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4Hクラブのプロジェクト活動

農業改良科 大森技師

 明るい豊かな農村を建設するために岡山県においては各方面の協力を得て農業改良普及事業の一環として4Hクラブの育成を促進しているのである。
 一体物事の改良とか改善とかいうことは,進歩的な態度と科学的研究心があって始めて出来るもので一般に農村の人々は保守的で封建的な傾向が強く又物事を科学的に考える習慣も少いので,このような物の見方,考え方は熱と意気のある青少年の時代から養成しなければ年をとっては,なかなか困難がともなうのである。
 そこで農業改良普及事業では次代の農村を担う青少年男女の一種の教育事業として,進取の気象に富んだ青少年の科学する心と,同志相寄り相互け合う気持から出来る自主的な4Hクラブの活動を育成助長しているのである。
 そしてこのクラブ活動の目的は農村の青少年男女が科学的な態度で,農業の改良と生活の改善のやり方を実践を通じて学び,これを実際に活用して人の為に役立つ有能な公民となることを主目的としなお次の副目的を達成することにある。

 1.多くの友達と共に働き,共に遊び温い友情をたのしみつつ,協同の精神を養い,村や国の進歩のために責任を分担する。
 2.丈夫な体を作る訓練をし,余暇の善用をはかり,有用な技能を身につけ,移り変りの早い世の中に強く生きて行く
 3.天然資源を愛護し,社会のために奉仕する喜びとその価値を学び,世界平和に役立つ仕事をする。

 このクラブの組織な当っては,特に一定の規格は設けず,つとめて青少年の自主性を尊重し,それぞれ地方の実情に応じた体制としているが,差当って次のような要領によるがよいと思う。
 地域は村の地勢,交通,風習等を考えて,常に?り易く気軽に集り研究懇談の出来るような部落(字)単位を標準として作ることが望ましいが場合によっては2,3部落又は町村単位になってもよい。
 年令は農家の男女青少年で10才(差当って中学校生徒)より25才迄とし農業の改良若しくは生活の改善に興味を持ち実際にやれる人なら誰でも加入することが出来る。しかし趣味,思想等のまとまり易いようにするため余り年令差のないことが望ましい。
 構成員数はクラブ員が相互によく理解できる程度の人員を以って構成することが望ましいので大体において,少くとも5名のクラブ員を必要とし15名から20名が適当で,40名以上となる場合は地域別,年令別,計画事業別等その時の実情に応じてクラブ数を増すことも考えられる。
 役員はクラブの実情に応じて会長,副会長,書記,会計等の役員を設ける。
 クラブを運営する資金としては生産事業,奉仕事業による収入を充てることが望ましいが必要であればクラブ費を徴収することも考えられる。
 規約はクラブが自主的に作られるものであるから自由な形のものでよく,又クラブ活動が順調に行われるならば左程重要なものではないようにも考えられるが民主々義は人にしたがうものでなく皆んなで定めた法律とか規約に従うのであるからクラブを民主的に運営するためには是非規約を設けることが必要である。最初は,簡単で必要欠ぐべからざることを規定し,組織の拡大又は活動の発展につれて整備するもよい。
 次に4Hクラブ活動の最も大きな特色は,クラブ員が各自にプロジェクト(計画事業)を持ってそれを実績して行く事を中心とするのでこれをプロジェクト活動と言い,その一人一人のプロジェクトを完遂するためにクラブ員がお互いに協力して定例会とか研究会とか,講習講和会とかレクリエーションとか,展示会等の催しをクラブのプログラムとして計画し実施して行くのである。この場合一人々々のプロジェクトを完遂させるためにいろいろな計画を実施することを一般活動という。
 従って4Hクラブ活動の根源は実に一人一人のクラブ員の個人プロジェクトの活動にあるわけでプロジェクトを持たないクラブ員というものは考えられない。プロジェクト活動こそは4Hクラブの生命であり,これによってクラブ員達は「行なうことによって学び」又「実践を通じて教える」のである。
 そしてプロジェクト活動とはどんなことかというと日本ではプロジェクトを色々な言葉にあてはめているが4Hクラブのプロジェクトは「計画事業」と訳すと最もよく意味がわかると思う。その意味はクラブ員が計画的に或る機関継続して実行する活動であって単なる一技術とか一仕事とかいったような抽象的な断片的な一時的なものとは異り,もっと具体的な綜合的な継続的なものである。例えばアンゴラ兎を飼育する場合に飼育箱を作ったり日々の手入れや,給餌箱や剪毛等をする事が綜合されて始めてアンゴラ兎の飼育となるわけで,それがある明確な目的にむかい,適確な目標をたて,科学的な計画と方法により進んで行く場合にアンゴラ兎の飼育が始めてプロジェクトとなる。そうして飼育箱を作ったり餌をやったり毛を剪る事はそのプロジェクトの中の仕事(単位作業)となるのである。
 このプロジェクトを大きく別けて農業プロジェクトと生活プロジェクトに分けることが出来る。農業プロジェクトの中には生産的なものが多く稲,麦,大豆,馬鈴薯等の栽培とか鶏,山羊,羊,豚等の飼育といった様なものがある。生活プロジェクトの中には衣服のプロジェクトとか調理,家具等のプロジェクトのような生活改善を主としたものが多い。
 4Hクラブのプロジェクトには自分の身辺に転がっている農事や家事のあらゆる問題がとりあげられる。なにを選ぶかは勿論自分の自由な意志によって興味,環境,能力等を十分に考えてきめるものであって,いやしくも他人から命ぜられていやいややるものであってはならないしかし自由にとりあげたプロジェクトであっても,それが4Hクラブ員のプロジェクトであるためには次の要素と条件を備える必要がある。

