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外から見た岡山の畜産

吉岡長次郎

 昭和の初から岡山和牛は,可成新興利用地を眼ざして供給され時代は,和牛に対する利用的価値,和牛の優劣の判定等の技術能力は低く,只産地の技術者の指導さるるままに需めた。其の当時の社会経済的,営農的には稍万足であった。一方中国和牛生産地は競って改良を需要地の要求,和牛本来の技術的改良を併行して優良種牛の作品に努力したことは確識される。其れは作秋の中国6県和牛研究会に今更の如く優良種牛の産地であることを再認識したのである。其の理由は,過去の岡山和牛の潜入視として第1品位に乏しいこと,第2毛色の黒勝,粗野なこと,第3完熟後体積(体高)が兵庫,鳥取産のものに比し小格なること,第4晩熟性であることとこれらの点は未だ和牛の観識感の乏しいことを物語っているとは言え,一般に批判される点である。しかし和牛の観識能力には夫々優劣があるとは言え,産地,需要地共に一応反省して見る必要があると思う。然し一方においては調教,肢蹄,役利用の優位さは何人も認め,益々助長さるべき特色と言い得るのであるが,最終利用である肉皮の生産上から見れば他県のそれに比して劣るとも優れざる点は利用地の大なる問題である。かかる相殺される批評は改良方面に懸命であるとは言え急角度の転換は不可能に近いものであろう。この理由の生ずる根源は次の諸点で補償されると確信する。即ち第1,販売宣伝網の拡充,第2,市場機構の整備,第3,市場品質の統一(特に犢牛において)第4,利用者に対する県,業者,団体等のサービスの改善である。この点は隣県のそれに比して稍見劣りのすることは,県内諸氏の異句同音にとなえるところであり,相当数の家畜は間接に移入されること及び家畜商の機構からもうかがわれる畜産行政的な力が今後の発展を左右する重要な事項である。過去の和牛産地を誇る一方利用地にこれが価値の宣伝は改良増殖の鍵なることを傍観するものである。(筆者は愛知県畜産専門技術員)