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作州においてこれから酪農を志す人々に(二)

津山畜産農場

△前に述べた様に乳牛は乳を沢山出すことが生命であるから,なるべく泌乳能力の良い個体を選ぶべきである。体高,体重,発育等が同じであっても泌乳能力は区々であり,又血統がよくても必ずしも泌乳が多いとは言えない場合がある。個体を観るに当っては先ず乳を出す機関が良く発育していることが大切である。即ち乳徴のよいということである。乳徴とは乳房,乳線,乳窩,乳鏡及び乳頭の総称であって,これが乳牛の生命と申すべきである。先ず乳房は大きくて4つの乳頭はよく配列していなければならない。これが不整列であることはよくないし,又その大さは適度でなければならない。乳房から腹の下を前の方に走っている管を乳線といい,未験産牛ではよく判らないが,験産牛では膨張して外からよく判る。これが長く,そしてなるべく曲りくねっていることが望ましい。曲りくねっておればそれ丈長い訳である。真直なのはよろしくない。この乳線の末端を触って見ると小さな穴があり,これを乳窩といい,なるべく大きなのがよろしい。乳牛の後に廻って見ると真後から内股に掛けて一部毛が逆に生えている処があるがこれを乳鏡といい,これがなるべく広いのがよいとされている。即ち乳の鏡で,この部分を見ればその牛の乳の状態が概ね判定出来るという訳である。

△乳牛は和牛に比べて後躯がよく発育しているものであるから乳牛の体を上から見た時,横から見た時何れも尻の方に拡った楔型をしていることが必要で,長方形に近いものは好ましくないのである。而して,胴の伸び,肋骨の張り,胸の深さが充分でなければならない。か様な牛は体積に富み,内臓諸器官の発育がよく従って飼料の利用性に富み泌乳量も多いのである。これに反して胴がつまって丸い形をしたもの,肋骨の張りが不足で巾のないもの等は感心しない。少し離れて望見した場合,如何にも雄大で均称よろしきものが望ましい。

△次に頭部であるが顔は雌の相を表してやさしくあるべきで,雄に似た様な容相をしていてはいけない。口はなるべく大きく,両側のふくれている様なのがよい。即ちこれは物食いのよいことを表しているのである。角には角輪といって未験産牛にはないが御産をした牛には1回毎に一定の間隔をおいて輪が出来る。この角輪が正しい間隔をおいて出来ているものは毎年出産をしたのであるが,この巾が不規則になっているのは1年出産をしなかったか又は他に事故があったものということになるので注意を要する。皮膚は,柔かくて締りがなければならない。

△乳牛は和牛と異り労役が主目的でないから肢蹄については下程厳重にいう必要はないものの様であるが,乳牛でもやはり肢蹄は丈夫でなければならない。運動させない乳牛には蹄の先が浮き上っているのを時々見受けるが,こうしたものはよろしくなく体全体を崩して仕舞うことになるので,蹄は適当の機に削蹄を行って蹄の前半で体躯を支える様にすべきである。

△その他牛体各部について述べれば長くなるのでここには省略することにするが概ね以上の諸点に留意して見るがよい。初めて乳牛を導入しようとする人は自分一人で選択することは困難であるから,県,畜連又は先輩等に依頼して,資金の枠内で最良のものを入手するが安全である。

五.牛舎はどんなにつくったらよいか

△人間の住む家が採光通風のよろしい処がよいのと同様,牛の居る家もできる丈同様にしてやらねばならない。地方へ行って見ると奥の方で,通風悪く暗くて見るからに陰気な処が少くない。か様な処は不潔になり易く,牛の健康上甚だよろしくない。特に新しく建てる場合は別として,改造等の場合には特にこの点に注意して,衛生的なる様心掛けてやることが牛も乳をよく出して呉れるというものだ。而して広さは2間四方あれば申分ないが1.5間×2間位取れればよい。牛舎の構造は夏向きに作ることが必要だ。炎暑には牛が弱り易いものであるから夏向に作り,冬期には臨時に板を打ち必要によっては空俵等を張って保温すればよいのである。

