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冬作飼料作物の管理

特に肥料の施用について

 飼料作物の種子を大地に播き落すことは比較的容易であり,誰しも手を着け易いことであるが,1粒の種子が芽生え自然の恩恵にすくすくと伸び様とする成長期において手を加え肥料を与えて花を咲かせ実を結ばせることは従来よりの固陋な観念と馴染み浅いためとかく放任され勝ちであったが飼料作物が重要視される今日過去の誤れる観念を清算し食用作物と同格に再認識し真摯な態度でこれと取り組む人々が増加して来たことは誠に御同慶にたえない。
 本誌11月号に冬期間に栽培される2,3の飼料作物についてその大要を記したが今回それらの作物栽培において従来忘れがちであった肥料問題につき先輩各位の試験成績を拝借したり等して触れてみることにした。
 折角の御批判を願う次第である。
 荳科作物としての青刈蚕豆,青刈豌豆,ベツチ類,紫雲英,クローバー等すべて畑地,水田を問わず裏作利用として取り入れたものであるから表作の作付までに最大限の収量を得ると同時に地下においても最大降の養分畜積を計ることが冬期管理の原則ではないかと思う。地下における養分蓄積については北海道農事試験場における赤クローバー,ベツチ類の土壌中における根の分布についての調査によれば赤クローバーにおいて地上部の30−40%,ベツチ類で18%であり,根瘤菌による養分蓄積その他により土壌改良に大きな役割を果しているこの間の事情は大いに注目すべき問題である。

○ザートウイッケン

 水田裏作に栽培した場合,稲刈取後苗の長大せぬうちに縦横数条の小溝を穿ち雨水或は剰余水の停滞を防止する様にすることは既に記した処であるが水分の凝結により幼苗が枯れ更に霜柱のために地面から抜き出され遂に枯死することがあるからこの点注意が肝要である。
 肥料については,青刈豌豆,青刈蚕豆よりは成るべく多く準備する必要がある。
 肥料としては堆肥,畜尿,過燐酸石灰,藁灰,草木灰,石灰等がよい。
 肥沃田では稲刈取後草木灰の類を反当り2,30貫の割に撤布し,更に時期をみて反当5,6貫の過燐酸石灰を施すと成績がよい。
 瘠薄地,有機物に乏しき土地では前記の外堆廏肥と加与し春季成長の不充分な場合には更に稀薄の畜尿を施用することが必要である。年内に相当程度の発育を遂げた場合先をむしりとり家畜に給与することは此頃の青草資源ともなり又翌年の成育を促進せしめる。青刈麦類との混播の場合には窒素質肥料は麦類の要求に従って施し,加里,燐酸はザートウイッケンの要求によるべきである。

○紫雲英

 努めて排水を計ることはザートウイッケンの場合と同様である。
 特に紫雲英の病害の中で最も恐るべきものに菌核病があるがこれは紫雲英を腐敗せしめる病気で早春の停滞水がこの害を著しくせしめるから注意が肝要である。
 肥料は施肥しないことが多いが燐酸の肥効が顕著であるからこの種肥料の施用が望ましい。施肥量は反当草木灰又は藁灰10−20貫,過燐酸石灰4−5貫を稲刈取後なるべく早く施用するがよい。
 なお防寒用として反当30−40貫の切藁(長さ5寸−1尺程度)を撤布する事もよい。

○青刈豌豆

 豌豆は早期に窒素と加里を吸収し,燐酸は晩くなってから吸収するものであるから初期成育には窒素質の乏しい土地ではこの種肥料の給与が必要である。
 主として施用される肥料は草木灰反当20貫過燐酸石灰5貫位である。

○青刈蚕豆

 養分の要求は豌豆と同様であるが成育期間が長い丈けの差異がある。
 開花期までに窒素,燐酸の要求量の半量,加里はそれ以上吸収されると言われている。
 窒素は根瘤菌により空中より摂取されるがある程度の窒素の施用は収量を増加するもので反当500匁−1貫位の施用が望ましく,主として堆肥,下肥が用いられている。その他過燐酸石灰5貫,木灰10貫位の施用は好結果をもたらす。

○赤クローバー

 荳科作物に燐酸,加里の効果のあることは周知の通りで肥料給与の如何により収穫の上に相当の影響がある。
 養分の多くは早春から開花始めまでに著しく要求されるからこれに合致した施肥を行うべきである。
 成育の初期即ち根瘤菌の機能が未だ充分でない期間は窒素が必要であるが地味瘠薄な地以外は特に窒素肥料の施用は必要でない。
 石灰と堆肥とは常に収量を増加し,特に赤クローギーが石灰に富むことは飼料として優れた点であるが反面土壌中からの吸収が大であるため石灰の施用は必要である。
 追肥としては主として腐熟堆廏肥,過燐酸石灰,木灰,畜尿を翌春萌芽前に施用することが望ましい。
 なお青刈麦類等と混播した場合は赤クローバー単独の場合の外に硫安反当3,4貫程度施用すると成績がよい。
 その他管理としては苗の稚弱なとき1,2回雑草を除きその圧倒を防ぐ必要がある。又晴天打ち続き土地が余り乾燥するときは,発育不良となるおそれがあるから灌水の要があるが雨水の停滞しやすい土地では,特に本年度の如く降雨の多いときには適処に排水溝を設けて排水に努めねばならない。