この牛は下?部の充実を欠き,乳房の質型,附着及び資質,活気等にも不満足の処があります。
 同4席に選びました12号牛(岡山県)は品位,乳房,乳脈等が良く,背線も又真直ぐであります。然し体の深みが充分でなく,体積に乏しく,体が稍繊細であります。又下顎の発達も充分でなく要するに今少し力強さが望まれる牛であります。体高は135.6pでホルスタイン種の中型標準を示していますが,体長率119.3,胸囲率134.4,胸深率49.3でこの数字が体積の乏しいことを示しています。
 同5席に選びました4号牛(兵庫県)は均称のとれた力のある牛でありますが余り優秀な点又欠点の少ない所謂,中庸の牛であります。体高は128.4pで体長率118.0,胸囲率142.5,胸深率51.0で先ず健実な牛と言えましょう。
 同6席に選びました13号牛(鳥取県)は胴伸び良く,均称のとれた資質も良い牛でありますが,乳房の型,特に前乳房,乳頭の発育が不良であります。又頭部が重い感じがする反面,腹部の豊裕さが不足しています。背線も弱い感じがいたします。体高は134.4pで,体長率は122.8を示していますが,胸囲率は132.4を示しているに過ません。然し胸深率は51.7を示しています。このことは肋張りの不足を示すものと言えましょう。
 以上のように各々出陣牛の体型,資質を厳密に比較検討し,且つ血統と能力も参考として,綜合的に勘案して,1等賞3点,2等賞6点,3等賞10点,4等賞3点,計22点を選定擬賞致しました。