△床は出来得れば「コンクリート」にして後方に少しく傾斜をつけ,中央から四方に向けて小さな溝をつけその上に木蓋をして尿が舎外に流出する様にする。牛尿は窒素分が非常に多くこれを適度に腐敗させて施用するときは硫安の如き肥効を表すものであるから,舎外に溜を拵えて糞と分離して使うことが大切である。この貴重な尿を敷藁等に浸みこましてしまったり,糞と混同してしまうことは惜しい限りである。床は毎日掃除して舎内の糞及び汚染敷藁等は取除いて新しいのと交換してやる。又天気のよい日にはときどき敷藁全部を舎外に出して乾燥するとよい。飼槽は大,小に失せず適度の大きさのものを用いる。

六.牛の飼い方はどうしたらよいか。

△そもそも牛,馬,緬山羊等草食家畜については草主穀従なることが飼育方法の原則と心得なければならない。でき得る限り草類即ち粗飼料を以って飼育し,その不足を濃厚飼料で補充する。戦前迄の吾国の一般の飼育法はこの反対であって濃厚飼料を主とし,粗飼料はその補充なるが如き感があった。これでは経費も多く要し,又牛個体に事故も発生し易いものである。然し近来粗飼料に対する一般の認識が非常に高まり草生改良,飼料木の植栽等が行われる様になってきたことは牛の飼い方が本筋に戻りつつあることであり経済,能力何れの面から見ても洵に喜ばしいことである。これについては後で述べる。

△牛には概ね朝昼夕の3回定期に飼料を給与し,その他の時期及び夜には投草を給する。春から秋の初めにかけては日中は戸外に出して放牧し,草を充分に食わせるがよい。夏期には朝夕戸外に出し,日中は舎内に入れておく。飼料は濃厚飼料に草類を切込み水(冬期は温湯)をもって練ってやる。練り方は余り水様でなく,又余りぱさぱさしない程度とすることが必要である。

△飼料の給与量は斎藤博士が「畜産の研究」に御掲載になっておるものによるが最も適当と思う。即ち搾乳中のものについては体重の維持は粗飼料で賄い,体重100貫にたいして良質の乾草1日2貫匁を標準とする。次に産乳飼料は如何というに,これは濃厚飼料を以って充て乳1貫匁(2升)にたいし麸で計算して500匁を標準とする。即ち目方で乳の生産量の半量をやることになる。例えばここに体重120貫,牛乳生産年18石のものがあるとすれば,これには1日良質乾草概ね2.5貫,麸1.5貫やればよいことになる。粗飼料,濃厚飼料ともその種類品質は区々であるから,この標準によってそれぞれ加減することが必要である。

△乳牛は多量の乳を分泌するものであるから水を飲む量も多い。水については余り注意しない向が多い様だが,奇麗な水を豊富に飲ましてやることが必要だ。附近に川があれば寒くない時は川入れを行って飲ませるとよい。運動場には必ず水槽を準備しなければならない。食塩は少量ながら必要なもので,これをやらないと種々の障害を起す。食塩は飼料に混じて毎日与え,その量は成牛で1日概ね8匁程度である。石灰,燐酸等の鉱物質も亦牛には必要なものであるが,これは市販の「コロイカル」を毎日少量宛給与すればよい。

七.よい粗飼料はどうして作るか

△前項で乳牛を飼うには粗飼料が重要であることを述べたが,然らばそれはどうしてつくるか。牛を飼っている人は,毎朝日の出前に籠を背負って畦畔堤塘等の草を刈って牛に与える。然し大方これらの草類は古来の自然生の草であって,栄養価の低いものでしかない。折角草を刈って牛を太らせ,又は乳を沢山出させようとするならば,この草をもっと牛の好む,又栄養価のあるものにしたい。即ちこれらの草を「赤クロバー」,「オーチャード」等の牧草と置換えれば年3回は刈り取られ,又大体6年目に植え替ればよいので手数もかからない。この種子は県庁畜産課で斡旋しているので直接申込めばよろしいし,又普及所でも世話している。この草生改良の仕事は個人では仲々容易でないので,近隣の同志共同して行うがよい。

