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餅をめぐって

本村 かずえ

 クリスマスといえば,七面鳥を連想致しますが,正月といえば,日本では餅はつきものであります,何も餅は正月には限らず,3月のお雛様にはひし餅5月の端午の節句にはかしわ餅。又喜びにつけ悲しみにつけ餅をつく習慣があります。
さすがにみづほの国らしい。餅は日本人の嗜好にもあい大変珍重がるので御馳走の部類に属するようであります。
 さて正月,所謂松の内に戴くだけの餅は.暮からちゃんと搗き込んでおきます。御飯と違った保存のきく加工食品でありますから,パンと同様に一寸あぶれば食べられるので便利な食品であります。正月料理といえば,何処でもお屠蘇を祝い,田作,数の子,黒豆,昆布巻と重詰料理を初め雑煮が正月料理の中心になっているようであります。これらの食品は何れも長寿をねがい,延命を司るものとして言伝えられております。
 平素日本人は澱粉を適食して,蛋白質や無機質の不足を来している所から,これらは何れも栄養の補給には大変よい食品であります,しかし農家では平素から米飯を多食する傾向が正月にも延長して,この調子で御飯と同じようにお餅を召上ると,これはもっと不調和な食べ方となってまいります。餅は搗くので密度が非常に高くなっているので,つい口当りがよいのと相まって食べ過ぎになり易いわけであります。よく若い人が,年の数だけお餅を食べて如何にも自慢げに話しているのを聞きますが,これ等は全く間違った,野蛮な食べ方といわねばなりません。例えば21才になった人が21個餅をたべたとしますと,これを米に換算して見ると,約7合に相当します。これを更にカロリーに換算して見ると約3,500カロリーに相当し,これを一度にとったことになります。まるで農繁期の1日の熱量に相当するのですから,きっとこの人はその日一日お腹が苦しくてお困りのことと思います。ですからお餅ももっと食べ方を工夫して上手に食べたいものであります。
 正月の雑煮の形式は大変よい食べ方の1つです。お雑煮といわれるだけに,海のもの山のものを適当に配合してあるので,これで1つの調和のとれた食事になっております。それをお餅好きの人は中の餅だけ食べておかわりをしていますが,折角のよいお雑煮を台なしにしているわけであります。又小豆雑煮というのも餅に足りない蛋白やビタミン補給としてよい食べ方です。その他餅の食べ方も種々ありますがきな粉をつけたあべ川,胡麻やピーナツをよく摺って砂糖,醤油でのばした胡麻餅や落花生餅,山形や信州の方では,くるみを同様にして戴くくるみ餅等々種々ありますが胡麻や落花生やくるみ餅の美味しさはこれ等の中の油が餅と非常によく調和してこのうま味を出すものといえましょう。パンにバターが附きものですが,古来日本では油は余り餅にはつけなかったようであります,餅もバターとは大変よく調和致します。焼いた餅に醤油をつけてのり巻きにして戴くのも非常に美味しいのですが,これにバターを少しそえるとこれは又一層引立ってうま味が加ってくるのでありますかき餅の油揚と共に外人でも大変よろこんで戴きます。又ハムやベーコン等をはさんでサンドイッチのようにしてもなかなか捨て難くよく調和致します。
 松の内が終っておかがみ開きを致します。この餅は包丁の刃もたたない,やっかいもので,結局不規則に割ってしまうのですが,これの始末も普通に焼けばむらが出来てなかなか上手に焼けませんが油で揚げると簡単で,これに醤油を少々つけて戴くと,思わず食べ過ぎる位美味しく戴けます。又油で揚げたものをミルクに浮かせたり,スープに入れてもよく調和します。油を加えたものは成分も濃厚(カロリーが高くなる)になっているので,少し控え目にとる必要があります,こうして見ると餅も種々な食べ方があり,ただ砂糖,味噌,しょうゆだけでなく,バターや牛乳や畜産物とも大変よく調和する食品なので,種々工夫するともっと栄養的にも嗜好的にもすぐれた献立が沢山出来ること受合いであります。どうぞこのお正月には変った食べ方を御工夫下さい。

(筆者は農業改良課技師)