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初夢

岡山県酪農協会長 奥山吉備男

 寝正月ということもあるが今年は烏兎梶X寒冒に取りつかれ蒲団の中で夢うつつに考えるでもなく,とりとめもないことが次から次へと頭の中へ走馬燈のように浮かび上がって来た。これが今年の初夢なら是非実現させたいものである。
 正月も既に終戦後6度目を迎え,だんだん経済界も落付いて来た。そして色々の統制も昨年は次から次とはずされ飼料も昨春からやっと自由に買うことが出来大分畜産経営もやりよくなりかけ,やれやれと思ったのもつかの間だった,講和も単独講和か全面講和かとそんじょそこらの派閥雀が喧噪を極めて居る間に朝鮮問題の勃発,下りかけて居た飼料相場も値上り又値上りで,今年は再統制となるのではないかと手廻しのよい連中も居るとか居らぬとか。
 いやだいやだ深い深い谷底に落ち込んだような……いやな気持……夢?
 いやそれでも落ち着いた処はなんと広々としたそこは花園,いや野原牛が居る大きな乳房をした乳牛が居る,豚が居る,鶏が居る,馬も居る,山羊も居る。
 だんだん野原には河が流れ,山が出来家が建てられた汽車が鉄橋を渡って居る,トラックが舗装道路を走っている,ここが家畜単位1,000万単位を有つ平和郷日本村?
 ああ夢か……
 日本も将来のいや10年後の文化生活の為には家畜500万単位とか1,000万単位とかと先年経済安定本部で計画が樹立され各県でもそれぞれ家畜増殖計画が樹てられた。
 家畜によってはどうやら計画数字に近よりつつあるがまだまだ日本の畜産も道遠しか,もっと生活が変わって来なくては。
 需要のない処に供給の必要はないのだから,今一寸日本の畜産物消費の模様を欧米各国のそれと比較して見ると以上の様にけたが違う。
 欧米人の体格を見てうらやましがるより一つ日本人も,もっと畜産蛋白を早やく沢山食べて元気になってはどうだろうか。
 今年からは政府でも県でも消費の方面にも少し手を深めて貰いたいものだ。業者まかせでなしに国民体位とやらの向上の為に,平和のために,こんなこと何を言う,顔でも洗って出直してこいと言われそうだと思いながら又いつの間にか夢の中の人となって居たらしい日本人も肉や牛乳や卵がなければ夜も日も明けぬ時代を……。
 いや私は思う何れ日本とても別に宣伝はせずとも生活はたしかに変って行くであろう。農家の野良への昼弁当も一度はパンとバターと言うことになるのも50年とはかかるまい。
兎に角畜産の前途は明るい。
 幸い今年は兎年だもの本県の畜産もピンと飛躍さしたいものである。
 この畜産便りも号をおうに従って中々整備されたが。
 今年の希望は更に躍進畜産の為に。
 曰く種畜問題,曰く飼育問題,曰く種畜場問題,曰く人工授精問題,曰く協組問題等々。

各国々民1人当畜産食品及畜産蛋白摂取量 (1938−39の統計)

国   名 畜産食品1年摂取量 畜産蛋白摂取量 備     考
牛乳(合) 食肉(匁) 食卵(匁) 1年(s) 1日(g)
ドイツ 2,362.50石 11,388.00 7,592.00 22.6 62
デンマーク 985.5 24,893.00 8.6 23.6 食肉ヲ含マズ
フランス 1,795.80 7,993.50 9,891.50 17 46.7
ノールウェイ 2,500.25 6,716.00 6,789.00 19.8 54.3 1936年
オランダ 1,427.15 6,789.00 5,402.00 13.7 37.5
イギリス 2,774.00 12,702.00 12,118.00 26 72.4
スウェーデン 1,682.65 3,102.50 11.7 32.1 食卵ヲ含マズ
スイス 3,310.55 8,906.00 9,599.50 26.3 72.1
ソ連 657 2,190.00 3,689.50 5.8 15.9 1935年
カナダ 3,197.40 14,198.50 27.6 75.9
アメリカ合衆国 2,029.40 10,804.00 15,987.00 18 49.2
アルゼンチン 438 19,235.50 16.7 45.6 1936年 食卵ヲ含マズ
ブラジル 292 3,905.50 4.5 12.4 食卵ヲ含マズ
日本 21.9 511 2,701.00 0.8 2.3