ホーム>岡山畜産便り>復刻版 岡山畜産便り昭和26年6月号 > 4Hクラブのデモンストレーション 駄鶏の淘汰について |
5月号に4Hクラブのデモンストレーションについて記したのであるがここにその一例として「駄鶏の淘汰」について記してみよう。
題目 駄鶏の淘汰 材料 多産鶏代表的なもの 1羽
寡産鶏代表的なもの 1羽用具 伏せ籠 2個,トラプネスト 1個,脚帯 数個,画鋲 机1個 その他 A 鑑別図表 1
B 鑑別要領一覧表 1
C 経過年数による産卵の低下
図表 1
D 淘汰標準と淘汰後の産卵率
表 1演示 (演示の順序として自己紹介をする)
山本 私達は○○4Hクラブの山本で左は同じく川崎です。
これから私達は駄鶏の淘汰について演示します。
それでは私達が何故この題目を取り上げたかその理由について先ずお話致します。
農家で最も普遍的に飼われている家禽は鶏であると思います。その飼料は自給飼料によることが多いためもあって産卵能力などは極めて軽視されている傾向が強い現状であります。そこで私達は4Hクラブ員のプロジェクト(計画事業)として鶏の飼育を実施し学んで得た結果にもとづいて,この演示によって簡単な良鶏と駄鶏の見分け方について皆様の認識を高めたいと思います。
それでは次に川崎さんから鶏の体型について説明してもらいます。
(川崎,山本の主旨説明の間に図表ABCを貼布し説明に移る)
川崎 それでは鶏の体型について私が説明いたします。この籠の中に2羽の鶏がいますが,どちらが良い鶏でしょう(鶏の籠の中における自然状態を聴衆に観察させ図表Bを用いて良鶏が楔型をしていることを認めさせる)
山本 鑑別のやり方は3通りあります。
1 産卵検定の方法 これは産卵検定箱(トラプネスト)を用いて脚帯等で鶏を覚えておき毎日調査記録して行く方法ですが今日は次の2つについて演示をいたします。
2 即ち骨格による方法と外観による方法であります。
(山本,伏せ籠から多産鶏をとり出し小脇に保定する)
(川崎,伏せ籠から寡産鶏をとり出し小脇に保定する)
(山本,図表A・Bと鶏の各部位につき比較演示する。
山本 この表はB多産鶏のみについて挙げてあるが寡産鶏はこの反対と思われたい。先ず骨格から(ここからは,山本,川崎が聴衆によく判るように良鶏駄鶏について交互に比較演示する)
川崎 良鶏は胸骨は屈曲せず長く下傾の傾向がある。駄鶏は胸骨,時に曲がり,その先端は大体肛門の方向に向う。
山本 恥骨の間隔は広く指3本位は楽に入る。又その先端は軟くむしろ外方に開いている。
川崎 駄鶏は指2本位しか入らない。そして骨が硬い(聴衆数人に確認してもらう)
山本 恥骨と胸骨の間隔も広く指4本位は楽に入る。
川崎 これもこちらは狭い,即ちこれは輸卵管卵巣,腸等が卵を産まない鶏は発達していないからです。
山本 次は外観による鑑定について演示します。
頭部は先ず冠の大きさが適度で,色は淡紅色,眼は突出の観があり嘴は餌をあさることによって先端は摩滅しています。尚嘴は黄色が抜けて白色になっています。体色素の内黄色は,このほか肛門,眼瞼,顔面,耳朶,脛等から毎日産卵することにより褪色いたします。
川崎 卵を産んでいない鶏は冠は縮んで色もよくなく嘴は餌をあさらないので先端が尖っています。黄色色素は毎日餌の中から蓄積され,それが産卵により排出されないので段々各部位に黄色を増して来ます。
山本 皮膚は柔軟で弾力があり移動し易く皮下脂肪もなく羽毛は羽締りもよくやはり毎日の排卵により光沢がありません。
