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畜産ニュース

人生は60から

ろは生

 死んで花実が咲くじゃなし。と住みにくい筈の封建時代にさえ昔の人はこう言い乍ら生きぬいて来たものである。人権が認められ,世は民主政治になっているのに,あわて者がとかく死にたがる時代である。戦後人の心も随分変ったもので何が気に喰わないのか,1つ違ったら易々と人を殺し,金を盗む。哲学の入門生が観念の洪水に溺れて死にたがるように民主々義の1年生は,自分の権利を主張して,他人の権利を忘れている。1を知って2を知らぬ時代の悲劇である。
 白亜の恋が破れかけたと報道すれば,いや誤報だといきどおる本人。「火の気のない処に煙は立たない」という諺は今も昔も同じと思う。竹の柱にカヤの屋根をふいても添い遂げたイニシエの恋の勇ましさを思うてみる必要がある。いささかの手違いを無理心中に持って行ったり,別れ話に血を流す。人類をけいべつしているにも甚だしい。そんな暇があったら畜産に実をいれて家畜を飼ってみることだ。と畜産人は言ってやりたい。
 人生は60から。これは去る日の人工授精師受験の風景である。60才,50才の老士連,精虫検査のピペットを持つ手がたのもしい。岡山畜産発展はここから始まる。人生は60から……。その真けんな風景をアプレ派青年にみせたいものである。