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たより

津山畜産農場

中島氏を送る

 昭和22年4月場創立以来終戦後の諸事極めて困難の裡によく場の建設に遭進されていた中島氏には3月31日付で徳島県庁畜産課次席技師として栄転された。場は創立以来未だ4ヵ年,経費その他の関係でまだ完成の域に到っておらず設備において将又事業内容においてこれから大いに頑張らねばならず同氏の積極的推進力に俟つものが多かったので今回の転任は洵に惜しい限りであった。然し徳島県当局より指名懇望切なるものがあったので本県としてもやむを得ない次第であった。又同氏はその豊富なる経験を持って作州地区の和牛改良に専念されその功績極めて大なるものがあるのは関係者一同の認めるところで惜別の感に堪えないものがあった。徳島県着任後は持前の元気をもって活動されている趣で慶びに堪えない。たださきに大病をされた後であるから体に充分に留意されて同県畜産の発展に努力されんことを祈る次第である。

畜産協議会開催される

 4月20日当場において県庁畜産課並びに3種畜場連絡協議会が開催された。県庁から惣津課長外係官,種畜場から各場長業務庶務各主任出席し種畜場の運営に関し真剣な討議が行われ,得るところが極めて多かった。ただ本年は選挙の関係で予算が骨格予算となっているので将来の経営問題について方針を決め得ない部面があったのはやむを得ないところであった。

飼料木栽培の推進を図る

 飼料高騰の折柄自給飼料対策として飼料木の栽培推進は最も重要なことであるが当場においては先日吉岡隆二氏の御来場を煩わし「トゲナシアカシヤ」「ネム」「イタチハギ」各50本宛を植付け見本園をこしらえた。さきに植付けた大島桜も皆芽を出してきた。飼料木の普及については将来一層努力したい。

県有種雄牛の飼育に真剣でありたい

 先日ある郡の種雄牛検査に参加した。受験牛は一般にその飼育管理は良好であったがその中に当場の育成にかかる種雄牛で全くお話にならない飼育管理のものが1頭あった。即ち体高124.2cmで栄養状態きわめて悪くこれが県有種雄牛かと思われた。
 代人が追ってきているので実情も判明せず遺憾の次第であった。殊にこの牛は当場育成のものの内で最も優秀なものであったと聞いては尚更である。この牛は昨年4月の検査の時の測尺によれば体高121.0cmとなっているから1ヵ年間に一寸伸びている訳である。明4才の牛でこの丈とは情けないことである。如何に自分のものでないとはいえ余りにひどい感じがした。牛そのものの資質はよいのであるから出来得る限りの飼育管理をなし充分その使命を果さしめ最良の成績を挙げる様管理者自身努力されると共に関係機関の御指導を願う次第である。

中雛の利用を望む

 本春の育雛成績は9割育成の好成績で希望者に順次払下しているが6月中に出る40日雛についてはまだ余裕があるので希望の向は至急申出でられたい。

渡辺滋樹氏を迎う

 当場和牛主任はさきに中島大二氏を送った後暫く空席となっていたが今般県庁畜産課から渡辺滋樹氏が任命され過日着任された。同氏は久しく種牡牛係として行政的に県下和牛界の発展に努力されたのであるがこの度現場に出て予而の体験を実地に実現されることになったのである。同氏は県下の代表たる千屋牛の産地阿哲郡千屋村の出身で牛には生来縁故の深い人,将来作州の和牛改良は同氏の努力により一層の進展を見ることであろう。 

畜産技術研究会

 畜産技術の科学的進歩は最近著しいものがあるが吾々技術者は常にこれに関する新知識を会得すると共に技術の適確を期することが必要であると思う。この要請に応えるため作州地区の畜連,保健所の技術者は今般美作地区畜産技術研究会を組織し技術の研究に精進することになり5月19日当場に惣津畜産課長,井谷技師を迎えその第1回会合を開催した。当日は人工授精に関する研究を行い井谷技師から世界における人工授精に関する最近の研究の概要につき有益な講話があり終って出席者一同との間に活発な質疑応答が交され有意義に終了した。今後年に2−3回研究会を開き技術者一同相互に錬磨する計画である。

(26.5.25)