△次に山地帯での飼料対策としては飼料木…くず…トゲナシニセアカシヤ…イタチハギ……等を植栽して利用することが最も望ましい。これについては林業試験場倉田博士,福渡町吉岡氏等の熱心な研究と奨励により急速に普及しつつある。何れも蛋白質を多量に含んだ優良な飼料で,種苗も岡山市に販売せられておるので乳牛飼育者はどしどし先輩の指導を受け飼料木の増殖を図り,以って乳牛飼育をして磐石の基礎においてこそ酪農経営の真の味がわかることになろう。

△以上は永年性の飼料についてであるが1年生の粗飼料は耕地を利用して作ればよい。即ち自己の使用する耕地の一少部分を飼料圃として飼料作物の栽培に充てる。飼料圃をとれば主穀を栽培する耕地が減少して支障を来すことが考えられるが,ここが有畜営農の有難味で飼料圃以外の土地で充分生産を挙げる様にすることが出来ると思う。春夏作としては青刈玉蜀黍,青刈大豆,甘藷,南瓜等乳牛にとってはもってこいの飼料であり,秋冬作には囁ロ,大根,蕪菁,青刈ライ麦,青刈燕麦等がある。前に述べた様に廏肥をうんと利用すれば土地は肥え主穀,飼料其の他何れも豊作疑なしだ。

八.乳牛1頭に「サイロ」1基

△前項でよい粗飼料を沢山作る方法について述べたが,これらの粗飼料は一時に給与することはできないので適当な貯蔵加工の方法を講じて一層効果的に利用することを考えねばならない。この為には是非共「サイロ」を作って「エンシレージ」を製造することが最もよろしい。秋期の頃取入れした青刈類を「サイロ」に詰めることによって乾草よりも一層栄養的にして牛の嗜好に適する飼料を作ることができる。そのままやっては牛が食わないものでも「サイロ」に詰めれば味がついて好む様になる。乳牛を飼う人は搾乳牛1頭にこの「サイロ」1基を準備しておけば冬期飼料に心配はない。「セメント」も自由になったし,同志相寄って共同作業で作ればよい。

△「サイロ」を作るには出来る丈水の出ない処を選ばねばならない。地下5―6尺掘って水の湧く処は避けたがよい。而して出来得ればなるべく畜舎に近い処が作業に便利である。この場所の選定は将来の「サイロ」の利用上大なる関係を持つものであるから,充分留意して決めねばならない。「サイロ」には地上式,地下式,半地下式の3型があるが,農家で作るには半地下式がよい。大きさは余り大きくない方がよく,県の奨励標準型である4尺×7尺位のものが望ましい。これで原料700貫は充分は入る。「サイロ」築造法の詳細は長くなるからここでは省略する。

△「サイロ」に原料を詰めるには原料を刈取って少し乾燥し,水分量が概ね75%程度になった時が最もよろしい。10月の気候ならば大体1日の乾燥で充分である。詰込みには硬いものは短く柔いものは永く切る。そして「サイロ」の中に3−4人は入って入れた原料を充分に踏圧し,空気が流通しない様にすることが大切である。「エンシレージ」は原料を空気が通わない様にして嫌気性細菌の繁殖によって醗酵させるものであるから,空気が入って好気性の細菌が繁殖したのでは腐敗して使うことができない。この踏圧が「エンシレージ」製造の最重要条件であることを忘れないように。「サイロ」を漬込んだが腐って使えなかったという人がよくあるが,これは大部分この踏圧の不足の場合が多い。

△詰めたらその上に重石を置く。これも原料硬軟によって夫々異るが,大体において150貫,−250貫位である。こうして詰めたら50−60日経過すれば出来上る。よく出来たものは飴色で芳香を有する。出来損じたものは色は悪くいやな臭気を発するのですぐ判る。勿論最上部2−3寸は空気が通うので不良となり取除かねばならない。

△「エンシレージ」は「サイロ」から毎日少量宛取出して与える。一度重石を取除いたら再び置く必要なく,光線が当らない様に空俵等を掩っておけばよい。乳牛に対しては搾乳牛につき1日1頭当り4−5貫,仔牛については大きさに応じてその半量位与える。種雄牛及び妊娠末期のものに対しては避けたがよい。「エンシレージ」は強い香を有するので慣れない牛は初めは喰わないものがあるが,か様な場合には他の飼料に少量宛混じて慣らすか,又は他の飼料を与える前に空腹時にやると漸次喰する様になるものであるから適当の方法によって慣らすことが必要である。又この「エンシレージ」は酸が強いから,この場合には石灰を少量入れてやるとよい。

