牛の流行性感冒により一時開催を危ぶまれていた第６回県共は，去る10月３日から４日間真庭郡久世町家畜市場に於いて盛大に挙行された。

出品家畜頭数

和牛雄の部　　　27頭
〃　雌３才の部　　　36頭
〃　〃２才の部　　　26頭
種馬の部　　　　７頭
緬羊の部　　　　６頭
山羊の部　　　　４頭

審査員

　審査長　畜産課長　惣津律士

和牛雄の部

　岡山種畜場長　　　　　藤井英一郎
　畜産課技師　　　　　　加本　一久
　〃　　　　　　　　　　宇野　　仁
　千屋種畜場技師　　　　渡辺　明喜
　和牛登録協会技師　　　佐野　正民

和牛雌の部

　千屋種畜場長　　　　　梶並　久雄
　農業改良課技師　　　　佐々木　寿
　津山畜産農場技師　　　中島　大二
　畜産課技師　　　　　　渡辺　滋樹
　和牛登録協会嘱託技師　白神　　寛
　川上郡富家村　　　　　杉井　多賀

種馬の部

　畜産課技師　　　　　　花尾　省二
　〃　　　　　　　　　　石井　敏雄

緬山羊の部

　津山畜産農場長　　　　馬渡　武彦
　畜産課技師　　　　　　小島　勝之
　津山畜産農場技師　　　小坂　静夫

　以上の各審査員により和牛，種馬は久世町小学校緬山羊は家畜市場内の各審査場に於て開会式に引続き夫々３日間慎重に審査が行われたが，その審査の概要は下記の通りである。

△和牛の部

郡別出品頭数
郡別　　　雄　　雌　　計
阿哲　　　10　　５　　15
真庭　　　５　　10　　15
吉備　　　１　　10　　11
小田　　　２　　５　　７
上房　　　１　　５　　６
久米　　　１　　５　　６
苫田　　　２　　３　　５
勝田　　　１　　４　　５
倉敷　　　１　　３　　４
御津　　　―　　５　　５
都窪　　　―　　４　　４
川上　　　２　　―　　２
児島　　　１　　１　　２
浅口　　　―　　１　　１
後月　　　―　　１　　１
計　　　　27　　62　　89

　審査の成績は別掲の審査報告の通りであるが，本年は雌雄共に優秀なものが多数出品され，３日目の比較審査当日は時雨まぐれの天候ではあったが，県下の優秀牛を一望のもとにおさめえた事は誠に偉観とも言うべきで，これを見んものとおしかけた観覧者の群は審査場の周囲に黒山をなし，遂には審査場内に入り込み審査の邪魔になる程の熱心さであった。
　審査は優秀牛多数の為，等級の決定が相当な困難を思わせたが，結局雄に於ては体型，資質優秀，如何にも雄らしい堂々たる体躯を備えた第６清国号が首位に推され，雌に於て２才の部では，ながおか３号，３才の部では第４うえはる号が夫々首位に推された。
　一般に雌雄とも発育良好，体躯充実し体積豊かで品位に富むもの多く，皮肢，被毛及び中躯は優秀で，飼養管理も良好であったが，調教の点に於て今一歩研究を要する様であった。又肩，乳器，肢蹄歩様については特に優れたものが見当らず，この点は岡山県産牛の通弊で，特に力を入れて改良をはかるべき点である。

△種馬の部

郡別出品頭数
苫田郡　３頭
真庭郡　２頭
阿哲郡　２頭

　何れも飼養管理は良好であったが，特別に優秀なものはなかった。馬格は良いが農用役種の体型を備えていないもの，骨量には富むが胸狭く肋張りの不足のものが見受けられた。又肢が悪く飛節球節等の不良のもの，蹄質悪く変形のもの，蹄叉の不良のものも認められた。
　役畜として現在とかく牛に押され気味であるが，馬なくしては経営の成り立たない地方もあり，農耕馬用として改良増殖をはかると共に，育成技術を一層研究する必要がある。

△緬羊の部

種類　コリデール種
郡別出品頭数
真庭郡，苫田郡　各２頭
都窪郡，小田郡　各１頭
　昨年に比し体積に富み毛質も稍向上しているが，肢蹄の手入不充分のもの，運動不足のもの，飼養管理の不良のものが認められた。全般的に今後一段の改良を要するが，特に体積を一層富ませる事，良質の草を多量与え運動を十分行い，肢蹄を丈夫にすること。又飼養管理にも十分の注意を払われることが望まれる。

