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今後のカナリヤ飼育

都窪郡加茂村 藤井順一郎

 野も山も緑したたる初夏の候となり,カナリヤの繁殖は最盛期となりました。今春は天候不順のため巣引成績不良の向きも有ったのでありますが,昨今漸く気温が順調となり,巣引も愈々本調子となって参りました。愛鳥家皆様の飼育箱には,可憐な雛がむくむくと成長していることと存じます。
 筆者も小規模乍ら現在200余羽の雛を育てて居り,なお続々孵化しつつありまして文字通り多忙の日夜を明け暮れているのでありますが,寸暇を見出し駄文乍らペンを取ることと致しました。
 顧みれば昨25年は好況を思わせたカナリヤ界も朝鮮動乱に依るデマや流言に禍いされ悲惨に近い結果に終わったのでありましたが,それでも雄は殆んど輸出され今春に入っては品不足のため注文に応じられなかった実情で,輸出羽数はオーデンワルトへ27,400羽,其他を合わせて30,000余羽と推定される少数でありました。
 本年は講和の年でもあり既にアメリカは素より他の海外からも多数の入注が有るとのことなれば,同好者の皆様と共に幸多からんことを祈りつつ不断の愛情と撓まぬ努力を以って,優秀なる輸出カナリヤを一羽でも多く育て上げたいと念願し,昨年の実例から輸出向けには如何なる鳥を作るべきか,それには夏季に於ける巣引管理をイカに致したらよいかを列記して御参考に供したいと存じます。

一.輸出カナリヤの条件

 1.体格可成り大きく毛並の良い鳥
 2.健康で良く鳴く雄(雌も幾等か輸出される)
 3.無傷の鳥(爪傷や尾羽の切れたものは不合格となる)

 以上の条件で厳選されるので小型やよれ毛の鳥は作らぬよう種禽の組合せをすべきで,成可く大型で雌雄何れかを覆輪とするのがよいことは前回にも述べた通りである。

二.夏季に於ける巣引上の注意

 1.気温高き時は雛が口開け首を伸して苦しむものであるから戸障子を開けて通風をよくすること。
 2.餌が腐敗し易く摂取量減少のため栄養不良に陥り落鳥又は小型鳥と成り勝ちであるから,飼料は毎朝取替えゆで卵は1日量の6,7分を早朝与え残りは涼しい場所に乾かぬよう保存して置き午後4時頃与え,青菜水等も毎朝必ず取替えてやると雛の発育よく大型鳥となる。
 3.飼育場の窓外に南瓜糸瓜等を植え立体作りとすれば熱風を遮り夏仔もよく育つ。
 4.梅雨期に入り連日降雨や雨風の日は戸障子を締めて場内が湿らぬよう注意する。又巣の脱糞に黴が生じる時は雛も腐敗状態となって死滅することが有るので,この場合は乾いた藁アクタ等を入れて巣を作り雛を入れ替えてやる。
  但し孵化後14日以後の雛は飛び出るので手を入れぬこと。
 5.交配上注意を要することは,7月に入ると早きものは換羽にかかる,羽毛の脱落し始めた鳥は決して交尾せぬので産卵しても全部無精卵となり,思わぬ失敗をすることがあるから常に注意を怠らず,元気でよく鳴く雄を選び交配すること。
 6.梅雨明けより急に気温が上昇するため,孵化後7,8日までの雛がよく蒸せ死ぬものである。之れを防ぐには予め藁の粗巣(周囲から空気の流通する穴が多数あるもの)を作って置き,孵化直後これに移してやると蒸せる心配なくよく育つ。なおこの場合抱卵中は普通の巣を使用しなければ,粗巣では卵が乾燥して孵化しない。
 7.離雛は雛が自から卵餌や粒餌を食べているのを見定めて親から分離し尾羽の充分伸びるまで卵餌を与えること。
 8.害虫の予防,4月頃からぼつぼつワクモが発生し始め5月からは黒色の小さい羽虫が無数に発生して吸血するため,注意を怠ると雛が育たないので夏季は特に予防に努めなければならない。予防又は絶滅には巣鉢の中,(敷物の下)へDDTの粉末を少量入れ,室内は夕方アース等の殺虫液を噴霧器で撒布するのが最も有効である。但し撒布の場合周囲の戸障子を閉めて置かないと効果がない。

(5月16日投稿)