△日華事変の初まった昭和12年政府が将来を予想しての飼料対策として多額の補助金を支出してその奨励を初めてから丁度13年,その間国,県その他指導者が鋭意奨励に当り「サイロ」は沢山出来たが,その利用充分ならず年1回でも詰込みをした者が果して何名あったであろうか。蓋し思い半ばに過ぎる状況ではないだろうか。然し一昔以上たった今日,乳牛飼育には「サイロ」は絶対に必要なものであることがわかって,農家が自ら進んで「サイロ」を設置する様になったことは洵に慶ばしいことと思う。これからでよろしい。大いに利用して乳牛を飼おう。

九.乳のよく出る牛を造ることが必要

△最初から乳のよく出る牛を購入してこれをよく飼育管理すれば申分ないが,初めての人が最初から高級な牛を入手してやることは考慮を要すると前にも述べたが,中等の牛なら尚更,高級な牛でも乳牛を飼う場合には改良ということを決して忘れてはならない。乳牛の場合のみならずその他家畜を飼育する場合には改良即ち次代には親よりも優良な仔畜を生産することに常に心掛けて蕃殖をしなければ退化して品種が悪化する。即ち乳牛に種付する場合には自分の飼っている雌牛よりも,優良な血統その他の素質を有する種雄牛を種付することが最も大切である。か様にして次々と能力を高めて行く処に畜産の改良があり,畜産経済の向上があり,又畜主としても趣味のあるものである。

△作州地区には現在700頭の乳牛が飼育されているが,これに種付する種雄牛は僅か4頭である。而して2頭(目下使用中のもの)当場におり,その他は真庭郡,勝田郡に各1頭である。広い作州の地域ではあり雌牛の頭数もまだ少いので種雄牛経営は仲々困難である。

△乳牛は和牛と異って種付のため雌牛を遠距離に牽付けることができないので,すべて人工授精によっている。当場の種雄牛の種付を希望される方は,発情したならば早速電話で発情開始の時期を通知になれば,丁度よい時刻に係員が行くことにしているので出来得る限り御利用が願いたい。
 現在場に繋養の種雄牛は次の通りである。

 一.第9キング,ベッシー,ジュラルデーン,シックステーン(昭和18年8月生,農林省畜産試験場産)
 二.第9キング,ミドリ,オーボンファー(昭和22年5月生,岡山種畜場)
 三.サー,ガバナー,フエムコ,ローシャル(昭和24年2月生,北海道産)
 (近く種付開始の予定)
 1回種付して受胎しなかった場合には概ね20日後には再び発情するから連絡があれば何時でも行く。

△人工授精に関する技術が不充分で何回種付しても受胎せず業を煮やして和牛を種付している処がある様であるが,これは全く近視眼的方法で,か様なことは全然取止めて貰いたい。生産仔牛は一代雑種であって蕃殖には全然使えないし,単に乳を出さすに過ぎず改良等思いもよらない。斯様な処は当場を利用されれば,出来る丈の便宜を図るから申出でられたい。乳牛には乳牛の種雄牛を種付すべきで料金等の問題もあろうが,これは牛乳を出荷している人であれば牛乳代から差引く方法もあるし,又地元農協等において融通する等の方法を講ぜられ極力乳牛の改良増殖を図ることが望ましい。

十.津山畜産農場の使命

△津山畜産農場は津山市大田にあり,昭和22年4月1日前津山青年興農塾の跡を承けて畜産を主体とする綜合営農奨励施設として設置されたものである。創設後関係者の方々の絶大な御支援によって設備も漸次設置せられ,現在迄3年有半漸くにして緊急を要する基礎的設備の完成を見るに到ったが,未だ将来施設を要する幾多の案件を残している。