△山羊の部

種類　ザーネン種
郡別出品頭数
真庭郡　３頭
久米郡　１頭

　出品頭数わずか４頭で，誠に淋しかった。出品された山羊についての審査成績は改良の度低く，体型も不良のものが多かった。将来は優秀種雄により改良をはかると共に，共進会等には進んで出品しその実績を検討する機会を得る様に心掛ける必要があると思う。

△団体成績

　従来の例では大体開催地の優勝に終っていたが，本年は和牛の各部，及び種馬の部に於て何れも１等１席を獲取し，上位に多数の入賞家畜を送った阿哲郡が優勝旗を獲得した。
　これを反面から見ると，和牛に於て阿哲郡と比肩すべき他の２，３の郡の成績が極めて不振であった事を示すもので，これを機会として従来の改良方針に一大反省を加える必要があるのではないだろうか。
　かくて３日間の審査を無事終了し，６日午前９時半より知事代理本城経済部長大河開催委員長，惣津審査長等の臨席のもとに生末県会議長，その他多数の来賓を得て，はえある授与式が挙行された。
　惣津審査長の審査報告があった後，和牛雄の部１等１席第６清国号（飼育者阿哲郡野馳村沖津嘉明）に農林大臣賞状，岡山県賞状金牌，全国畜産農協連賞状，日本畜産協会賞状，全国和牛登録協会賞状賞杯，中国和牛協会賞盃の授与を始めとして各入賞家畜に夫々賞状賞牌褒状の授与があり，団体優勝旗は宮崎阿哲郡畜連会長授与され目出度く式を閉じた。
　次に審査報告，授賞目録の一部，団体成績を掲げる。

審査報告

　今回の出品は和牛雄が27頭，雌が62頭，馬が７頭，緬羊が８頭，山羊が４頭でありまして，各部に分れ審査員一同慎重に審査を行い，茲に無事審査を終了致しましたのでその結果につきまして概要を御報告申上げます。
　先ず和牛に於きましては，前回に比し優秀なものが多数出品されましたことは洵に御同慶に堪えません。
　今回の出品は一般に発育よろしく，体躯充実し，体積豊かでありまして，品位に富むもの多く，総じて被毛，皮膚及び中躯は優秀であります。飼養管理につきましては，出品者各位の努力の跡が見受けられますが，尚若干の調教の点で御研究を願う余地があるものがありました。
　又肩，乳器，肢蹄，歩様につきましては，特に優良なものがなく，此の点岡山県産牛の通弊として将来改良の重点とも考えられる次第であります。
　次に馬に於きましては何れも熱心に飼養されてはおりますが，特別に秀でたものが見当らなかったことは残念に思います。即ち，馬格は良いけれども農用役種の体型も備えていないもの，骨量は富むが胸狭く，特に肋張りの不足のもの等が見受けられました。
又肢が悪く，飛節，球節等の不良のもの，蹄質が悪く変形のもの，蹄叉の不良のものも認められました。将来育成技術を一層研究練磨され，又護蹄に一段の注意を払われ立派な産馬をつくられるようお願い致します。
　次に緬羊に於きましては昨年に比較して体積に富み，毛質も稍々向上している点は進歩と言うことが出来ますが，尚運動不足のものが多く，肢蹄の手入れ，特に削蹄が不充分のものがありましたが今後一層の御注意を願いたいと思います。将来はもっと体積の豊かなものを選び，育成に注意し，良質の粗飼料を豊富に与えて運動をよくし，肢蹄の丈夫なものを作って頂きたいと思います。
　次に山羊におきましては山羊の飼育地帯であり乍ら出品の少なかったことは残念に思います。一般的に乳量に捉われすぎて体型を軽んじている傾向があり，又飼養管理が不充分であった点は遺憾に思います。将来体型及び資質の向上を図ることに一層の努力を払い，種山羊として県外に移出できるようにして頂きたいと思います。
　以上各家畜につきまして主な点を簡単に申上げましたが，共進会の回を重ねる毎に改良進歩の跡がはっきりと見えて来ますことは洵に慶ばしいことと存ずるのであります。
　最後に農業経営組織におきまして畜産の持つ重要性を再認識されまして，今後益々畜産の発展に一般の御協力を頂きますようお願い致す次第であります。

授賞目録

郡別成績表