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農業改良普及事業においては普及手段として講話,講演,討論,ゲントウ映画紙芝居,印刷物等いろいろあるが,デモンストレーションも亦その手段として重要なものである。普及事業でいうデモンストレーションには
(1)メソウドデモンストレーション(もののやり方を知らせるデモンストレーション) と
(2)リザルト,デモンストレーション(結果を知らすデモンストレーション)
の2種がある。実績展示はリザルト,デモンストレーションに入るが4Hクラブ員たるものは農業改良,生活の改善をどうしてやるかを学ぶだけでなく,人にも見せなければならないものであるから4Hクラブでこういったデモンストレーションをとりあげるのは実に特色のあることだということが出来る。従来の教育は読ませる,聞かせる,見せることによって学ばせるものであったが,4Hクラブでは為すことによって学ばせるものであり,デモンストレーションの場合は「為すことによって学ばせる」ということよりも更に一歩,程度の高いものであり,デモンストレーションは教育の最高手段であるといわれている。
又,このデモンストレーションをやることにより,クラブではどんなことをやっているのかということの社会的認識を深めさせることになり,更にクラブ員がデモンストレーションをやる事により父兄のクラブに対する関心を得ることが出来,新しい知識技術が農村に浸透して行くことになる。
このメソウド,デモンストレーションは,もののやり方を示す最も効果的な方法で,動作しながら説明し,説明しながら動作することで,日本語では「演示」と訳している。
4Hクラブでは,農事や家事の改善の方法を人に伝えるのに,この方法をデモンストレーションとして取り入れて組織立てたのである。デモンストレーションは,それを単独に取り上げても十分に効果のあるものであるが,それがプロジェクト(計画事業)として自分のやっているものの中から取り上げた場合は,より一層大きな価値がある。そのためアメリカではプロジェクトの実施と共に,このデモンストレーションもクラブ員が1年間に少なくとも1度はしなければならないものとして義務ずけているようである。以下これについて御参考までに説明する。
(1)自分自身のためにプロジェクトの実施により為すことによって学んだものを,更に聴講者の前で演示する立場に立ったことによって,一層しっかり身につけることになる。
(2)材料を扱う技倆を伸ばす事になる
(3)聴衆の前で考え,話し,又行動する事に馴れる。
(4)自分の力量に自信が出来て,人柄に重みがつくことになる。
(1)クラブの活動を社会的に認識させることが出来る。
(1)最も近代的なものを取り入れることになるから,農業の改良,生活の改善をおしすすめることになる
デモンストレーションは,その内容によって色々分けられるが,ここでは形式による分類だけにとどめておく。
(1)個人デモンストレーション
演示者が1人で演示する場合であって,初生雛の優劣の見分け方を示す演示などはその例である。
(2)チーム,デモンストレーション
2人又は数人でチームを作って演示する場合で,豚の去勢で1人が豚を押えていて,1人が施術する場合などは,この例になる。
又,個人とかチームが競技に参加しない場合と競技に参加するする目的で用意する場合とによって,次の2つに分けることが出来る。
(1)競技デモンストレーション
(2)比競技デモンストレーション
デモンストレーションは大体次の3つの段階に組みたてられる。
(1)課題の重要性を述べ,会衆の注意を演示へ誘導する(序論)
(2)演示の実施(本論に相当する)
(3)演示の要点をまとめ会衆にも利用出来ることを説明する(終論)
次の各項目に適用するものを選ぶことが大切である。
(1)自分のプロジェクトに関係あるもの
(2)実用的なもの
(3)聴講者に興味があるもの
(4)中心になるアイデア(主旨と言えるが俗に「やま」と言われるもの)を沢山盛らないこと特に年少者では,ただ1つのものに限るようにする。
(5)時間は10分乃至30分概ね20分程度で演示出来るもの
(6)題目を選んだら改良普及員やクラブのリーダーの意見を聞くこと
(1)デモンストレーションの題目を選んだら詳細に至るまで研究し,しっかり計画を立て,解らない所は普及員やクラブ指導者とよく相談し,自分でも十分理解すること。
(2)次にその段階を追って実施のあらましを作り,強調点を定め,不要の箇所がないかどうかを検討するのであるが,その際次の3つの事項について吟味しなければならない。
(イ)やるべきこと
(ロ)それのやり方
(ハ)何故そうするかということ
(3)必要な資料や材料を集めること
(イ)正確で新しい資料
(ロ)材料は廉価で実際的なもの
(4)服装は簡単で演示に適当なもの
(5)十分と練習を積んでおくこと。
会場の構造を予めよくのみこんでおき,聴講者がよく見え,容易く理解出来るように,又演示の順序を考えて都合のよいように材料を配置する
演示者は先ず自己紹介をし,題目について説明する。その要領は,
(1)自分(達)の所属クラブと姓名。
(2)この題目を選んだ理由(題目と自分のプロジェクトの関係についても述べる)
(3)題目の重要性を説明(この際会衆の関心を演示に誘導する)
次に演示の内容について述べる。それには
(1)予め計画した1段階毎にやってゆく。
(2)動作に説明が一致する様にし,又絶えず説明しながら動作して会衆の注意を引きつけて行く。
(3)何人かでやる場合はチームワーク保ちつつ交互に演示する。即ち演示者と補助者とが程よく交代する。
補助者は演示者を引きたたせるようにする。
(4)大事なところは強調する様にし,又解りにくい所は図表等を用いて説明する。
(5)演示の速さは聴講者の理解出来る程度にゆっくりと,時間を節約するために,説明を要しないものは「これから先はこうなる」というように作業の完了したものを示す。
(6)説明は十分な声でゆっくり,明瞭に,しかも抑揚をつけて話す,ジョウダンを差しはさむのもよい。
(7)やさしい言葉をつかい,難しい専門語はつかわないようにする。
(8)姿勢は正しく,ポケットに手をつっこんだり,後手をしてはならない。
(9)資料等はすべて清潔にして置き,又丁寧に取り扱う。演示に関係のないものは持出してはならない。
(10)終りに聴講者にも同じようにやり得る事を強調し,何処から助力が得られたか,或は参考資料について必要ならば説明する。
(11)質問がないかどうか聴講者にたずねる。
(12)質問には知って居ることは答え,知らないことは,はっきり知らないと答えるごまかしや言いわけをしない。
(13)出来上がりは出来れば点検し,試食出来るものは試食して貰い又見本に持って帰るようにすすめるのもよい。
(14)普及員やクラブリーダー等は演示中に助言や指示をしてはならない
以上でデモンストレーションの説明は終ったが次号には畜産に関するデモンストレーションの実演例を御紹介する予定である。