川崎 駄鶏はこのとおり皮下脂肪が多くなり羽毛にも光沢があります。然し光沢が悪くても毎日産卵する場合ばかりでなく換羽の頃には休産していても羽毛につやがなくなりますから間違はないようにして下さい。
山本 肛門はこのとおり産卵を続けている鶏は大きくゆるみ,温い油を塗ったような湿り具合をしています。又黄色は認められず白色又は桃色をしています。
川崎 こちらは肛門は小さく引締り乾燥して黄色をしています。尚この外に鑑別上注意する所は爪の減り具合,主尾羽の毎日産卵箱の中での活動による摩滅具合等によって見分けます。尚鶏の生活挙動による判定をするのに換羽の状態,食欲,早起,晩寝交尾欲,就巣性等によって判定することも有力な方法です。
外型(外観) | 体 型 | 全 形 楔 形 後部よく発達 | |
頭部 | 頭部 | 巾広く 頭頂平 | |
冠 | 淡紅色 適度の大きさ平滑 | ||
眼 | 丸く 突出 眼のふち褪色 精気があり親しみ易い | ||
口ばし | 短太 鈍端 褪色 | ||
耳朶 | 褪色 | ||
骨格 胴部 |
恥骨 | 恥骨間が広く且軟い | |
胸骨 | 胸骨の先端下向曲らない | ||
容量 | 巾広 深く 後発達 | ||
肛門 | 大きく軟く色白(褪色)温油状 | ||
皮膚 | 柔軟,弾力あり,うすく皮下脂肪少い | ||
羽毛 | 脂肪少い 光沢を欠き 尾端はすり切れている | ||
肢 | 肢間 | やや広い | |
肢 | 褪色 | ||
爪 | 短くよくすり減っている | ||
生活状態 | 挙動活溌 食欲旺盛 早起晩寝 換羽は晩く始まり期間短い |
山本 今迄説明しましたことは先天的に或いは育雛の失敗により能力のわるい場合と比較したりよい鶏でも休産中の現象も合せて説明しましたから間違わないように注意して下さい。
つまり能力のよい鶏でも何年もたつと段々卵の産みがわるくなります。この表を見て下さい。
(経過年数と産卵率低下表を示す)
飼料代と卵価とは,その時々によって違いますが,大体産卵率50%位とすれば3年鶏位からは経済的に引合わなくなります。それで老鶏は肛門,体色素等により淘汰して行きます。
川崎 それでは淘汰の程度はどの位を標準にしたらよいかをお話いたします。
(山本淘汰標準の図面掲示)
淘汰前の 産卵率 |
100羽当りの 淘汰比率 |
淘汰数 | 淘汰後の産卵率 (大略を示す) |
60% | 1/6 | 17 | 70% |
50 | 1/5 | 20 | 66 |
40 | 1/4 | 25 | 62 |
30 | 1/3 | 33 | 59 |
20 | 1/2 | 50 | 40 |
先ずこの表をごらん下さい。100羽のめん鶏がいる時は50%の産卵率であれば1/5の20羽を淘汰します。すると上手に淘汰して過りがなければ大体その後に残った80羽は大体66%と産卵率16%上昇します。30%の群は大体59%になりました。更に16%の産卵率向上は純益率では16%に止らず著しく大きくなることは皆さんで一度計算してみて下さい。
山本 これで駄鶏の淘汰のし方についての演示を終わりますが,何か御質問はありませんか。
(ここで質問に入る)
問 交尾力の強い雄がいると産卵率に影響があるでしょうか。
答(山本)影響があっても大したことはないと思うが数字的にお答えする段階にまで研究いたしていません。
問 淘汰後の産卵率が40%までに向上しても全部その鶏を更新する必要はないでしょうか。
答(川崎)現在では大体50%以上の産卵でなければ経済的に引合わないようですが,その時々の卵価と飼料代によって40%でも経営が成り立つ場合もあると思います。(A鑑別図表紙面の都合により省略す)