第四部 種馬

 種馬の出品は総数22頭でありまして,全部牝馬で出品各県の生産に係るもので,その県別は岡山県3頭,兵庫県2頭,鳥取県7頭,島根県3頭,広島県3頭,山口県4頭であります。又これを年令別にしますと,3才13頭,4才4頭,5才2頭,6才3頭となり,種類別ではアングロノルマン系種1頭,他は中半血種に属します。
 審査に当りましては中国地方の自然的社会的と農業経営とによく適合した馬を考えられている中国農用種馬登録審査標準に依りましたが,特に体型資質や飼養管理などの外見的の要件と共に内部的な内臓器管の活力も充分に察知することに努めました。
 一般的には健康であること,性質の温順であり,飼料の利用性も充分高く,飼養管理の簡易なことと,肢蹄の堅牢であることは馬として必須の条件でありますが,繁殖用牝馬として特に好適な条件は牝としての性相を備えていて体躯が寛裕であり,腹囲に余裕があり,後躯の発育の良いことが望ましいことであります。なお農作業に従事するためには地低く力のあることを要し,上体の発育がよく,下肢の余り長くないもので相当の体重を有するものでなくてはなりません。しかも調教の順応性を有し,のみ込みが早くよく覚えることと,作業にあたって悍の好いこと,すなわち作業意思のあることが必要であります。
 出陣馬の大部分は中国山脈寄りの地方又は淡路島で農業経営に用いられており農用馬の生産を兼ねるものであることを考えに充分入れなくてはなりません。
 以上の諸点から出陣馬を通覧いたしますと,大部分のものは地低く農用型のものであり,体高は凡そ1m45前後であり,体重約470s前後であります。概して当該地方の農業に所要される体型であり,農用馬生産用の要件も備えております。又健康であり,性質も温良で,種畜として血統も明確であります。体形も適度の体幅を有し,肋張りよく,寛裕で特に後躯の発育もよろしく,栄養の保持も充分であり,馬体の管理手入れもよく行届き,特に護蹄によく意が注がれています。
 次に通有の惜しいところを申し述べますと,出品中に相当の重貌を備え,輓用専用型に近い体形を有しておるものを2,3見受けますが,これは中国地方の農用馬としては余り好ましいものではないと思われます。次に上体の発育は申分なくて下肢がそれに伴わず,適当でないものが多数見られます。すなわち過長,過細のもの,あるいは故障があり,飛節,球節などに腫脹を発症しているものがあります。
 体躯の寛裕と後躯の良い発育は益々助長しなければなりませんが,下肢の改良を特に専念する必要があります。四肢の丈夫な種馬を選ぶことも必要ですが,使役運動を励行し腱の発達を促すことに心掛け,又過肥に陥らしめて過重とならないように飼養工夫をなし,あるいは削蹄装鉄を適切に行うことを望みます。
 以上の色々な条件を考え合せて見ますと,
 審査番号第8号は体全体を見ますと,体の線が柔かで如何にも牝馬らしい相貌をしています。健康もよく,少し肥り過ぎの嫌もありますが,栄養も良好であり性質も温順であります。前躯後躯の釣合もよろしく,又上体と下肢との釣合も先ず可であります。体積があり,体巾も充分で胸深く,特に肋張りがよろしく,又後躯の発育が良好で牝馬として誠に結構であります。関節もしっかりして大きく骨組も丈夫であります。しかし今少し欲しい点は体全体に余裕をもう少し持ちたいことであり,一層四肢が丈夫でありたいところであります。この馬自体が農用馬として,又蕃殖馬として好適のものと思われますので1等賞1席とします。
 次に審査番号第5号は体高が141pで少し小さいですが,将来3p位の増加はあると思います。全体的に見て未だ子供子供しています。多少晩生のものの様です。しかし牝馬らしい外貌も見えて来ています。健康で温順であります。体に余裕があり,肋張りもよろしいので将来性はあるものと思われます。ただもう少し肘離れが欲しいと思います。これを1等2席とします。
 次に審査番号第9号は出品中最も牝馬らしい美しい馬であります。この体曲線は出陣中第一であります。健康で栄養もよく,肉付が適度であります。体に余裕もあり,胸深く肋張りもよく,特に後躯の発育は満点であります。上体は申し分ありませんが,下肢が上体に釣合わないのが甚だ遺憾であります。肢細く,特に腱(ウラスジ)の発育が足りません。なおこの馬は多少過敏であります。馬の悍性は是非必要ですが,特定の人でなければ扱われないようではいけません。今少し上位に置きたいものでしたが,甚だ遺憾であります。これを1等賞3席とします。
 次に各県別に概評をいたしますと,
 岡山県の出品は概して地低く骨量に富み適当な農用種馬であります。
 広島県の出品は概して小柄でありますが資質の向上を要し,種馬の選択と育成に意を注ぐことを望みます。
 山口県の出品は概して大格であり肢長であります。又資質に相当の差があります。特に育成に充分注意を望みます。
 兵庫県の出品は従来供用の基礎牝馬の血液の関係もあり稍敏感で体幅が狭い憾みがあります。農用馬造成には根本的に改良方策を考える要があると思います。
 鳥取県の出品は大体大格であり,骨太いものを多く見受けます。資質も大体揃っております。一般にその向上を望みます。
 島根県の出品は小格で丈夫なものが多く,特に蹄が堅牢であります。発育が晩生の感があります。飼養の適切を望みます。
 これを要するに,我国の大部分の馬は農業経営上速力のある役畜としてこれを活用すべきであります。当然種馬も農作業に従事させるべきでありますが。地方地方の農業形態によって要求される馬の体形や能力も多少相違が考えられます。今後の農用馬は割合に低尺で力あり,健康,温順で使い易く,飼い易いものでなければなりません。この点今一度再検討してこのような馬を造ることを心掛けたいと思います。
 本日の審査の成績に鑑み現在の成果に甘んずることなく,採長補短,益々良き馬の飼育と生育に尽力あらんことを切望いたします。
 審査の結果,1等賞3点,2等賞5点,3等賞9点,4等賞5点を選抜擬賞いたしました。

