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かね

◎世界の動きが気に懸る。物価の上下が気に懸る。忙しい世情,恰かも花に嵐の感がある。春風たいとう,ひねもすノタリノタリの気分が味えたのは,それは昔の事だった。

◎花に浮かれた雑踏とトラの千鳥足が遠のいたと思ったら忽にしてメガホンのばん声,金切声が氾らんし,苦しまぎれの権力や金力,情実口説きやらが?綜し社会秩序や民主化の看板はこのところチョットほおかむりでまかり通らして貰っているかと思われる。

◎6つ……無暗に頭下げ。7つ……何でも引受けて。8つ……矢鱈に法螺を吹き。9つ……公約振りまくも。1口で当選するまでさ……。と言う訳でも無かろうが立候補者の苦労は察するに余りあり,せめて当選した暁は少々腰を伸ばして反りかえるのも無理からぬわけだ。
善良なる選挙民の諸氏よ。きづなにとらわれ群衆心理の雷動性にかられあたら貴重なる1票を粗末にしないようこれからよく反省してゆかう。

◎ところで自然の風物は,「眼に青葉,山ほととぎす,初鰹。」と今迄派手に彩どられていた視界が次第に実質的な色彩に塗り変わって来,野にも山にも家畜の嗜好をそそる草が萌え,海の幸も食膳をにぎわす時季となった。
暫らく……予を収めて,興奮を静め,ボツボツ大事な生産にとりかかろうではないか!!