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遂に公布された!!牛乳,乳製品の新規格

 さきに食品衛生法が改正され,同法に規定する乳,乳製品及び類似乳製品の成分規格の一部が発表されて乳業界の注目を引き,その規格の余りに厳重なのに驚くと共に,日本の現状に則さない為め,そのなりゆきを注目されていたが遂に乳業界の要望も殆んど取り入れられないで去る10月16日の省令で決定された。
 其の規格は現在のものより,はるかに細かく,きびしく規定され,更に新に保存基準迄示されており,牛乳のみならず山羊乳迄もこの規格が適用されることとなった。
 今後は食品衛生法により食品衛生監視員が集乳,処理,販売業者の監視,指導を行わせる場合,その取り扱う乳の細菌数及び温度の検査を併せて行うのであるが,もしこの検査の結果引続き2回この規格に適合しないときは,次の検査に合格する迄その乳及び乳製品の販売を禁止されるのである。
 今回の規格を適用されると,一番困るのは農村の専業者と酪農家であることは明白なことであり。特に前回の採点制度と相俟って非常な影響を受けるものである。特に保存基準が指示され原料乳でも常時摂氏18度以下の乳温を保たなければならなくなると,井戸水を唯一の冷却源としている農家では夏季には殆んど不可能に近いという声が高く,飲用牛乳等が殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却して,最終需要者に渡す迄この温度で保存するということと,殺菌器に正確な自記温度計をつけなければならないことは一般中小業者,特に農村の専業者には相当きびしい規定であるので,はたして彼等がよく実行し得るか否かが疑問視されるのである。
 一方消費者側でも,このような厳重な規格によって衛生的監視をして貰うことは有難いことではあるが,反面業者が設備費を要し,厳重な取締りの結果牛乳又は乳製品の生産数量が減少して,ひいては小売価格が値上る結果となり消費者も困るような結果を招来することは明らかである。
 終戦以来吾国農業経営の合理化と,生活水準の向上を目指して,畜産に関係を持つ者も持たない者も一様に酪農を口に唱えたのである。水田酪農の新語さえ作られ,酪農こそは救国農業であるとたたえられて来たのである。然るに今回のこの規定が公布され,これを適用された場合,今日の現状で酪農家でこの規格に適合した牛乳を生産出来る者が何人あり,専業者で合格し,10度以下の牛乳を配達出来る者が何人あるか知らん。
 聞くところによると農林省と厚生省との間にも充分な連絡がとれて居らず,厚生省の一方的措置により今回の規則も交付された由である。酪農を奨励する者と,取締りをする者との間に充分な話合いが出来ず一方的取締りを受けるとなると一番迷惑するのは生産者と消費者である,法の運用にも手心は出来るとしてもそれはあく迄手心であって正規の運用をされた場合生産者は一言の文句も言えないことになるのである。酪農を奨励して来た者の立場にもなって貰いたいものである。
 今回改正された牛乳,乳製品規格のうち主として農家或は農協に関係あるものをあげてみれば次の通りである。

◇乳の搾取基準

 下記の各号の1に該当する牛又は山羊から乳を搾取してはならない
 イ.不健康な牛又は山羊
 ロ.分べん予定日前30日以内及び分べん後5日以内の牛又は山羊
 ハ.乳に影響ある薬品を服用させ,又は注射した後3日以内の牛又は山羊
 ニ.生物学製剤を注射し,いちじるしく反応を呈している牛又は山羊
 ホ.結核(毎年獣医師たる家畜防疫委員が家畜伝染病予防法によって行うもの)を受けた結果陽性反応を呈している牛

◇乳・乳製品の成分規格並に製造処理又は保存の基準

原料牛乳(市乳原料牛乳も含む)

 無脂乳固形分   8.0%以上
 乳脂肪分     3.0%以上
 比重(摂氏15度において)  1.028−1.034
 酸度(乳酸として) 0.17%以下
 細菌数(直接体鏡検法で1t当り)  400万以下
 搾乳1時間後から乳処理業者乳製品製造業者及び類似乳製品製造業者に渡すまで常に摂氏18度以下であること

原料山羊乳

 無脂乳固形分   8.0%以上
 乳脂肪分     3.6%以上
 比重(摂氏15度)  1.030−1.034
 酸度(乳酸) 0.17%以下
 細菌数(直接個体鏡検法で1t当り)  400万以下
 搾乳1時間後から乳処理業者乳製品製造業者及び類似乳製品製造業者に渡すまで常に摂氏18度以下であること

市乳

 無脂乳固形分   8.0%以上
 乳脂肪分     3.0%以上
 比重(摂氏15度)  1.028−1.034
 酸度(乳酸) 0.17%以下
 細菌数(標準平板培養法で1t当り)  5万以下
 フォスファターゼ  陰性
 摂氏62度から65度の間で30分間加熱するか,又は摂氏75度以上で15分間加熱殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却して保存

殺菌山羊乳

 無脂乳固形分   8.0%以上
 乳脂肪分     3.6%以上
 比重(摂氏15度)  1.030−1.034
 酸度(乳酸) 0.17%以下
 細菌数(標準平板培養法1t当り)  5万以下
 摂氏75度以上で15分間加熱
 殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却して保存

クリーム

 乳脂肪分     18.0%以上
 酸度(乳酸)   0.20%以下
 細菌数(標準平板培養法1t当り)  10以下
 クリームとなってから摂氏70度で30分間加熱
 殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却保存

牛乳飲料

 酸度(乳酸)  0.18%以下
 細菌数(標準平板培養法1t当り)  3万以下
 内乳酸菌以外の細菌数1,000以下
 大腸菌(標準平板培養法1t当り)   0
 生乳又は乳製品に混和物を混合した後に摂氏70度以上で30分加熱
 殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却して保存

脂肪乳

 無脂固形分   8.0度以上
 比重(摂氏15度)  1.032−1.035
 酸度(乳酸)  0.18%以下
 細菌数(標準平板培養法で1t当り)  5万以下
 脱脂乳としてから摂氏62度から摂氏65度の間で30分間加熱又は摂氏75度以上で15分間加熱
 殺菌後1時間以内に摂氏10度以下に冷却して保存

バター

 乳脂肪分  80.0%以上
 水分    16.0%以下
 醇母(標準平板培養法で1g当り)  100以下
 かび(〃〃)  100以下

全粉乳

 乳固形分   95.0%以上
 乳脂肪分   25.0%以上
 水分     5.0%以下
 細菌数(標準平板培養法で1g当り)  5万以下

加糖煉乳

 乳固形分   28.0%以上
 乳脂肪分   8.0%以上
 水分     27.0%以下
 糖分(乳糖を含む)  55.0%以下
 しょ糖を加えた後摂氏70度で30分間加熱

◇乳等の製造又は保存に関する他の基準

 イ.処理は処理場で行わねばならない
 ロ.乳には他物を混入してはならない
 ハ.乳製品及び類似乳製品には防腐剤を使用してはならない