第五部 種緬羊

 種緬羊の出品は全部日本コリデール種でありまして,牡4頭,牝20頭,合計24頭であります。
 その内訳は岡山県2頭,兵庫県3頭,鳥取5頭,島根県3頭,京都府4頭,広島県4頭,山口県3頭であります。
 今回の審査は日本緬羊登録協会の日本コリデール種緬羊登録審査標準に準拠して実施したのでありますが,その結果について概評を試みますと,共進会参加区域は我が国に於ける緬羊新与地帯として最近頓に注目を浴びて来ているところだけに関係者各位の熱意の程が窺われ,今更ながら敬意を表するものであります。
 出品緬羊について申述べますと,その共通の美点を挙げることは可成り困難でありますが,強いてこれを求めるならば各府県共に飼養管理は概ね良好である様に窺われ,又羊毛の繊度に於て各個体は何れも日本コリデール種緬羊審査標準に示す範囲外のものがなかったことであります。資質の点については特に広島,鳥取,島根の3県が牝に於て,一部のものを除いて優れ,これらは先進地方のものに比べて見ましても大きな遜色が見受けられないのであります。尚牡は広島県のものに稍優れたものがありました。
 一方惜しい点について申上げますと,出品緬羊全般から窺われることは各個体の優劣の差が可成り甚しい点でありまして,このことは,中国諸府県の緬羊界の現況を端的に物語るものと思われます。
 これを少しく具体的に申述べますと,例えば牝の体重に於て最高90s,最小46s,又体長に於て最長79.0p,最短62pとなって居り非常に広い範囲に亘り,羊毛についても毛長,密度,均一度,及びその状態が極めて多様で,既に短評で示した通りでありますが,尚これに付け加えますと,頸の附着の悪いこと,凹背であること,後躯の発育の不充分なこと,肢勢の悪いこと,繋の弱いこと,羊毛にヘヤリー,ウールの多いことなどが一部を除いて多く見受けられました。
 今上位のもの3頭について短評を試みますと,審査番号13号は,広島県出品の明2歳の牝で体長78p,体重70.5sの緬羊でありまして,後躯が稍体過ぎること,尻の傾斜が稍強いことなどに不満はありますが,体の深さ,巾,長さ共に良く,且体積に富み,羊毛は繊度,毛長,均一度,及状態なども良好でありまして,以上の諸点を総合して,今回出品緬羊中で最上位にあるものと認めました。
 次に審査番号9号は鳥取県出品の明2歳の牝で,体長75p,体重72.75sある緬羊で,各部位の各部の発育がよく,又羊毛もよく品位ある緬羊でありますが,しかし,頸の附着が悪いこと,腿が淋しいことなどが,惜しい点であります。
 次に審査番号25号は広島県出品明3歳の牝で体長74.5p,体重70.1sの緬羊でありまして,比較的均称がとれ又特に後躯が充実していると美点を認めますが,マツ毛に僅かながら褐色の異毛のあること,後躯が稍高過ぎること,後股が幾分外向股勢であることなどが惜しい点であります。
 要するに今回の出品緬羊から察しますに,中国地方の緬羊は2−3の県を除いては先進地方に比べ一般に未だ相当遅れていると言えると思いますが,今後この地方の緬羊の改良を進めるためには,先ず共同組織の確立を図って先進地方より優良種緬羊,特に種牡緬羊の導入を行い人工授精の実施により効率的な利用に努める一方,緬羊の登録事業を強力に推進することがこの際最も緊要なことであると考えられますし,これと併行して飼養管理の改善,育成,技術の向上に一段の努力が望ましいと思われます。
 審査の結果,1等賞3点,2等賞5点,3等賞9点,4等賞7点を選出擬賞いたしました。

第六部 種山羊

 種山羊の出品は全部日本ザーネン種でありまして,牡3頭,牝19頭,総数22頭であります。出品の府県別内訳は京都府よりは出品がなく,広島県より7頭の出品がありました外は各県共3頭宛の出品であります。
 審査は日本山羊登録協会日本ザーネン種体格審査標準に準拠して行いました。今出品山羊を概観致しますと,今回の出品山羊が各県から選抜されて来たものであるだけに各個体とも夫々見所はありますが,と言って全体として著しく傑出したものもありません。広島県の出品が割合に粒が揃って居ますが,これとても先進地方のものに較べますと矢張り或る程度の見劣りがするのであります。
 この各個体が夫々どこか見所があり乍ら,全体として著しく傑出したものがないということは,取りも直さず中国諸県に於ける乳用山羊の現状を物語っているものと申せましょう。
 従って出品山羊に共通の美点を挙げることには一寸困難を感ずるのでありますが,強いて之を求めるならば,当歳種付を行ってる割合には体各部の発育のよいこと,乳房の大きさの点は別として,乳房の体への附着が概してよいこと,乳頭が割によいこと等を挙げることが出来ましょう。又出品山羊に共通の欠点としましては,肢蹄の悪いこと,殊に繋の弱いことは少数の例外を除けば全体に共通であり,又年令の進んだものに於ては,背のたるんだもの等体型の崩れかかったものが見受けられること,及び概して乳用山羊の品位に乏しいことも見逃すことは出来ません。
 今上位に選抜しました山羊2頭につき短評を試みますと,審査番号18号の山羊「はまたにつる2」号は広島県出品の明3歳の牝で体高78.2p(約2尺6寸)体重71.1s(約18貫900匁)ある山羊でありまして,もう少し品位の欲しいこと,肩の附着が緩いこと,尻の傾斜がやや強く,繋の弱い等の点に不満はありますものの,体の深さ,巾,長さ共にあって体積に富み,乳房は形も大きく,体への附着も宜しく,乳頭もよく,更に乳脈よく発達し,今回出品の山羊中では,最上位にあるものと認めました。
 次に審査番号14号の山羊「かわうちのぞみ」号は広島県出品の明2才の牝で体高75.1p(約2尺5寸)体重61s(約16貫200匁)ある山羊でありまして,体各部の発育がよく,乳房の形と体への附着もよい,品位ある山羊であります。しかし乳房の発達が十分でなく顔が細く,首に淡褐色の異毛があることは惜しい点であります。
 今回出品の山羊から察しまするに,中国地方の山羊は一部のものについて改良が進みつつあるのを除いて,一般にまだ相当遅れていると言えると思います。今後此の地方の山羊の改良を進める為には先進地方より優良種山羊の導入確保を図ることと,登録並に人工授精の実施等によって優良基礎山羊の効率的利用に努めると共に,山羊の管理法及び育成法の改善,特に運動の励行の要あるを認めるものでありまして,これ等につきましては府県及び団体等指導当局並当業者各位の格段の努力と協力を切望するものであります。
 開会以来審査員2名をもって慎重に審査の結果,1等賞2点,2等賞4点,3等賞8点,4等賞8点を選出擬賞致しました。