要 素

 (1)目的  先ず問題を見出し目的をたてる。
 (2)計画  この目的を達成するために創意工夫して計画をたてる。
 (3)遂行  計画したとおり実行する。
 (4)評価  遂行の結果について審査し批判し評価する。
 (5)記録  目的,計画,遂行,評価の全過程を正確に記録する。

 従ってこの5つの要素の1つを欠いでもそれはプロジェクトとしては不充分である。しかし5つの要素が完全に包含していても更に次の条件が具備されなければ真の4Hクラブのプロジェクトとならない。

条 件

(1)プロジェクトが農業改善や生活改善に役立つものであること。
(2)自己の全能力を集中できるような自分にとって興味のある問題であること。
(3)自分がプロジェクト活動の全責任者であること。

 先にプロジェクトは自由に選抜できると申しましたが,それを選ぶ場合に只行きあたり,ばったりで決定してはうまく行かない。実行している間につまずいたり,あきたり,なげだしたりして,それまでの折角の努力が完全に無駄になって来る。であるからどんな題目を選ぶかについては考えなければならない。

(1)その地域(部落や町村)の条件に適合したもの
自分の家や部落や村において,最も切実な問題になっているもので実用的で農業を発達させ,生活を豊かにするものでなければならない。
(2)実施できるもの
プロジェクトは実践するものであるから自分の能力,資金等を考えあわせ,実際にやれるものでしかも興味をもって実施し努力によって充分に到達できる範囲のものでなければならない。
(3)科学的な合理性で一貫しているもの慣習的な方法で兎を飼ったり,蔬菜を作ったり或は趣味で花を作ったりするものではなく計画的に研究的に実践するのがプロジェクトであるから目的,計画,遂行,評価及び記録が科学的な合理性によって一貫されていなければならない。
(4)農事試験場等の試験研究で既に立証されたもの或は確認されているものをとりあげるのが適当であり,そしてそれが従来の慣行よりも優れたものであることが望ましい。

 自分のプロジェクトが決定したらクラブ指導者或は改良普及員に相談したりしてよいプロジェクトを実施することにつとめる。
 以上4Hクラブの組織と活動の中心であるプロジェクトについて記したのであるが4Hクラブのプロジェクト活動は自分の家,村,大きくは国の農業の改良,生活の改善が目的であり単なる「研究のための研究」ではない。
 このプロジェクト活動によって青少年達に創意工夫する計画性や,計画通り遂行する実践力や実践の結果審査したり,評価したりする批判力や言葉で発表したり文字で記録する表現力が段々養われてくるのである。
 そしてプロジェクトを完全に実践し,完遂するためにクラブ員がクラブ活動を通じてお互いに協力し合い,あらゆる困難にうち克ち立派な成果をあげようと努力することによって,はっきりした考えを持ち,豊かな人間愛を抱き有能な技術を身につけた,しかも健康な人つまり知性と清操と技術と健康の4つが揃った円満な人間になることを窮極の目的としているのであります。