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和牛登録規程改正実施さる

 かねて皆様の強い要望に応えるべく昨年来諸準備を進めて居りました黒毛和種の登録規程も,本誌9号に記載しました通り去る10月13日より新しく改正され実施し,早くも各地に於て行われ多大なる成果を揚げて居ります。その為従来皆様に愛称されて居りました本登録,予備登録も10月12日を以って終止符をつげたわけですが,これが未整理のものも尚多数あり,これ等に今全力を揚げて11月一杯に終了すべく努力して居ります。11月一杯に解決出来ないものはその登録を取消となる事になりますから,若しその様なものがあれば早く連絡処理するようにして下さい。
 さて新しい登録についてその要点を今一度申述べますと次の通りです。

一.登録審査 従来実施されて居りました通り生後18ヶ月より36ヶ月のものが登録審査を受け75点以上のものが合格となり,従来のような本登録,予備登録は廃止し全部登録牛となります。それで登録牛には点数を以って表示し,75点以上の点が発表になります。
尚その外次の資格を持った牛はその上に高等登録候補牛の名称が附記され,将来それより雌であったら77点以上の登録牛2頭以上,雄では10頭以上生産された場合は高等登録審査受検資格が出来,合格すれば和牛最上の高等登録となります。

(1)血統が良好で父母及び祖父母が予備登録又は本登録のもの
(2)審査して78点を得点し尚肢蹄歩様が77点以上を得点したもの

二.仔牛の資格 以上の通り審査で,合格した登録牛より生れた仔牛の資格は次の通りです。
 登資 補助登記牛及び登録牛より交配して出来た仔牛。
 これは18ヶ月になると登録審査を受けて75点以上であれば登録牛になる。
 高資 77点以上得点した登録牛間に出来た仔牛。
 但し当分の間父母及び祖父母が予備本登録以上の間に出来た仔牛です。これは将来高等登録候補牛に尚進んで高等登録牛になることが出来る牛です。

三.高等登録牛 前に述べた通り高等登録牛は次の段階を経て初めて和牛最高の資格を得ることとなります。

(1)血統 血統が良好でなければいけない。両親が77点以上得点した登録牛であるもの(当分の間は75点以上とし両親及び祖父母が本登録,予備登録以上であるもの)
(2)登録審査 (1)の仔牛が生後18ヶ月以上36ヶ月迄に審査を受け高等登録候補牛になったもの(審査得点77点以上で肢蹄,歩様の減率2割3分以上のもの)
(3)生産仔牛 以上の牛が仔牛を生産しその仔牛が77点以上得点した登録牛を雌では2頭以上,雄では10頭以上生産したものにつき次の高等登録審査を受けます。
(4)高等登録審査 以上の資格の牛がここに審査を受け合格したものにつき高等登録証明書を発行します。
合格条件は審査し体格77点以上得点し,尚乳徴の減率2割3分以上のものであります。

四.不良遺伝因子の除去 申すまでもなく今までの登録は雑駁なる和牛より一代一代選択淘汰して本登録と言う固まったものを作り上げるのが目的であったが,この度改正された規程はその上に固定した現在の和牛の遺伝因子をより立派なものに仕上げ,生れて来る仔牛より悪い仔牛を出さない様にするのが目的であります。この為に次の様な方法で悪い仔牛を生産したものはこれを登録しない様にするのであります。

(一)豚尻,乳頭不足(2本乳,3本乳),白舌,褐毛を表した仔牛が生産された場合

 (1)今迄にこの様な仔牛が生れた仔牛の父親(種雄牛)の種付には昭和28年1月1日以後に生れた雄仔牛は登録資格がない。
 (2)昭和25年10月13日以後にこの様な仔牛が生れた父親の種付によって生れた雄仔牛は2ヶ年以内は認めるがそれ以後は登録資格を認めない。

(二)長期在胎,無毛,先天性盲目,単蹄,無尾等の畸形の仔牛が生れた場合(殆んどないが一部出現する)

 (1)今迄この様な仔牛が生れた場合はその仔牛の兄弟姉妹は昭和27年1月1日以後に生れた牛は登録資格がない。
 (2)昭和25年10月13日以後にこの様な仔牛の兄弟姉妹は生れてより1ヶ年以内に生れたものは認めるがそれ以後に生産されたものは認めない。

 以上大要を記述しましたが将来和牛を改良し飼育される農家に於て利用度の高い体形資質を備え,尚その上に仔牛を生産して良い仔牛を年々生産する遺伝因子の強い牛に改良して行く為には飼育者個人では出来ない多くの人々の集りによって初めてこれが成就されるのでありましてこれの集団が登録協会であり,これに依って年々親より仔牛,仔牛より孫と逐次改良されるのであります。
 今秋の中国連合共進会に於て岡山県の和牛は名実共に正に日本一の折紙がつけられ全国の畜産家は我が岡山県に大いに注目して居ります。この秋に将来一層改良し遺伝因子の改善固定は目下の急務であると考えます。一部の共進会出品牛が良いのでなく,県下全部の和牛をその牛に近づけて行く事こそ必要な事と思います。各位の将来一層の理解ある御協力を要望する次第であります。