第七部 種豚

 種豚の出品はヨークシャー種牡2点,牝23点,計25点でありまして,これを府県別に致しますと岡山3点,兵庫4点,鳥取7点,島根4点,山口3点で,京都府からの出品はありませんでした。
 審査は日本種豚登録協会ヨークシャー種豚審査標準に準拠し,審査員2名を以て実施しました。
 今回の出品を通覧致しまするに,体型整い,資質が向上し,従前に比べて一段の進歩を認めましたのは中国地方の養豚に対する認識と技術の向上を物語る証左として誠に御同慶に堪えない次第であります。然し乍ら仔細にこれを観察致しますと,一般に種豚としてはやや肥満に過ぎ,胴伸びが不充分で体がゆるく,又運動不足で肢体が弱いという憾みがあります。
 県別の出品について概評を試みますと島根県の出品は体の幅及び深さ共に良好で,品位に富み,体型概ね良好でありますが,肥満に過ぎるもの,胴伸びのやや足りないもの,体のゆるいもの,肢の弱いもの等が見受けられます。鳥取県の出品は体の幅があってしかも緊りがあり,品位宜しく,肢も一般に丈夫でありますが,顔が尖っているもの,尻が傾斜しているもの,或は乳頭の不良なもの等があります。兵庫県の出品は概して胴伸びがよく,乳頭の発育も良好でありますが,体の巾,深さに乏しく,腿の発育不充分で,体がゆるく,顔の形の宜しくないものが見られます。広島県の出品は体の巾と深さはありますが,胴伸びが不充分で体がゆるく,尻がやや傾斜し,顎と頸が重く,品位に乏しい憾みがあります。岡山県の出品は牡は体の伸びがよく,牝は体の巾と深みがありますが,何れも品位に乏しく,顔面に黒点のあるもの,及び皮膚のよくないもの等があります。山口県の出品は体の巾と深さはありますが,胴伸びが悪く,顔が尖り,やや肥満に過ぎた嫌があります。
 次に出品中,優等なものにつき概評を試みますと次の通りであります。
 1等1席に擬しました16号の牝豚は体の伸び,巾,深さがあり,顔の形もよく,品位もあって,優秀な豚でありますが,頸と肩がやや重く,後肢が弱いのは惜しむべき点であります。
 1等2席に擬しました3号の牡豚は体が緊り,各部の均称も概ね良好でありますが,顔がやや狭く,頸から肩への移行が滑らかでなく,後躯がやや短い傾があります。
 1等3席に擬しました11号の牝豚は体の伸び,巾及び深さがあり全体として概ね良好でありますが,顔がやや尖り,尻が傾斜しているのは欠点というべきでありましょう。
 以上の諸欠点の是正のためには,今後優良種牡豚の導入,人工授精法の活用,登録事業の普及及び飼養管理法の改善等に留意すると共に,優良な種豚は長く繁殖に供用し,以て形質の改良に一段の努力を致されんことを切望する次第であります。
 審査の結果,1等賞3点,2等賞8点,3等賞9点,4等賞5点を選抜擬賞致しました。