△作州地区の酪農の発展に資するため乳用種畜を繋養し種付を行うと共に,生産種畜の払下及び乳牛に関する技術の伝習をなすことを主たる業務としている。現在種雄牛3頭,種雌牛6頭を飼育しているが優良種雌牛1頭を近く購入の予定であり,将来は種雌牛を13頭迄増加したい希望を持っている。色々な都合でまだ製酪事業は実施していないが,これも近く開始の予定である。乳牛の発展には品種の改良が重要であり,泌乳能力の高い牛を漸次飼育することの必要なことは前にも述べた通りであるので,漸次種雌牛の能力を一層向上させるべく鋭意努力中である。

△作州地区においてこれから酪農を志さんとする人は多いことと思うが,これらの人々は開始前に当場に来て例え10日間でも又20日間でも乳牛飼育の要領の一端を会得してから初められるがよいと思う。最近青年の人々が乳牛の一般的飼育又は人工授精等の練習のため研究生として当場に入場希望者が比較的多いのは洵に喜ばしいことである。将来の作州の酪農界はかくの如き青年の力によって発展するものと思う。これらの人々が当場へ来たことによって酪農とは如何なるものかの一端に触れ,将来自家において酪農を経営し夫々その地元の中心人物となって,作州の酪農を伸ばす推進力となって貰わねばならない。かくして牛そのものにおいて頭数並びに体質が向上し,又一面人的に優秀にして強力な推進力が出来るならば,作州の酪農は必ず健実な発展をなすべく,農民もこれによって今迄にない恩恵を受けることになることを信じて疑わない。こうなれば当場の使命が達成出来るものというべく,吾々職員もかくなることを念願しつつ働いている次第である。此の上共御利用願いたい。

十一.津山酪農工場の使命

△羊毛鶏卵と異って牛乳は生物であり水物であるから,冬期はよいとして夏期はその処理に1−2時間が問題となる。酪農の発達は近くに製酪工場の存在を絶対的必要条件とするものであり,津山酪農工場はこの趣旨に則り設置されたもので将に作州酪農家の生命を預っているものということができる。処理能力1回20石,1日2回運転すれば40石は出来るので作州酪農の現状及び将来よりすれば余猶綽々たるものであり,牛乳が如何に増しても大丈夫だ。作州酪農家は牛乳を沢山搾ってどしどし工場に送ればよい訳だ。

△この工場は協同組合組織になっているので,構成資本が酪農家のものであるという点が他と大いに趣を異にしている。即ちこの工場は酪農家によって運営せられ,工場と酪農家とは一体のものであり利害を伴にしている訳である。か様な次第で工場は自分の工場であるから,煙突から旺に煙が出る様に努力することであることを銘記すべきであると思う。役職員の方々は鋭意工場の適切な運営と酪農家の指導に当っておられ,その熱心な御努力には深く敬意を表する次第である。その熱意と酪農家の努力によって集乳量も次第に増加し,この秋には日量12石年明けには15石になるであろう。かくして日々優良な製品が生産せられ栄養食品として販売せられ,目下品不足の実情であることは喜ばしい。

△工場の業績はかくして漸次上昇しているが,あの完備した工場設備はまだ組合のものではなく,これから買収しなければならないのである。これには多額の資金を要するので先般の総会において増資の儀が決定せられ,又毎年度の剰余金,借入金等によって充当せられることと思うが,酪農家も作州酪農のため……自分の酪農の将来のため……挙って組合の方針に十二分の協力が願いたいのである。酪農製品は栄養食品であり将来その消費は大いに増加するものと思うが,全国乳製品界には「のれん」が古く,又全国に販売網を有する大組織もある訳であるから優良製品の廉価供給を図ることが工場に課せられた将来の課題であると同時に作州酪農をして益々発展させる原動力であろう。かくして工場の合理的運営により,酪農家によりよき恩恵を与えることが工場の使命であると信ずる。

十二.むすび

 今迄極く平易に作州においてこれから酪農を志す人々の参考になればと思って色々述べてきたが,作州地区にはこれから乳牛を導入する余地多く工場も完備しているので,酪農の経営によって農家の経済の向上を図ってほしい。ただ前にも述べた通り生物の生産であり,集乳ということが最も重要であるから,思い思いに導入したのでは却而反対の結果を招くことになり,又資金も多額を要することであるからよく工場と打合せ,技術の点については当場を利用し……酪農家……工場……農場……一体となって進めば真に固い実のある酪農人が出来,酪農境が出来るであろう。  (完)