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かね

◎ヒステリーの妻に頭から水をブッかけられたソクラテスは「嵐の後は雨か!」と平然としてつぶやいたと言う。
 歯には歯とゆくよりか釘にはぬか式の方がむしろ効果があることもある。

◎童話に旅人の外套を脱がせる競争をした神様の話がある。風の神様がいきり立って一気に外套を引きはがさんと大風を起してみたところ,旅人は吹き飛ばされては大変と許り両手でしっかりと外套を抱えこんでどんなに神様の方で力を入れてみても目的を達しなかった。それではと言うので陽の神様が代ってヤンワリと温かいほほえみを投げかけると旅人は次第に温かさに堪えかねて遂に自ら外套をかなぐり捨てたと言う喩えもある。
 又こう言う事もある。
 名刀の刃を附けるのに堅い砥石を使うとどうしても相反ぱつして容易に刃が附かないが軟い砥石を使うと立派に出来上がると言う。柔よく剛を制する所以も稀ではない。

◎岡山の牛が海を渡る。
 和牛の国内流通のわくを一歩踏み出したわけだ。長い間の変せんを経た和牛界に一石を投じたと見る向と無益な刺激を与えるに過ぎないと評する向とがあろう。
 何れにせよ,経済動物としての国際価値を幾らかでも判断される時代が来たわけだ。

 古池や 蛙飛びこむ 水の音  芭蕉