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畜産と生活改善

覆面子

 畜産と生活改善という題で毎月少しでも書いて参考にしたいと思い寄稿し出したのであるが貧乏暇なしでなかなか書けるものでない。
 世界で一番食糧の豊富な国である米国が栄養の知識は一番進んでいるといわれる。それに比して日本はこれほど食糧が不足しているのに栄養の知識になると国民一般に浅く余程の人でない限り余り考慮を払わない。最近の発表によると日本人の寿命が53才になったとのことである,従来は世界で一番短命で47才であった。一番長寿はオランダ,スエーデンの62才,短命であるといわれるフランスでさえ53才である。やっとフランス級になったといえるのである。この原因は何処にあるかというと戦時中から戦後の1・2年迄の長い間日本人の食生活はお話しにならない状態であったことは読者諸子も体験者はあると思う。
 兎に角平素の食生活ということは保健上重大な関係があるものである。戦後生活改善殊に食生活改善ということがあらゆる各層にやかましく叫ばれ出した。特に蛋白質,脂肪という点に重きをおかれ出した。それには畜産物を多量にとって動物質蛋白質を充分とらなくてはならないということをやかましくいい出した。そして栄養改善という言葉が一種のアプレゲールの花形のように大きく浮び上って来た。こうゆうことが日本人の寿命を向上させた大きな原因であろう。とまれ47才が53才に上ったことはお目出たいことで47才という働き盛りで斃れるのは子弟の教育その他国家的に考えて見ても大きな損失であってこの機を逸せず日本人全体の人が尚一層栄養に対する認識を高めて少なくとも平均寿命60才位にはなりたいものである。
私は前任地でも進駐軍の人と一諸に出張したものである。そして度々昼食を共にしたがその食品たるや私の大きな海軍の払下げの弁当箱に一杯麦飯をつめたものに比しその量は少量であるがその質において極めて栄養に富んだものであるのに驚くと共におはずかしい次第であった。しかもその体格たるや6尺豊かで私のような極めて貧相なものが側に寄るとまるで大人と子供程の差があり,これではずかしくもなく戦争をしだしたものであると思い,これでは角力にならかったということを深く感じたものである。
 欧米人の体格体力は日本人とは人種的にその素質も違っているからであって一概には言えないが平素からの食生活が頗る科学的であることに大きな原因があることは又当然といわねばなるまい。米国の栄養学者マツカラム氏はその著書に日本人の食品について次の如く述べている。「日本人の食品は白米が主食である。これはビタミン類のすべてに欠け,かつ無機成分が著しく乏しく蛋白質が少なく単にエネルギー源として役立つ丈である。最も重要食品で日本人に不足しているのは乳と肉類である。日本人の体格の小さいのは或る程度その食品の不適当な事に依るものであろう。」とかっぱしている。マツカラム氏にしてこの言あり吾々日本人たるものこの時この際過去を顧みて食生活の切りかえということに深く考えを及ばさなくてはならない。(未完)