ホーム>岡山畜産便り>復刻版 岡山畜産便り昭和26年7月号 > 畜牛の取引について |
本県の和牛の改良については,斯界の先輩はもとより関係者に依って日夜真剣に研究され年と共に盛価を声揮している事は喜びに堪えないが,一方重要にして看過出来ない畜牛の消流関係については数多い問題をはらんで居る。
生産された畜牛の販路が確実であり而も畜産農民の現金収入がより増加する方向への取引の改善が必要な事は論を待たない。県畜連は本年3月東京に畜牛の販売斡旋所を県費補助で設置し積極的な販路拡張に乗り出して来ているが,その効果は最近新聞紙上で御承知の通り香港への積出となって現れて来た。これは全国としても最初の試みであり,将来の為めには多少の犠牲を払ってもやりとげなければならないことである。
尚昨年の連合共進会以来他府県から種牡牛の要求が増大して来ているが,これ等の好意ある注文に対しては,くりかえして申し上げる如く,関係者は良心的に応接すべきであって,単なる高価な取引を望む事は厳に慎む事が本県畜牛界の将来の発展に取って極めて大切な事である。
取引の改善については種々研究を要する点があるが,地方に依っては従来の単なる慣習に依る取引の為に不明瞭な点があるのは認めざるを得ない。郡畜連の内にも,この打開に乗り出している向きもあるが,要は畜産農民の自覚が根本となってくる。
畜産が今後の農村振興上不可欠のものである以上,農業経営はもとより経済面に力強い力を持たなければならない。徒らに換金家畜と言う考えに偏して現金収入を望む事は好ましくないが,畜産農民の協同の力に依って,現金収入の増加を図り,それを更に畜産振興に還元する事を考えねばならない。補助に依存する畜産では将来性のない事は明々白々たる事である。
盛夏を迎えんとするの候,畜産に特に理解の深かった佐藤副知事が長崎県へ御栄転になった。我々畜産人は前副知事の偉大な業績をふりかえる時,感慨一入なるものがある。
謹んで御多幸を祈ると共に今後一層本県畜産界へ御援助あらん事を切望するものである。