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畜産と生活改善

覆面子

 前号で寿命のことを書いたのであるが死亡率はどうであるかといえば日本は1,000人に対して17.0であるのに世界各国は8.8−12.0であって非常に高率である。
 又流産,死産,早産でも日本は1,000人に対し16.0であるのに各国は0.5−0.6である。又折角生れた乳児のみの死亡率はどうかというと100人中日本は9.0であるが,アメリカは5.7,イギリス5.9という有様である。このような事実はなにを意味しているかというと平素の食生活が合理的でないということに帰着するものと思われる寿命も短かいし,死亡率も高いことが,食生活の問題に原因するとなると,この際吾々は深く考えさせられるものがあるお互は今更どうにもならないが,これからの日本を背負う若い人々や生れて来るもののためもっともっと栄養改善による体位向上問題について考えもし,又合理化することがお互の大きな責任のような気もする。
 先日の新聞で見ると,岡山県人は10人に1人は結核の保菌者であるということである。日本は世界一の亡国病たる結核の多い国となっている。この病気程栄養の必要な病気はないのである。之も平素からもっとその食生活上栄養に科学性をもたして各人が体質をよくしたらこの有難くない折紙もとり除くことが出来るのではないか。
 それでは日本人1日当りの栄養必要量はどうかというと大体下の通りである。即ち,

 カロリー……2,400 蛋白……75−80 脂肪……25

 上の通りであるが現在農家の人々は,カロリーだけは必要以上に摂っているが,蛋白質脂肪となると非常に少なく現在よくなったといいながらも大体蛋白質60g脂肪は8−9gしかとっていない。
 長い間の粗雑な非科学的な食生活による不足が積り積って体の失調を来し体位の低下となり,病気にかかり易く,なかなか恢復が手間どることになるのである
 日本人は体の小さい割合に大食であるこれは日本農業の従来からの習慣として米麦作が主体であり,畜産の組合せによるその普遍的利用ということが等閑に附されていた事に原因する。これはやむを得ない事で日本農業と欧米の農業とは根本的に異った行き方であった事にも基因する。
 今急にデンマーク農業のように行かなくても家畜の利用という部面に大きな欠陥があることに気付かなければならぬ。直接自分の生活部面とのつながりを考えて行く処に今后の畜産の行き方があるのである。
 最近養鶏熱が急激におきている。猫も杓子も養鶏々々と騒いでいる。
 事実一昨年あたりからの状況を考えても大きな農家の収入部面も荷っている。しかし只換金丈の考え方でやる養鶏ならそして大仕かけの考え方からの養鶏なら失敗は目前にある。自己の経営内容をよくよく考えて20羽−30羽の小羽数の健実な養鶏なら私はおすすめする。卵は全部換金することのみ考え自己の生活にとり入れない養鶏なら今后の普遍化は考えられない。充分食生活の中にとり入れることによって家族の栄養は改善出来るし,その排泄物の利用することにより農作物の増収は可能となるし,家庭利用以外の余分の売却(特に共同出荷)による現金収入ともなるような合理化こそ今こそ必要な畜産であると考えるものである。これは只一例を鶏にとった丈であるが,緬羊でも兎でも山羊でも同じことがいえるのであって,家畜及びその生産物はたとえ下っても家畜を飼ったために全体の総収量が上昇し,生活部面の改善が出来るような家畜に指向すべきである。(未完)