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畜産と生活改善

覆面子

 日本人の体格が極めて小さいのは人種的によることにもあるがその大きな原因は過去長い間の余りにもその食生活に無頓着であったことによることは明らかなことである。それは農業そのものの型態からして外国とは異なっていたからである。即ち主穀農業は過去から現在へ永く永くつづいて来ているのが日本農業であるしかも主穀式無畜農業がその大半であったため農家はその行う労働を賄うだけの労働力を主として米と麦において賄っていたため自然大食を余儀なくされる。この澱粉質の米麦を1日に6合も7合も食って来たものであるがこれ丈食べると熱量カロリーだけは普通以上であろうが肝腎な蛋白質や脂肪質のものはてんで考えない。こんな非科学性の食生活がつもりつもって体質を弱くし,病気にかかり易い体質にしてしまったのである。都会の人は喰べないといってもそれでも多少なり肉類脂肪分をとるが農家の人々は1年に何度という位でそのとり方が少ないそのため一見元気そうに見えても病気にかかり易いし一度病気にかかるとなかなか回復が困難である。
 どうしても食生活を栄養的に考えなくてはならないし質的にとり上げなくてはなかなか体の改善は出来ない,満腹したというあの感じは只量の問題で質的に関係のない慣用語で科学性のない言葉であることを記憶すべきである。
 蛋白質や脂肪のように人体内において最も効率の高い消化吸収にエネルギーのかからない良質の食糧をとることが今後の食生活の改善の主眼である。現在の日本の国土はたった4つの島に限定されて仕舞った。吾々の先祖が過去80年の間鋭々として拡げた土地は全部とり上げられ,明治初年の姿に還元させられて仕舞った。しかも人口はどうかというと8,300万人という大世帯である。このままで行くと昭和29年には9,000万人に近くなるのではないかと言われている。漫然と従来のままの食生活をつづけてゆくことは到底許されない状態である。
 昭和26年度産米の生産目標は6,500万石である。これを500万戸の農家が鋭々として生産し8千数百万人の日本人口を養ってゆくことになる。1人平均少くとも年1石は消費するであろう。そうするとどうしても年8,300万石はなくてはならぬことになる。それが6,500万石ではさしづめ1千数百万石は不足することになる。生産はどんなにしても達成しなくてはならぬ重要事項であるが完全に達しても1千万石以上不足することになる。何んとか他の手を打たねばなるまい。そこでどうしても食糧の節約という問題が極めて必要事項となって来る。
 世界人口の8割は穀食国で2割が粉食国である。しかもこの2割の粉食をする国々が8割の国々を支配していることになる。粉食をしている国々は畜産国であり穀食国たる日本やその他の国は畜産は低調である。
 斯く考えて見ると畜産が盛んな国は文化的であるということが出来畜産物の利用の多少が文明のバロメーターとも考えられる。
 最近各方面で畜産を経営にとり入れなければ到底その経営を合理化することは出来ないという声がやかましい。殊にその生産物を直接生活部面に直ちに利用出来る家畜を差入してゆく傾向になった事は農家の考え方の一つの大きな進歩と見てよいと思いよろこんでいるものである。(未完)