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酪農主任官会議熱海に於いて活発に論戦

 農林省畜産局では2月27,28日の両日熱海市伊豆山の龍泉閣において,戦後初めての酪農主任官会議を開き酪農対策を協議した。今回の会議に招集を受けたのは,北海道,岩手,山形,千葉,静岡等主要酪農地14県であり,本県よりは蔵知,松尾両技師が出席下記事項につき討議された。

一.牛乳の取引について

山本有畜営農課長

 牛乳の取引を安定するために,別掲のような「牛乳取引法案要綱草案」を作ってみたのである,この程度の法律を出すか或いは現状通り放任しておくかについて御意見をお伺いしたいと思っている。
 第三の締結しない場合は知事が命ずることが出来るようにしてもよいと思う。これはほんの草案であって本日の会議の結果必要と言うことになれば,更に検討して完全なものとしてみたい。

牛乳取引法案要綱

―農林省畜産局案―

第一(目的)牛乳取引の公正と安定を図って酪農業の健全な発達を期する。

第二(牛乳の定義)乳牛飼養者が搾乳して販売する牛乳及びその牛乳から分離したクリームを言う。

第三(取式契約の締結)一.牛乳の処理販売を業とし又は乳製品の製造をなす者(以下牛乳買受機関と言う)と牛乳生産者又はその組織する農業協同組合(以下組合と言う)が牛乳の取引を行う場合,その何れか一方が他方に対して取引契約の締結を要求したときはこれを拒むことが出来ない。二.牛乳買受機関と牛乳生産者又は組合が牛乳取引契約を締結した場合にはその締結の日より10日以内に当該都道府県知事にその契約内容を届出なければならない契約内容を変更した場合も亦同じ。三.牛乳取引契約には少なくとも牛乳の価格及び数量,取引期間並びに乳価の決定方法について規定しなければならない。

第四(検査)都道府県知事は必要と認める場合には第三に掲げる牛乳に関して省令で定めるところにより牛乳の検査を行うことが出来る。

第五(取引契約の変更)牛乳買受機関牛乳生産者又は組合が経済事情等の変更により第三の取引契約に変更を加えようとす場合には,いずれか一方が他方に対し契約の変更を申出るものとし,その申出の日より30日を越えない期間に双方協議の上契約を更正しなければならない,前項の協議が整わない場合にはその旨地方酪農委員会に申出てその裁定を求めることが出来る地方酪農委員会の裁定に不服のある場合はその理由を具し中央酪農委員会に再裁定を求めることができる。中央酪農委員会の裁定あった場合は締結者はその裁定に服さなければならない。

第六(酪農委員会の組織)一.農林省に中央酪農委員会を,都道府県に地方酪農委員会を設ける。二.酪農委員会の委員は16人以内とし牛乳生産者の代表者,牛乳買受機関の代表者,消費者の代表者及び公正な立場を代表する学識経験者各々同数を以って組織し,消費者代表者及び学識経験者選挙によりこれを選出する,但し中央酪農委員会の委員は農林大臣がこれを委嘱する。三.委員の任期は1ヶ年とする。

第七(酪農委員会の機能)一.牛乳生産者又は組合と牛乳買受機関の双方又は一方から取引契約の締結又はその変更について,酪農委員会に対し,裁定の申請がなされたときは酪農委員会は1ヶ月以内に公聴会を開き公正な裁定をしなければならない。二.酪農委員会は必要と認めるときは牛乳生産者又は組合と牛乳買受機関に対し,牛乳乳製品の生産販売に関する報告を徴し,帳簿その他の書類の提出を命じ,又は立入検査を行うことが出来る。

第八(経費の負担)中央酪農委員会の費用は国の負担とし下の各項に掲げる費用は都道府県の負担とする。一.地方酪農委員に要する費用。二.牛乳取引検査に要する費用,国は毎年度予算の範囲内において前項の費用の二分の一以内を助成することが出来る。

第九(奨励措置)国及び地方公共団体は牛乳の公正な取引を確保し酪農業の健全な発達に資するため牛乳の生産,集荷及び処理に関し資金の融通その他の必要な奨励施設を講じなければならない。
 この問題に対して各県より活発な意見が出たが結論として全員一致賛成,強力に推進するよう要望された。

二.乳牛の改良増殖について

[中村技官説明]▼最近失業者救済人口問題等から高齢地帯の開拓が要望されているが,これにはブラウン・スイスの導入を考えている最近のブラウン・スイスは明治末期に移入されたものより,体型が改良され,外界に対する感差が弱く,乳量も20石可能,温順である,各県において種畜場,学校等で研究して欲しい,私案であるがホルスタインの改良増殖の目標を脂肪率の増進に重点をおく,又乳牛標準を設定したい,近く補助金の確保と人工授精の要項をまとめる,次に種牡牛の所要頭数の見込をつけたいと思っているから各県で調査して欲しい,更に高等登録牛の最低能力と雑種牛の登録の検討,アメリカで行われている乳牛の血液型の研究,国有牛の貸付検定消耗等の国家,助成を考慮している。
 右の他各種畜牧場の種雄牛を高度に利用することを検討し,更に雑種登録を刷新強化する為めに,別に登録団体を結成する案も提出された。

三.酪農立地の問題

 三鍋技官,現在各地各様の立地条件の下で酪農が奨励されているが,技術的,経済的の立地条件を考慮して,これに適した標準酪農地帯を作ってみたらと現在調査を進めている。
 結論として各県においても本省の線に添ってそれぞれ調査立案することになった。