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春先きの家畜飼養上の注意

加本技師

 家畜飼養上年間を通じてどんな時期に病気が多いかを大塚氏の統計から考察してみると,牛馬の月例死亡率は下表の様になっている。

月別 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
0.77% 0.92 1.1 0.9 0.89 0.84 0.79 0.74 0.79 0.66 0.72 0.82
2.14 2.51 2.03 2.07 2.49 2.47 1.93 1.68 1.31 1.65 1.44 1.86

 以上のように馬は牛より死亡率が高い。時季別に見ると牛馬共3月から6月が最も高率で次いで7月より10月となっている。すなわち最も事故の多あいのは春季という結果になっている。又これを病類別に見ると,牛馬共に消火器障害が最も多く牛では50.4%,馬では40.8%となり,次いで外傷不慮,産科事故等となっている。これらの統計から考察して,結局春秋の飼料転換時と高温多湿の夏季に消化器の疾病及び使役最盛時の事故放牧事故等が考えられる。
 大塚氏は更にこれを説明して次のようにいっている。すなわち飼養給与方法の失宜,たとえば使役最盛時に飼料を過給したり,飼料転換時に急変や配合調理の失敗,脱出による盗食,変敗醗酵及び夾雑物飼料の給与,飲水不足,塩分の欠乏等を病因とみている。いわゆる春秋2期は農繁期であり,一方家畜にとっては生理的に蕃殖期にあり,生命力の活動を促される時季である。自然の環境からみても春は山野の草生が盛んとなり,久しく家畜の欲求を遠ざかっていた嗜好が急に満足を与えられるようになる。
 冬季間の舎飼いの習慣性飼料も3ないし4月ごろとなると端境期に入る。ことに粗飼料に不足を来すころである。又鉱物質の不足からいわゆる異嗜を呈してくるものがある。4ないし5月ごろになってくると草の芽生えに先立ってレンゲ,ウマゴヤシ等が青々として茂り冬季の青物に飢えている家畜類の食欲をそそるが,文献にあるようにこれらの若葉は一種の有毒成分を含み,且つ消火器内で発酵し易く,従って下痢,疝通を起し易い。野草でも若い中ほど美味で且つ養分も多いが,過食すると鼓脹の原因になり易く,ことに露を含んだものが,堆積されて発酵気味のある場合は注意しなければならない。下種期のバレイショで芽を出したものはソラニンの毒素や黴類より生じた毒素で中毒症状を呈することもある。冬季内に製造された粕類,ことにカンショ粕の中でも中毒を起す事例があり,九州では腐敗カンショより作った焼酎粕で斃死した報告もある。又不消化な繊維だけになったような粕類もある。放牧は家畜にとって最も自然で健康的な飼養とはいうものの急に解放するとしばしば過食したり有毒な草を採食したりする。タンニンを含む樫の若葉を食って便秘を起したり,アカシヤの樹皮を食って中毒をする馬,ネジキを食って霧酔病になる牛等は良く聞く例である。梅雨期になると飼料に黴が生えがちで腐敗し易くなってくる。農繁期のため管理不十分でよく畜舎から脱出して収穫した麦類を盗食し大騒ぎをすることもある。筆者は最近小麦を1斗3升余りペロリとやって食滞に悩んだ牛の事故も経験した。豚では飼料の急変は残食量を多くして不経済であり,何でも食うという乱暴な飼い方で胃腸障害を起し易い。緬羊では飼料の急変は胃腸障害ばかりでなく羊毛の質を悪化し,はなはだしい時は中断羊毛(テンダーウール)を生ずる。兎では濡れ草や腐敗性の飼料で下痢を起し易い。
 このように春から夏にかけて飼料の種類,量,質に変化があり勝ちでそのため失敗を招き易いことは多くの事例が立証する。